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BAI Vision-2Heads の概要
1ヘッド機から2ヘッドの業務用環境へ移行するのは、心理的にも運用的にも大きなジャンプです。作業が「作品づくり」から「生産」に寄っていきます。BAI Vision-2Heads のような構成を検討している方が求めているのは、新しい機械そのものではなく、スループット(処理量)という明確な指標の改善です。つまり「作業時間を倍にせず、1日の完成点数を増やす」こと。
動画では、この機械をキャップや衣類向けの“生産向けワークホース”として紹介し、タッチパネルによって操作のハードルを下げられる点を強調しています。ただし、現場で結果を左右するのは機械だけではありません。素材の癖の理解、事前準備、枠張りの習慣が、仕上がりとロス率を決めます。

想定ユーザー
動画内では、小規模事業者(商品ライン拡大)と、本格的に業務へ移行したい上級者層が対象として明言されています。実務的には、このクラス(“プロシューマー〜ライトインダストリアル”の中間帯)が効いてくるのは、次のような状況です。
- 1針機で刺繍枠の付け替えが多く、手首や指に負担が出てきた
- まとまった受注(例:キャップ20点以上、ポロ50点以上)を納期理由で断りがち
比較検討の中で頻出するキーワードが bai 刺繍ミシン です。本ガイドでは、動画が示す「機能」と「用途例」を土台に、現場で差が出る“経験値の穴”を埋めます。工業速度での安全意識、テンションの見極め、ミスで高価なボディを潰さない段取りを、作業フローとして落とし込みます。
機械の要点(動画の主張を現場に翻訳)
- 2ヘッド(デュアルヘッド):生産数は伸びますが、ミスの損失も同時に増えます。データ不備や位置ズレがあると、2枚同時に不良になります。
- 多針:色替えの段取り(通し替え)による停止時間を減らし、多色ロゴを連続で回しやすくします。
- タッチパネル/自動テンション:新人オペレーターの“怖さ”を下げる設計意図。

動画ではキャップと衣類(ポロ、レザー、コットン)での稼働例が出ます。ここは「対応素材」ではなく、生産環境の切り替えとして捉えるのが重要です。素材が変われば、速度・スタビライザー・枠張りの“レシピ”が変わります。
生産性に効くポイント(機能ではなく運用)
動画はプロモーションなので「できること(What)」中心です。ここでは「儲けにつながる回し方(How)」に寄せます。
2ヘッドの効率を出す条件
2ヘッドは強力ですが、効くのは サイクルタイムの同期が取れているときです。
- 生産モード:同一デザインを同一アイテムに2枚同時
- 非同期運用:独立ヘッドを活かして別ジョブを並行
落とし穴は「同期遅れ」です。片側が先に終わる/次の枠張りに時間がかかって機械が待つ、という状態になるとROIが落ちます。
独立ヘッド運用でボトルネックが移る
動画では「各ヘッドが独立稼働」と説明されています。現場では、ボトルネックが刺繍時間から 段取り時間(枠張り→装着→糸切り・処理)へ移ります。
ボトルネックの現実 業務機は高速で縫えます。一方、標準の刺繍枠で衣類を正確に枠張りするのは、慣れても数分かかることがあります。機械が縫い終わる速度に人が追いつかないと、機械が“待ち”になり、2ヘッドの意味が薄れます。
工具アップグレードの考え方(状況→基準→選択肢)
- 状況(サイン):ネジ締め作業で手首が痛い/ポロなどで枠跡(テカりの輪)が残って戻らない
- 基準:枠張りが全体工数の大きな割合を占めている、または枠跡で廃棄が出ているなら“機械”ではなく“段取り”の問題
- 選択肢:
- レベル1:浮かし(スタビライザー側に仮固定して生地を枠に挟まない)を試す。ただし位置合わせがシビア。
- レベル2(現場向き):マグネット刺繍枠の導入。ネジ調整なしで一定のクランプ力が得やすく、枠張りの再現性が上がります。結果として、シワ・引きつれ(パッカリング)や生地のズレ(フラッグ)を抑えやすくなります。
マグネット刺繍枠 を探している方へ:マグネットは縫い品質そのものを“魔法のように”上げるものではなく、枠張りテンションのばらつきを減らすことで、事故率を下げる道具です。
多針運用(速度の扱い方)
動画は多針クラスであることを示唆しています。
速度の“甘いところ” 定格が高くても、導入直後から上限で回すのはおすすめしません。
- 現場ルール:摩擦は熱になり、熱は糸切れにつながります。
- 立ち上げの目安:最初は無理に上げず、糸の挙動と針の動きが目視で追える範囲で安定させ、素材が安定している条件で段階的に上げます。

使いやすさの中身(毎日の操作に落とす)
動画は「使いやすい」を強調します。ここでは、日々のミス防止に直結する使い方に分解します。
InStitch i5 タッチパネル
InStitch i5(操作パネル)は、視覚的に確認できる点が強みです。旧型のように“ボタン操作の暗記”に頼りにくく、プレビューで最終確認ができます。

開始前の画面チェック(位置合わせの最終防波堤) スタート前に、画面で向きと配置を必ず確認します。
- 画面:プレビューで上下が正しいか
- 現物:衣類なら襟側/裾側、キャップならドライバー装着方向
- 重要:キャップは装着都合で向きが変わりやすく、最後の確認を画面で行うのが事故防止になります。
自動糸調子(自動テンション)
動画では自動糸調子を強調しています。ただし「自動=放置でOK」ではありません。機械は制御しますが、下糸部の糸くず詰まりなどの“物理抵抗”までは感じ取れません。
テンションの簡易チェック(裏面で判断) 見た目で判断できるテストを1つ持っておくと、立ち上げが速くなります。
- 1インチ程度のサテン(細いカラム)を縫う
- 裏返して確認
- 目安:下糸(白)が中央に適度に見え、左右に上糸色が回り込む状態
- 上糸色しか見えない:上糸が緩い/下糸が強い可能性
- 白が多すぎる:上糸が強い可能性
注意:機械的危険
針棒・可動部・糸切り機構は人の反応速度より速く動きます。電源ON/待機状態でも、針周辺に手を入れないこと。長い髪、アクセサリー、ゆるい袖口は必ず固定してください。

内蔵デザインの使いどころ
動画では内蔵ライブラリに触れています。現場ではこれを 診断用の基準データとして使うのが有効です。
- カスタムロゴが崩れる → 内蔵の文字(例:単文字)を縫う
- 文字が綺麗:原因はデータ(パンチ/順序)側
- 文字も崩れる:原因は機械設定/テンション/枠張り側
変数切り分けが早くなります。
用途別の現実(キャップ/厚物/衣類)
動画は「キャップ、衣類、レザー対応」をうたいます。ここでは切り替え時の注意点を作業として整理します。
キャップ刺繍
キャップは難易度が高い部類です。動画でもキャップドライバーでの稼働が示されており、曲面を保ったまま縫うために重要です。

キャップのチェック軸(感覚で早期発見)
- 音:キャップは空間があるため音が変わることがあります。ただし、硬い異音が出たら枠や金具に当たっている可能性があるため即停止。
- 張り:装着が甘いとフラッグ(生地の浮き)→針折れにつながります。中央をつまめるなら緩いサイン。
アクセサリー比較では bai キャップ用刺繍枠 のように探すことがあります。重要なのは名称より、装着時にズレない保持力(クリップの効き)です。
レザー/厚物の扱い
動画はレザー対応を示します。レザーは針穴が戻らないため、失敗コストが高い素材です。

レザー運用の基本
- 針:ニット用(ボールポイント)から、素材に合わせた針へ切り替えを検討(穴が残る前提でテスト必須)
- 速度:まずは控えめにして、糸切れ・熱・糸の毛羽立ちが出ない条件を探す
- スタビライザー:裂けやすい条件では、裏打ちが弱いと保持できず事故につながります。テスト縫いで裏面の安定を確認。

衣類刺繍(ポロ/Tシャツ)
動画ではポロやTシャツが例に出ます。現場の主力カテゴリです。

敵はパッカリング(引きつれ)と歪み ニットは伸びます。枠張りで強く引っ張ると、外した瞬間に生地だけ戻り、刺繍が戻らず周囲が波打ちます。
対策の基本
- スタビライザー:ニットはカットアウェイを基準に考える
- 枠張り:生地目を引っ張って“太鼓張り”にしない。必要なのは「平ら」であって「過伸長」ではありません。


事業としてのROI(投資回収を現実に寄せる)
動画は「ビジネス投資」として語ります。ここでは、現場で効くのは“稼働率”と“段取り”という前提で整理します。
生産数を伸ばす段階運用
2ヘッド=売上2倍、ではありません。需要があって初めて回収できます。
- 開始:まずはヘッド1で安定運用
- 拡張:まとまった受注が見えてからヘッド2を本格稼働
- 注意:ヘッド2を「予備」として眠らせ続ける運用は避け、定期的に動かして状態を維持する意識を持つ

仕上がり品質はQCループで決まる
- 裏面チェック:裏の糸が極端にルーズならテンションや縫い条件を疑う
- 糸切りの見た目:自動糸切り後の糸端が極端に短い/長い場合は、見栄えやほつれリスクに直結します(まずは“ばらつき”がないかを確認)
コストと現実(重量・搬入・設置)
動画では重量として 260kg(本体)/409kg(梱包)が示されています。

搬入・設置の現実 これは卓上機ではなく、設備です。
- 床:振動や設置の安定性は仕上がりに影響します。設置前に床の状態と水平を確認。
- 搬入経路:搬入口・通路・扉幅など、クレートが通るかを事前に確認。
工具アップグレードの考え方(状況→基準→選択肢)
- 状況(サイン):10枚のシャツ段取りに長時間かかり、枠張りで詰まっている
- 基準:枠張りが工数の大きな割合を占めるなら利益が削られる
- 選択肢:bai 刺繍枠 や bai 刺繍枠 のように刺繍枠を探す場合、取り付け規格やアーム間隔など“機械側の条件”を必ず確認し、適合しない枠を買わないこと
判断ツリー:生地 → スタビライザー(裏打ち)の初期値
「なぜ刺繍が汚いのか」の多くは、裏打ちの選択ミスと枠張りの過不足です。まずは初期値を決めて、テストで詰めます。
1) 伸びる素材(ニット、ポロ、ビーニー、機能素材)?
- はい:カットアウェイを基準にする(生地の構造を裏打ちで支える)
- いいえ:Step 2へ
2) 薄い/不安定/透ける(薄手T、レーヨン系、シアー)?
- はい:ポリメッシュ系のカットアウェイなど、表に響きにくい裏打ちを検討
- いいえ:Step 3へ
3) 厚手で安定した織物(デニム、キャンバス等)?
- はい:ティアアウェイを起点に検討(保持が目的)
- いいえ:Step 4へ
4) 毛足がある(タオル、フリース、ベロア)?
- はい:裏:ティアアウェイ/表:水溶性トッピングを起点に検討(沈み込み防止)
まとめ
動画のメッセージは明快です。BAI Vision-2Heads は、2ヘッド/多針というハード面と、タッチパネル/自動糸調子といった運用支援で、キャップと衣類の受注を“業務量”へ引き上げる入口になり得ます。

BAI Vision-2Heads が向く人/リスクが出やすい人
向く人:
- 1針の家庭用から明確にステップアップしたい
- 設置スペースと重量に対応できる
- 注油・テンション・段取りといった“工業運用”を学ぶ意思がある
リスクが出やすい人:
- 自動糸調子が枠張りミスまで解決すると期待している
- 重量・騒音・搬入を甘く見ている
投資回収を最大化するには、機械スペックより 工程(プロセス)を見直すのが近道です。段取り時間がボトルネックなら、マグネット刺繍枠 用 枠固定台 や ミシン刺繍 用 枠固定台 のような枠固定台で位置合わせを標準化し、胸位置などの枠張りを短時間で再現できる状態を作ると効果が出やすくなります。
注意:マグネット安全ガイド
マグネット刺繍枠は強い吸着力があります。
* 挟み込み:指を挟む危険があります。必ず両手で保持して着脱。
* 医療機器:ペースメーカー等を使用している場合は磁場に近づけない(距離の目安は機器の指示に従う)。
* 電子機器:カード類やスマートフォンは近づけない。

準備(見落としがちな消耗品と物理チェック)
動画は機械紹介が中心ですが、実際の安定稼働は「箱に入っていないもの」で決まります。準備しておくと詰まりにくいもの:
- 針:素材に合わせて番手・ポイントを使い分け。稼働時間で定期交換。
- 仮固定:ワッペン等で浮かしをする場合の一時固定(使いすぎは汚れ・ズレ要因)
- 注油用品:ミシン油など(注油箇所は必ずマニュアル準拠)
- リカバリー工具:ピンセット、糸ほどき系ツール(ミスの復旧用)
準備チェック(週初めのルーティン)
- ボビン周り清掃:下糸部の糸くずはテンションばらつきの原因
- 針の向き:針穴の向き・取り付け状態を確認(ねじれは糸切れ要因)
- 糸道:テンション部に糸くずや引っ掛かりがないか確認
- 設置クリアランス:可動範囲に干渉物がないか(壁・台・配線)
セットアップ(機能を結果に変える)
針が動く前に、タッチパネルで“事故を潰す”設定確認を行います。
セットアップチェック(開始前)
- データと素材の一致:キャップ用の順序をTシャツで回さない等、用途違いを避ける
- トレース/輪郭確認:トレース機能で枠や治具に当たらないか確認(当たるなら中止して再センター)
- 下糸残量:途中で切れると復旧コストが大きい
- 色順:針番号と色指定が画面通りか
稼働中(最初の60秒で勝負が決まる)
稼働中は放置しないのが基本です。
稼働チェック(最初の60秒)
- 音:一定のリズムか、金属音が混じるか
- 下縫い(アンダーレイ):最初の固定が効いているか
- 位置合わせ:色替え後に輪郭が合っているか。ズレるなら枠ズレを疑う
トラブルシュート(症状→原因→最短対処)
トラブルは起きます。コストの低い順に切り分けます。
- 症状:糸切れ/糸がささくれる
- 低コスト確認:糸道が正しいか、針が曲がっていないか(まず針交換)
- 中コスト確認:糸が劣化していないか
- 高コスト確認:タイミングずれ(技術者対応)
- 症状:鳥の巣(針板下に大きな絡み)
- 原因候補:上糸テンション不足、糸がテイクアップに掛かっていない等
- 対処:無理に引かず、裏側から絡みを切って除去→上糸を通し直す→テンションを段階的に見直す
- 症状:キャップの柄が斜め/曲がる
- 原因候補:キャップが左右均等に座っていない、固定が甘い
- 対処:再装着。汗止めの収まり、クリップの掛かりをフラットに整える
成功の定義(利益が残る状態)
BAI Vision-2Heads のような機械は生産を可能にしますが、利益を残すのは工程です。成功の目安:
- 枠跡が最小:適切な裏打ちと枠張り(必要に応じてマグネット系治具)
- パッカリングが出ない:ニットは裏打ちと過伸長防止
- スループットが上がる:人の枠張り速度を2ヘッドの縫い速度に近づける
“再現できる段取り”を作り、身体負担や段取り詰まりが見えたら工具を見直す。そうすると、刺繍点数に比例してROIがついてきます。
