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Baby Lock Altair 2の概要
Baby Lock Altair 2のような上位機種に乗り換えると、単なる「縫う」から一気に「工程管理(テキスタイル加工)」に近づきます。Altair 2は9.5" x 14"の刺繍エリアを持ち、操作系も画面中心で完結する“強い”構成です。一方で、初めて触る方ほど「高価な機械を壊したらどうしよう」「機械が良くなったのに、なぜシワ(パッカリング)が増えた?」という不安が出やすいのも事実です。
マシン刺繍は感覚だけでなく、再現性のある条件出しが重要です。基本は 枠張り(Hooping)/スタビライザー(下地)/糸調子 の三点セット。このガイドは「どのボタンを押すか」だけでなく、
- 正しく糸が通っている“手応え”
- 下糸が安定している“状態の見え方”
- 枠張りで布ズレを起こさない“張りの作り方”
まで、作業者のチェックポイントとして整理します。

主要ハード機能:糸通し(チャンネル式)とボビン
上糸通し:チャンネル(ガイド)に沿わせる理由
Altair 2は番号付きのチャンネル式糸案内で、上糸を迷いにくい構造です。ここで大事なのは「通ったかどうか」ではなく、糸調子機構に正しく噛んでいるかです。
チェックポイント(手応え): チャンネルに糸を入れるときは、ただ“置く”のではなく、糸を軽く張った状態で通します。右手で糸コマ側を軽く支え、左手で下方向に通すと、どこかで「スッ」とした抵抗感が出ます。抵抗がまったく無い/軽すぎる場合は、糸が調子機構に入り切っていない可能性があります。
自動糸通しの確認(クリック音): 自動糸通しを使うときは、フックが針穴を通る瞬間に機械的な“カチッ”という感触・音が出やすいです。音が弱い/引っ掛かる場合は、針が最高位置に無い、または針がわずかに曲がっている可能性があります。


現場のコツ(品質+糸切れ予防): 上糸が毛羽立つ/切れるときは、糸コマ押さえ(スプールキャップ)のサイズを見直します。キャップが糸コマ径より大きすぎると、ほどける糸が縁に当たって引っ掛かりやすくなります。基本は「糸コマより少し小さめ」を選びます。
指先で操作できるボタン類:何が便利なのか
針周りの操作ボタンは、作業のリズムを崩さないための“操縦席”です。役割を理解しておくと、縫製でも刺繍でもミスが減ります。
- スピード調整(スライダー): いきなり最大にせず、まずは体感で扱える速度に。高速は摩擦・発熱が増え、弱い糸や不安定な下地だとトラブルが出やすくなります。
- スタート/ストップ: 刺繍モードでは基本的にこれが主操作になります(フットコントローラーを使わない運用がしやすい)。
- 押え上げ/下げ: 縫製モードで角を回すときや、素材を“浮かせて”扱いたいときに有効です。
- 糸切り(はさみ): 上糸・下糸をまとめてカットします。動作音がいつもと違うときは、糸の噛み込みや糸端の引っ掛かりも疑います。
- 針上下停止: 針を布に刺した状態で止める/上で止めるを切り替えられます。
- 止め縫い(補強縫い): 返し縫いの代わりに、目立ちにくい形で縫い止めを作れます。


注意:機械安全
通電中は、指・長い髪・アクセサリー(特にぶら下がるブレスレット)・ゆるい袖や紐を、針棒まわりから少なくとも4インチ離してください。ボタンが誤って押されると針棒が即座に動き、刺傷の危険があります。
照明と天面の滑り:小さな差が大きなミスを防ぐ
LED照明は見た目以上に実務的です。針が落ちる直前の影や、段差・硬い縫い代・枠の縁などが見えやすくなり、針が枠や硬い部分に当たる事故を避けやすくなります。

ボビン装填:上から入れる方式+ガイド+内蔵カッター
Altair 2の上から入れるボビンは、ガイドに沿わせて糸を通し、余り糸を内蔵カッターで切る流れが分かりやすい構成です。基本的に、下糸を手で引き上げる作業を省けます。
チェックポイント(裏面の見え方): 試し縫い(または刺繍の試し)をして裏を確認します。サテン柱などで、下糸が中央に細く見える状態が安定の目安です。
- 下糸が目立ちすぎる: 上糸の糸調子が強すぎる可能性。
- 下糸がまったく見えない/裏が荒れる: 上糸の糸調子が弱い、または上糸が正しく通っていない可能性。

補足(鳥の巣=下で糸が団子になる): 裏側の糸だまりは、下糸よりも上糸の糸調子がゼロに近い状態(上糸が調子器に入っていない等)で起きやすい現象です。上糸を最初から通し直し、糸通し時は押えを上げた状態で行い、調子器が開いた状態で糸を入れます。
スマート画面:無線接続と各種カスタマイズ
設定メニュー:最初に触るところ/触らないところ
Altair 2は設定項目が多く、細かく追い込めます。ただし、初期設定は一般的な糸・素材を前提に組まれているため、最初は“必要なところだけ”変えるのが安全です。
よく使う設定:
- 針停止位置(上/下): 角を回す作業などで「下停止」にすると位置がずれにくい。
- 照明の明るさ: 反射や眩しさを抑えたいときに調整。
最初は触りすぎない設定:
- 糸調子のオフセット等(特殊糸や特殊素材のときに検討)。

Wireless LAN:USBなしでデータ転送
無線接続を使うと、USBメモリの抜き差しを減らせます。PC側でデータを修正して送り直す作業が多い場合、転送の手間が減るのがメリットです。
糸ブランド選択:「Madeira Poly」などを選ぶ意味
画面の色は実糸の色そのものではなく、あくまで表示上の近似です。糸ブランド(例:Madeira Poly)を選ぶことで、データの色指定を画面上で把握しやすくなります。

mm→インチ切替(コメントの質問に回答)
コメントで「縫製側の表示がmmだが、インチに変えられるか?」という質問がありました。Altair 2は設定でインチ/メートル法を切り替えできます。用途や慣れに合わせて切り替え可能です。
縫製モード:実用縫いと装飾(ヘリテージ)
「実寸(Actual Size)」プレビューで失敗を減らす
縫製モードでは、模様の幅や長さを変えると画面上で見え方が変わります。実寸表示は、試し縫い前の“危険察知”として役立ちます。

チェックポイント: 画面上で糸密度が重たく見えるのに、手元の生地が薄い場合は、シワや波打ちが出やすい組み合わせです。まずは設定を控えめにして確認します。
最大振り幅(7mm)と運用上の注意
最大7mmは機構上の上限です。設定を変えるときは、押えや針まわりに干渉しない範囲で使います。
ヘリテージ縫い(ウィングニードル)について
動画内ではウィングニードル(Wing Needle)に触れています。これは生地に穴を作る目的の針で、素材や下地の選び方で仕上がりが大きく変わります。
刺繍モード:9.5x14枠と編集機能
刺繍モード切替とキャリブレーション
刺繍モードに入ると、刺繍ユニットが動いて基準位置を取ります。

チェックポイント: キャリブレーション中に刺繍アームが物に当たらないよう、左側のスペースを確保します。壁や小物に当たると、動作不良の原因になります。
デザイン選択:画面情報の読み方
画面には、刺繍の進行や色順などが表示されます。進行表示を見ながら、最初の縫い出しで異音や引っ掛かりがないか確認します。


文字追加(「JBC」)と配置
画面上で文字を入力し、ドラッグで位置を調整できます。

現場のコツ(配置のズレ防止): 文字を追加したら、デザイン全体のバランスを見てから位置を確定します。小さな移動でも、枠内の余白や見た目の中心が変わります。
枠サイズ推奨:機械の提案を見て、安定性で最終判断
Altair 2はデザインに対して推奨の枠サイズを表示します。基本は「入るなら小さめの枠」が安定しやすい考え方です。
ここで重要になるのが 刺繍ミシン 用 枠入れ(枠張り)の精度です。布は「太鼓の皮のようにピン」と張りたい一方で、引っ張って伸ばすのはNGです。織り目や編み目を歪めたまま刺繍すると、枠から外したときに戻ってシワや歪みが残ります。
マグネット刺繍枠が“効く”場面/効かない場面
標準の刺繍枠は、ネジ締めと内枠の水平を同時に作る必要があり、慣れるまで時間がかかります。締めすぎると枠跡が残りやすいのも悩みどころです。
判断の目安:
- 枠張りに毎回時間がかかる(やり直しが多い)
- 厚物で枠が噛みにくい/薄物で枠跡が出やすい
このような場合、選択肢として マグネット刺繍枠(マグネット刺繍枠)があります。磁力で挟むため、押し込みやネジ締めの負担を減らし、枠跡や手首の負担を抑えやすいのが特徴です。
さらにAltair 2の運用で、対象機種向けの マグネット刺繍枠 babylock 刺繍ミシン 用 を検討することで、連続作業の枠張り時間を短縮しやすくなります。
注意:マグネットの安全
マグネット刺繍枠は強力な磁石を使用します。吸着時に強い力で閉じるため、指を挟まないよう接触面に指を入れないでください。また、医療機器や磁気カード等には近づけないよう配慮します。
IQ Designerの位置づけ
IQ Designerは、画面上でデザイン作成・編集を進められる機能です。

補足(作業時間の考え方): 画面操作に時間をかけるほど、ミシンは縫っていない時間が増えます。趣味なら楽しめますが、作業時間を管理したい場合は「編集はまとめて行い、縫う時間を確保する」という考え方が有効です。
まとめ:Altair 2を“安定稼働”させるために
トラブルシュート:症状 → ありがちな原因 → 対処
| 症状 | ありがちな原因 | すぐできる対処 | 予防 |
|---|---|---|---|
| 裏で糸が団子(鳥の巣) | 上糸が調子器に入っていない等で上糸テンションが効いていない | 押えを上げて上糸を最初から通し直す | 糸をチャンネルに“置く”だけでなく、手応えを確認 |
| 針折れ | 針の曲がり/摩耗、素材に対して針が合っていない | 針交換 | 異音がしたら停止し、針先を点検 |
| 糸切れ/毛羽立ち | 糸の劣化、針の傷、糸コマ押さえの不適合 | 針交換→糸コマ押さえ確認 | 糸の引き出しが引っ掛からない状態を作る |
| 枠跡 | 標準枠の締めすぎ、素材に対して圧が強い | スチームで繊維を戻す | Baby Lock マグネット刺繍枠 の検討 |
1) 刺繍中の停電/電源OFF
Altair 2は再開(レジューム)機能があります。電源復帰後に再開を選び、布を枠から外さないことが重要です。布や枠が動いていなければ、停止した針数まで進めて続行できます。
2) 薄手素材の噛み込み/寄れ
薄手は刺繍の針数に負けて変形しやすい素材です。スタビライザー選びと固定方法で安定度が変わります。
事前チェック(画面を触る前)
- 針:曲がり・摩耗がないか
- ボビン:残量は十分か
- 清掃:ボビン周りの糸くずを除去
- 枠張り:ピンと張るが、伸ばしすぎない
- 可動域:刺繍アーム周辺に障害物がない
設定チェック(ミシン+設定)
- 上糸:押えを上げて糸通し/手応えを確認
- ボビン:ガイドに沿わせてセット
- 単位:インチ/mmの表示を用途に合わせる
- 糸表示:糸ブランド設定(必要に応じて)
- 速度:まずは扱いやすい速度から
運用チェック(縫製/刺繍共通)
- プレビュー:画面の見え方で無理な条件になっていないか
- 安全:針周りに手や物が入っていないか
- 初動監視:最初の縫い出しで異音があれば停止
Altair 2は、操作が簡単な分だけ「条件出しの精度」が仕上がりを左右します。糸通しの手応え、ボビンの安定、枠張りの張り具合をチェックポイント化しておくと、再現性が一気に上がります。枠張りに時間を取られている場合は、工程のボトルネックがどこにあるかを見直し、必要に応じて マグネット刺繍枠 用 枠固定台 のような周辺治具や、マグネット枠の導入で作業時間を圧縮するのも現実的な選択肢です。
