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完全ガイド:Bernina 770 QE/765 ファームウェア更新とPLUSアップグレード
ミシンの「頭脳(ファームウェア)」を更新する作業は、緊張感があるのが普通です。再起動中に画面が暗転すると、経験者でも一瞬ヒヤッとします。いまこの瞬間だけは、機械の制御を“データ”に預けることになるからです。
とはいえ、Berninaの「PLUS」アップグレードは単なる修正ではなく、機能を拡張するための正式なアップグレードです。安全に到達するには、説明書の手順をなぞるだけでなく、作業の衛生管理(ミスを起こさない段取り)が重要になります。
このガイドは、Bernina 770 QE/765で実際に行われている流れ(ダウンロード→USB準備→本体更新→ID取得→オンラインでActivation Key発行→本体で有効化)を、作業者目線で「見落としやすいポイント」まで含めて整理したものです。

まず全体像:なぜこの順番なのか/どこで失敗しやすいのか
アップグレード作業は、大きく次の3フェーズに分かれます。
- 物理準備:USBメモリの条件(ここが最頻の失敗ポイント)
- デジタル導入:本体へファームウェアを書き込み(中断厳禁)
- アクティベーション:Product KeyとMachine IDを使って有料機能を解放
よくある失敗(先に潰す)
- 「ZIPのまま問題」:解凍せずにZIPを入れてしまい、本体が更新ファイルを認識しない
- 「容量・形式問題」:大容量USB(64GB以上など)で、既定がexFATになっていて読めない
- 「バックアップ忘れ」:設定や保存データが更新後に残らず、復旧に時間がかかる
準備物:説明書に書かれない“実務セット”
必須
- USBメモリ:空のもの/32GB以下/FAT32でフォーマット
- Bernina PLUS Upgrade Kit:箱の中のカード(Product Key)が必要
- インターネット接続できるPC
- 紙とペン:Machine IDを書き留めるため
あると作業が安定するもの(動画内で推奨されている範囲での現場的補助)
- スマホのカメラ:Machine IDなどの長い英数字は、書き写しミス防止に「画面を撮る」のが確実
注意(作業姿勢):更新作業中は他の作業を並行しないでください。Machine IDやメールアドレスの入力ミスは、再発行や問い合わせの手間につながります。
事前チェック:Go/No-Go
Step 1に進む前に、すべてチェックしてください。
- USB条件:32GB以下/空/FAT32
- 記録手段:紙とペン、またはスマホで画面を撮れる
- アクセス:bernina 刺繍ミシン のサポートページにアクセスできる(ファームウェア入手先)
Step 1:ファームウェアの入手とUSB準備(ここで9割決まる)
本体が読めるのは「決められた形で置かれた更新ファイル」です。PC側はZIPでまとめたり、フォルダに入れたくなりますが、ここはミシンのルールに合わせます。

1A)ダウンロード
- お使いの機種(770 QE/765)のBerninaサポートページへ移動
- Firmware(ファームウェア)項目を探す
- 最新のZIPパッケージをダウンロード

1B)解凍(最重要)
ZIPは「中身が入ったままのケース」です。ケースのままでは本体が読めません。
Windowsの場合
- ダウンロードしたZIPを右クリック
- 「すべて展開」(Extract All)を選択
- 展開先はUSBメモリのドライブ直下(例:E:)を指定
- 「Update」などのフォルダを作ってその中に入れない
- ルート(最上位)に置くのが条件
チェックポイント(必ず目視)
- USBを開いたときに、個別のファイルが3つ見える状態になっている
- もし「ジッパーの付いた1ファイル(ZIP)」しか見えないなら、この工程は未完了です。削除してやり直してください。

現場のコツ:更新専用USBを作る
更新用USBは、刺繍データ等と混在させないほうが迷いが減ります。ラベルを貼って「更新専用」として運用すると、次回以降の作業が速くなります。
Step 2:本体でファームウェア更新(中断しない)
ここからは本体側の操作です。更新中はUSBを抜かず、電源も触らないのが鉄則です。

2A)接続手順
- ミシンの電源をOFF
- 準備したUSBメモリを本体のUSBポートへ挿す
- 電源をON

補足(やっておくと安心):開始前に、 設定(歯車)> Machine > Information > Version で現在のバージョン(例:v37.46.33)を確認し、スマホで撮影しておくと、更新後の確認がスムーズです。
2B)安全策:データをUSBへバックアップ
更新で設定が保持されないケースに備え、先にバックアップを取ります。
- 設定(歯車)へ
- レンチ(メンテナンス)を選択
- Updateを選択
- Machine → USBのアイコン(本体情報をUSBへ保存)を選ぶ
チェックポイント:処理が終わると、画面上に緑のチェックが表示されます。これが「バックアップ完了」の合図です。

2C)更新を実行
- 同じ画面で、Update(USB → Machine)を選択
- 本体が再起動し、更新が走ります
注意(不安になりやすい挙動)
- 画面が暗転する/表示が変わることがありますが、異常とは限りません
- USBは抜かない
- 電源は切らない

完了の目安:通常、ホーム画面へ戻るか、「Update Successful」等の完了メッセージが表示されます。
更新完了チェック
- 更新中にUSBを抜いていない
- 「USBへ保存(Machine→USB)」を実行し、緑チェックを確認した
- 更新が完了した旨の表示を確認した
Step 3:Machine IDとオンライン登録(アクティベーションの準備)
ファームウェア更新が終わったら、次はPLUS機能を有効化するための「照合(登録)」です。ここでは Machine ID と Product Key が必要になります。

3A)Machine IDを控える
- 設定(歯車)> Machine > Information > ID
- 画面に長い英数字が表示されます
作業:
- まずスマホで画面を撮影
- 次に紙へ書き写す(入力時の見間違い防止)

3B)Product Key(キット同梱カード)を確認
PLUS Upgrade Kitを開け、カード内のコード(Product Key)を確認します。これは「購入済み」を証明するキーです。


3C)PCで登録してActivation Keyを発行
PCからBerninaのアクティベーションサイトへ進み、登録を行います。
- メールアドレスを入力(誤入力防止のため、特に慎重に)
- Machine IDを入力
- Product Keyを入力

結果:サイト上で Activation Key が発行されます。
- PDFは必ず保存:サイトからPDFをダウンロードでき、同内容がメールでも届きます。後日の再設定や復旧時のために保管しておくと安心です。
Step 4:本体でPLUS機能を有効化

- ミシン本体へ戻る
- 設定(歯車)> Machine > Information > Upgrade
- Activateを選択
- サイトで発行された Activation Key を入力
チェックポイント:最後の文字まで正しく入ると、画面に緑のチェックが表示されます。
- 確定(必要に応じて再起動/画面更新)

成功の目安:ステータスが 「Enabled」 になっていれば有効化完了です。
補足:アップグレード後に“作業性”を見直す視点
ソフトウェアが更新され、機能が増えると、刺繍作業の回転数も上がりがちです。そのときに現場で問題になりやすいのが、枠張り時の圧痕(枠跡)や、枠張り作業の負担です。
プロの現場では、用途に応じて マグネット刺繍枠 を選択肢に入れることがあります。Berninaで使う場合は bernina 用 マグネット刺繍枠 として運用されることもあります。
注意(マグネットの取り扱い):強力な磁力のため、指を挟まないように注意してください。
トラブルシューティング:迷ったらここだけ確認
ケースA:本体で更新ファイルが見つからない/反応しない
- 確認1:USBが32GB以下か? → 大きい場合は小容量に変更
- 確認2:FAT32か? → PCでフォーマットを見直す
- 確認3:ファイルがフォルダ内に入っていないか? → ルート直下へ移動
- 確認4:ZIPのまま置いていないか? → 必ず解凍して3ファイルが見える状態にする
ケースB:Activation Codeが無効と言われる
- 確認1:Machine IDの見間違いがないか(0とOなど) → 撮影した写真で再確認
- 確認2:Product Key(カード)を入れていないか? → 入力すべきはサイトで発行されたActivation Key
ケースC:更新中に固まったように見える
- 対応:最低でも20分は待機。改善しない場合は認定技術者/サポートへ相談。指示なしに電源を切らない。
最終チェック(作業完了のサインオフ)
- ファームウェアのバージョンが新しい番号になっている
- Upgradeのステータスが「Enabled」になっている
- Activation KeyのPDF(またはメール)を保管した
- USBメモリを更新専用としてラベル管理できている
これで、店舗に依頼すると費用がかかる類のサービス作業を、自分の手で安全に完了できました。次の一歩として、簡単な刺繍デザインで動作確認を行い、設定や挙動に違和感がないかチェックしておくと安心です。
