目次
3Dキャップ刺繍に必要な機材・材料
キャップの3Dパフ刺繍は、うまく決まると「売り物の顔」になる高付加価値仕上げです。一方で失敗の多くは、次の2点に集中します。(1) 曲面のキャップを円筒フレームに掛けたときのテンションが均一でなく、縫製中に位置ズレ(位置合わせ不良)が出る。(2) 縫い始め数秒の重要なタイミングでフォームが動き、二重に見えたりフォームが露出したりする。
この手順では、YunFuの単頭機+Dahao操作パネルで実演されているワークフローを追いながら、単なる「ボタン操作」ではなく、現場で差が出る枠張りの手触りと再現性に重点を置きます。キャップ枠をキャップドライバーに確実にロックすること、キャップ枠モードの選択、デザイン呼び出し、そしてテンションを安定させる「バインダークリップ活用」を軸に進めます。

動画内で使用しているもの
- ミシン本体: YunFu 単頭式刺繍ミシン
- 操作系: Dahao コントロールシステム(タッチパネル)
- 治具・金具: キャップ用枠固定台(ゲージ)、標準キャップ枠、キャップドライバー
- 素材: 白いベースボールキャップ
- 消耗材: ピンクの3Dフォーム(パフ)
- 糸: 赤の刺繍糸(動画では針5に割り当て)
- 工具: バインダークリップ(背面テンション保持に重要)
- 工具: はさみ
段取りチェック(作業を止めないための事前確認)
動画はコア手順にフォーカスしていますが、実作業では「途中で止まる原因」を先に潰すのがポイントです。
- 安全確認: 縫い始めはフォームを手で保持するため、袖口・指先・糸切りばさみ等が針周りに入らない動線を作る
- 下糸(ボビン糸): 3Dは縫い密度が高くなりやすいので、開始前に残量を確認しておく
- 作業灯: フォームが浮いた/ズレたを早期に見つけるため、針周りが見える明るさを確保
もし事業用途で 単頭式 刺繍ミシン を検討中なら、機械性能以上に「段取りの標準化」が品質と歩留まりを左右します。毎回同じ手順で再現できる準備が、現場の強さになります。

注意:安全上のリスク。 縫い始めはフォームを針の近くに置く/短時間保持します。指・袖・糸切りばさみ等を針落ち位置や上下動する針棒付近に入れないでください。手を置くならフープの上側または横側に寄せ、針の進行ラインの真下には絶対に入れないこと。
手順1:キャップの準備と枠張り
キャップの枠張りは「強く締める」だけではなく、テンションを面で均一に配る作業です。構造のあるキャップを円筒フレームに沿わせると、締め方が偏ったときに生地が浮いて(バタついて)位置ズレの原因になります。動画では、キャップ用枠固定台とバインダークリップで背面テンションを作る方法が示されています。

1) キャップ枠を枠固定台にセット
円筒形のキャップ枠を、キャップ用枠固定台(ゲージ)に載せます。
チェックポイント: 枠がレールにきちんと乗り、グラつきがないこと。左右に遊びがある場合は、固定台側の取り付け状態を見直してから進めます。

2) キャップを枠に通し、スウェットバンド(汗止め)をならす
可能であればスウェットバンドを外側にめくる/または金属フレームに対してフラットに寝るように整え、キャップを枠に通します。
センター合わせの要点: キャップの中心(センターシーム)が、キャップ枠のセンターマーク(刻みや目印)に合っているかを確認します。わずかなズレでも、仕上がりのロゴが傾いて見えやすくなります。
チェックポイント: つば付け根付近でスウェットバンドが折れていない/ダマになっていない。前面が枠の中心に来ている。
3) 金属ストラップをつばの縫い目に掛けて固定
金属ストラップをつばに回し、つばとクラウンの境目(縫い目)にバックルが掛かるようにロックします。
期待される状態: 前面はしっかり固定されます。背面側がまだ緩いのは通常なので、次の工程でテンションを作ります。

4) バインダークリップで背面を引いてテンションを作る
背面の生地(メッシュや布)を後方へしっかり引き、テンションを保ったまま黒いバインダークリップで枠の支柱/ワイヤー部に噛ませて固定します。
この一手間で、縫製中の生地のバタつき(浮き)が抑えられ、3Dパフで起きやすい針のブレや位置ズレを減らせます。
チェックポイント: 前面を軽く指で叩いたとき、たるみが少なく、均一に張っている感触があること。

なぜ効くのか(現場の理屈)
キャップは元の成形形状に戻ろうとするため、緩いまま縫い始めると、縫い進みながら生地が引かれて形が変わり、結果として位置合わせが崩れやすくなります。
キャップ用枠固定台でのセット→ならし→背面テンション(バインダークリップ)を一連の標準手順にすると、曲面の状態が安定し、縫製中の変形が減ります。
毎回ここで手間取る/同じキャップを2回枠張りして同じ位置に再現できない場合は、刺繍用 枠固定台 の使い勝手(目印の見やすさ、固定の剛性、作業姿勢)を見直す価値があります。
手順2:Dahao操作パネルの設定
枠張りができたら、次は機械側の設定です。動画では、キャップ枠をキャップドライバーに装着した後、Dahaoで「キャップ枠モード」を選びます。キャップ用の動作範囲・動き方に切り替えるため、ここは必須です。

1) 枠をキャップドライバーに装着
枠張りしたキャップ枠一式を、ミシンの回転ドライバーに差し込みます。
- ロック機構に「はまる」位置まで入れる
- ロックレバー(固定部)を回して確実に固定する
チェックポイント: はまった感触(カチッとした手応え)があり、軽く引いても抜けないこと。ここが甘いと、縫製中に枠が動いて重大な接触事故につながります。

2) Dahaoでキャップ枠モードを選択
タッチパネルの枠(フープ)設定から、キャップ枠のアイコンを選びます。
期待される動き: 選択後、機械がキャップ用の基準位置(ゼロ位置)へ移動する挙動が見られます。キャップ用の可動制限として認識させるための手順です。

3) デザインデータを選択
動画では内部メモリから「NY」デザインを選択しています。
チェックポイント: 画面プレビューで向きを確認し、着用時に正しい向きになっているかを見ます。

4) 色/針番号を割り当て
動画では赤糸を 針5 に割り当てています。
チェックポイント: 実機側で針5に赤糸が通っていることを確認。あわせて下糸(ボビン糸)の残量も確認してから開始します。

5) 位置合わせ:デザインを枠内に収める
矢印キーで枠位置を調整し、デザインがキャップの刺繍可能範囲に収まるようにセンタリングします。
チェックポイント: 画面上のデザイン枠(プレビュー)が、キャップ枠の範囲内に収まっていること。金具(つば固定部や支柱)に近い位置は避けます。
手順3:3Dフォームのカット
動画では「デザインより少し大きめに切る」というシンプルなルールで進めています。

デザインより少し大きめに切る
ピンクの3Dフォームを長方形にカットします。
チェックポイント: ロゴ位置に置いたとき、フォームの端からデザインがはみ出して見えないこと(覆いが足りないと、縫い終わりにフォーム露出が出やすくなります)。
手順4:3Dパフ刺繍の実行(フォーム置き〜縫い始め)
ここが品質を決める山場です。狙いは「フォームをズラさず固定し、最初の縫いでフォームが安定したら手を離す」こと。

1) フォームを刺繍位置に置く
フォームを狙い位置に手で置き、中心がズレないように合わせます。
チェックポイント: キャップの曲面に沿ってフォームが浮きにくい状態になっていること。
2) 最初の縫い(タックダウン)まで安全に保持する
動画では、スタートボタンを押した直後、フォームを指で軽く押さえています。
- 手の置き方: 針の進行ラインから外した上側/横側で、フォームの端を軽く押さえる
- 離すタイミング: 最初の押さえ縫い(タックダウン)が入り、フォームが縫い付けられて安定したら手を離す
期待される状態: 数秒の縫い始め後、手を離してもフォームがその場に残り、ズレずに縫い進みます。

3) 3D刺繍では速度を落とす
動画でも明確に「3D刺繍は速度を落とす」と案内されています。3Dフォームは抵抗が増えるため、無理に高速で回すと糸切れや不安定さにつながりやすくなります。
チェックポイント: 縫い始め前に速度を落としてあること(縫い始め直後のトラブルを減らします)。
作業前チェックリスト(Go/No-Go)
- 機械側: キャップ枠がドライバーに確実にロックされている
- 設定: Dahaoでキャップ枠モードが選択されている
- データ: 正しいデザインが呼び出され、向きが正しい
- 糸: 針5が赤糸になっている
- 位置: 画面プレビューで枠内に収まっている
- フォーム: デザインより少し大きめにカット済み
- 安全: 手の位置が針の進行ラインから外れている
- 速度: 3D用に低速へ落としてから開始する
仕上げ:フォーム除去と枠外し
縫い終わったら、動画では枠を外してからフォームを裂き取り、最後にキャップを外しています。

1) キャップ枠をドライバーから外す
ロックを解除し、キャップ枠一式をミシンから取り外します。
チェックポイント: ミシンが停止し、縫製が完了していること。
2) 余分なフォームを裂き取る
縫い目(特にサテンの密な縫い)がミシン目の「切り取り線」になり、フォームがきれいに裂けます。
やり方: デザイン中心に向かって引っ張るのではなく、余り部分を外側へ引き、裂けにくい箇所は無理に引きちぎらず、少しずつ動かして切り離します。
期待される状態: 立体感のあるロゴが出て、フォームの残りが最小限になる。

3) バックルを外してキャップを取り外す
ストラップのバックルを外し、バインダークリップを外してから、キャップを枠から抜き取ります。

仕上がり確認(納品前の目線)
- ロゴの立体感が均一で、フォームが糸の外に目立っていない
- 位置ズレがなく、キャップ中心に対して傾いて見えない

最終結果と次の一手
完成形は、赤糸でフォームがしっかり包まれた、触っても芯のある「NY」の3Dロゴになります。
継続的にキャップを商品として回すなら、枠張りは「感覚」ではなく再現できる工程として管理するのが近道です。作業時間と不良率を記録し、必要に応じて 刺繍ミシン用 キャップ刺繍枠 の見直しや、ミシン刺繍 用 枠固定台 の再現性改善を検討すると、日々のロスが利益に変わります。
