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bernette 79 Yaya Han Edition(b79)とは:開封動画を「作業手順」に落とし込む
開封動画は見ていて楽しい一方で、ミシン刺繍を始めたばかりの方ほど「最初に何をすればいいか」が曖昧なまま進みがちです。その結果、糸切れ・シワ(パッカリング)・位置ズレ・エラー表示などで、最初の週末が“調整地獄”になってしまうことがあります。
Pam Hayesによるbernette 79 Yaya Han Edition(b79)の紹介では、特別バンドルの中身が一通り確認できます。具体的には、Bernina Embroidery Software 9 Creator、刺繍枠3種(S/M/L)、Yaya Hanセレクトの押さえ金キット、そして刺繍品質に直結する直線針板(ストレートステッチプレート)などです。
ここでは、その開封内容を「刺繍を安全に始められる状態」までのワークフローとして再編集します。画面操作の確認、取り付け順序の依存関係、そして“最初の失敗を避けるためのチェックポイント”を中心にまとめます。
小ロット制作やコスプレ衣装の仕上げを狙うなら、同梱の刺繍ミシン 6x10 刺繍枠サイズ(最大刺繍エリア6x10インチ)は扱いやすいレンジです。中〜大きめのモチーフや背中寄りの配置など、実用域が広いのが強みです。

箱の中身(上段)を先に押さえる:ソフト・カード・刺繍枠
箱の上段には「価値が高いもの」「初期登録に関わるもの」がまとまっています。ここは急いで捨て梱包しないのがコツです。
- Bernina Embroidery Software 9 Creator(ソフトの箱)
- ニーリフター(Free Hand System):両手を布に添えたまま押さえ上げ下げができる操作系パーツ
- 刺繍枠3種(まとめて梱包)
- デザイン/登録カード(QRコード付き)


刺繍枠 S/M/L:サイズ選びは「布の物理」で決まる
Pamは枠を取り出し、樹脂フレームに成形されたS / M / L表記と、グリッド(位置合わせ用の目安)を確認しています。枠選びは“入るかどうか”だけでなく、布の挙動(たわみ・沈み込み)に直結します。
メーカーの基本ルール:入るなら「最小の枠」を使う
- 理由:大きい枠に余り布が多いと、布がトランポリンのように上下しやすくなります。針が刺さる前に布が押し下げられ、縫い飛びや位置ズレ(アウトラインと塗りが合わない)につながります。

枠張りの感覚合わせ:「太鼓の皮」チェック 枠張りは、布とスタビライザーで“張力の面”を作る作業です。
- 見た目:布目が歪んでいないこと(グリッドが曲がる=張り過ぎ/歪みのサイン)
- 触感:指で軽く叩くとピンと張っているが、つまむとわずかな“逃げ”がある(過度に引っ張って固定しない)
- 音:鈍い音なら緩い可能性。逆に高く硬い音で張りすぎると、枠から外した後に縮み戻りでシワが出やすくなります。
アップグレードの考え方:いつマグネット刺繍枠に切り替える?
同梱の刺繍枠は、ネジで締めて内枠を押し込む“摩擦式”です。週に1枚程度の刺繍なら十分実用的です。
一方で、次のような状況が出てきたら、マグネット刺繍枠への切り替えを検討する価値があります。
- きっかけ1(手首の負担):連続で10点以上など、枠張り回数が増えてネジ締めが負担になる
- きっかけ2(枠跡):ベルベット・ビニール・合皮などで、摩擦式の圧痕(枠跡)が残りやすい
- きっかけ3(厚み):衣装の重ねが厚く、内枠が物理的に入りにくい
考え方:マグネット刺繍枠は“摩擦”ではなく“吸着力”で保持します。枠跡のリスク低減や、枠張り作業の負担軽減につながります。
注意:マグネットの安全管理 マグネット刺繍枠は強力な磁力を使うため、指を挟むと強い痛みや血豆の原因になります。磁石は「こじる」のではなく、基本はスライドさせて外す運用を徹底してください。また、ペースメーカー等の医療機器や磁気媒体には近づけないでください(目安として6インチ以上離す)。
Yaya Han限定 押さえ金キット:便利だが「取り付け条件」を先に確認
Pamは半透明ケースに入った押さえ金キットを開封します。便利な反面、最初につまずきやすいのがシャンクアダプター(取り付け高さ/方式の変換)です。


シャンクアダプター:初期セットで起きやすい取り付けミス
一部の押さえはスナップオン形状だったり、標準ホルダーと高さ条件が異なります。
- チェックポイント:押さえが標準ホルダーに合わない/不安定に見える場合、キット内のシャンクアダプターの有無を確認
- 作業:標準ホルダーを外してアダプターを取り付けます。付属ドライバーでネジを確実に締め、指締めのままにしない(振動で緩みやすい)
使いどころ早見表(まず使う3つ)
引き出しの肥やしにしないために、用途で覚えるのが近道です。
- コンシールファスナー押さえ:衣装の“見えない閉じ”をきれいに作る
- テフロン(ノンスティック)押さえ:ビニール/合皮で送り抵抗を減らす
- オープントゥ押さえ:サテン縫い・アップリケで針落ち位置が見やすい
本体セットアップと刺繍モジュール準備:順番(依存関係)を守る
Pamの手順は合理的です。ここでは、実務で事故やエラーを減らすための“安全バッファ”を追加します。

手順1:設置の安定性とクリアランス確認(揺れチェック)
Pamはハンドルを持って本体を取り出しています。
- 設置:しっかりした作業台に置く
- 揺れチェック:テーブルを軽く揺すってガタつく場合、刺繍中に位置ズレが出やすくなります。まず設置環境を固めます。

注意:持ち上げ作業 b79本体は重量があります。腰ではなく膝を使って持ち上げ、無理をしないでください。また、刺繍モジュール(アーム)が動くため、左側/後方に十分なスペースを確保します。初期化動作で壁に当たると故障リスクがあります。
手順2:電源投入と画面の反応確認
Pamは側面に電源コードを挿し、スイッチを入れて起動します。
- 想定:起動に少し時間がかかります(内部で初期化動作が走るため)。カチカチ音などがしても、初期化の範囲なら通常動作です。
- 画面チェック:言語選択(PamはEnglish)→ステッチメニュー表示→タッチ反応を確認


手順3:取り付けの前提条件(作業順の依存関係)
刺繍モジュールやスライド式テーブルは、フリーアームカバー(アクセサリーボックス)を付けたままでは取り付けできません。
- 作業:フリーアームのアクセサリーボックスを左に引いて外す
- 作業:スライド式テーブルの脚を開く
- 作業:フリーアームに差し込み、カチッと固定されるまでスライド


同梱アクセサリーの中で「刺繍品質に直結する2点」
オイルやブラシなどの付属品の中でも、刺繍の失敗率を大きく左右するのが次の2点です。
- 直線針板(ストレートステッチプレート):針穴が小さいタイプ
- 高テンション下糸ケース(ボビンケース):刺繍用として同梱


「9mmの落とし穴」と回避策(布の巻き込み対策)
動画内でも、刺繍時に重要な部品として針板とボビンケースが示されています。
- 背景:b79は最大7.0mm幅のステッチ表示もあり、装飾縫いに強い設計です。一方で、刺繍では針板の開口が広いと、Tシャツなど柔らかい素材が針穴側に押し込まれやすくなります。
- 起きること:縫い飛び、糸絡み(いわゆる鳥の巣)、生地の巻き込み
- 対策:刺繍時は直線針板(ストレートステッチプレート)と高テンション下糸ケースを使用する(同梱品)
事前チェックリスト(刺繍を始める前の“点検”)
- 登録:QRコードのカードを確認し、必要に応じて機械登録/デザイン取得を行う
- 針板:標準針板 → 直線針板(ストレートステッチプレート)に交換
- 下糸ケース:標準 → 高テンション下糸ケースに交換(刺繍用)
- 周辺スペース:刺繍モジュールが動く範囲に十分な空間がある
まとめ:b79バンドルを“刺繍が安定する状態”へ持っていく
b79 Yaya Han Editionは、同梱品が充実している分、最初に「何を刺繍用に切り替えるか」を押さえるだけで成功率が上がります。特に、直線針板(ストレートステッチプレート)と高テンション下糸ケースは、仕上がりとトラブル回避に直結するため、最初に必ず確認してください。
スタビライザー選びの考え方(迷わないための基準)
スタビライザー(刺繍用の安定紙/安定材)は、素材の性質に合わせて選びます。
| 生地の特徴 | スタビライザー | 針 | 枠張りの考え方 |
|---|---|---|---|
| 伸びる(Tシャツ、スパンデックス) | カットアウェイ(形を保持する) | ボールポイント系 | 引っ張って張らない。必要なら浮かせ(フローティング)も検討 |
| 安定している(デニム、帆布) | ティアアウェイ | シャープ系 | 太鼓の皮のように均一に張る |
| 毛足/凹凸(タオル、ベルベット) | ティアアウェイ+水溶性トッパー | シャープ/ボールポイント | 糸が沈むならトッパーを追加 |
もしbernette b79 用 マグネット刺繍枠を探している場合、マグネット刺繍枠は上の表でいう「伸びる」「毛足/凹凸」系の素材で、摩擦式リングによる局所的な歪みを抑えたい場面に向きます。
初回運用:最初の刺繍でやること(手順化)
- 速度:最初から最高速で回さず、まずは600 SPM程度に落として様子を見る(糸切れや絡みのリスクを下げる)
- 糸経路:糸が引っかかっていないか確認(スプール周りなど)
- 最初の数針で一時停止:縫い始めの糸端が巻き込まれないよう、少し縫ったら止めて糸端を処理してから再開
位置合わせ(狙った場所に正確に置く)が難しい場合は、刺繍用 枠固定台のような治具で枠位置を固定し、衣類側を合わせる運用が定番です。
トラブルシューティング(症状 → 原因 → 対策)
1)下側で糸が団子になる(鳥の巣)
- 原因候補:上糸がテンション皿に入っていない(上糸かけミス)
- 対策:押さえを上げて上糸をかけ直し、押さえを下げた状態で糸を引いて抵抗があるか確認
2)布が針板に吸い込まれる/巻き込まれる
- 原因候補:刺繍なのに標準針板(ジグザグ側)を使っている
- 対策:すぐ停止し、無理に引き抜かず、直線針板(ストレートステッチプレート)へ交換
3)下糸が表に出る
- 原因候補:上糸テンションが強すぎる、または下糸側が刺繍用になっていない
- 対策:高テンション下糸ケースを使用しているか確認。使用中なら上糸テンションを少し下げて様子を見る
4)枠張りに時間がかかる/手首が痛い
スケールの現実:次に詰まるポイント
この手順で、開封から「刺繍で失敗しにくい初期状態」まで到達できます。一方で、注文数が増えると、単針運用では色替えの手間がボトルネックになります。
- レベル1:枠張り精度の改善(刺繍ミシン 用 枠入れの基本を固める)
- レベル2:マグネット刺繍枠で枠張り時間と枠跡リスクを下げる
- レベル3:量産を見据えるなら多針刺繍機を検討(色替え回数の削減が効く)
まずはb79のセットアップを丁寧に行い、同梱の“刺繍用パーツ(直線針板・高テンション下糸ケース)”を確実に使うところから始めてください。
