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Brother Innov-is XJ1 Stellaire の開梱:これは「開封」ではなく初期立ち上げ作業
Brother Innov-is XJ1 Stellaire のような上位機種の開梱は、気分が上がる一方で、ここでのミスが後々のトラブルの原因になりがちです。たとえば、段ボールを深く切って外装に傷を入れる/小物が床に落ちて行方不明になる/青い輸送用テープを見落として可動部が引っ掛かる――こうした「避けられる不具合」は、開梱時にほぼ決まります。
これは単なる開封ではなく、機械のコミッショニング(初期立ち上げ)です。
本記事では、動画の流れを「誰がやっても同じ結果になる」手順に再構成しました。2箱構成の理解、240×240mm と 360×240mm の刺繍枠の棚卸し、青い輸送用テープを糊残りなく剥がすコツ、そして初回電源投入での表示確認までを、作業者目線でまとめます。
さらに、趣味運用から小規模受注へ移行する人が最初につまずきやすい「枠跡(枠のリング痕)」「手首の負担」「枠張り時間」を、最初から工程として捉える考え方も入れています。状況によっては、標準ツールだけで頑張るより、ミシン刺繍 用 枠固定台 や高保持力の マグネット刺繍枠 brother stellaire 用 が“必要経費”になる場面があります。

梱包構成(2箱に分かれて届く理由)
XJ1 Stellaire は 2つの輸送カートンに分かれて届きます。この分割を理解することが、最初の安全対策です。
- カートン 2/2(上箱): 刺繍ユニット、刺繍枠、マニュアル類、小物アクセサリー
- カートン 1/2(下箱/本体箱): ミシン本体
現場ルール(順番が重要): 本体箱から先に開けないでください。必ず カートン2(刺繍ユニット側)→カートン1(本体) の順に処理します。先に重い本体を出すと作業台が散らかり、刺繍ユニットや枠を置くスペースがなくなって、落下・接触・置き傷のリスクが上がります。

箱の中身:まずは「棚卸し」
本体以外にも、初期立ち上げに必要なものが複数入っています。開梱の流れに沿って、最低限次を確認します。
- 書類一式: 取扱関連の紙類、クイックガイド、保証書(発泡材と一緒に捨てない)
- 刺繍枠: ビニール包装、発泡材に固定されていることが多い
- 刺繍ユニット: 硬めの発泡材で保護
- 本体: ビニールで包まれている
- アクセサリーケース: 押え・ボビン・工具などが入った白いケース
- 電源コード: 発泡材の隙間に入っていることがある
- ニーリフターバー: 膝で押え上げを操作する金属バー(見落としやすい)


外観・剛性の第一印象(重さは味方)
ビニールを外して持ち上げると、Stellaire は「しっかり重い」と感じるはずです。刺繍の世界では、重さ=安定に直結します。高速で針棒が上下する振動を、機械重量が吸収してくれるためです。
補足(作業台の物理): 作業台が弱いと、機械が良くても仕上がりが不安定になります。
- 目視チェック: コップの水を台に置き、手で軽く振動を与えたときに水面が大きく波打つなら、台が柔らかすぎます。
- 起きること: 台の揺れが針棒側に戻り、サテンがブレたり、位置合わせズレ(アウトラインとフィルが合わない等)が出やすくなります。
注意: 段ボールを開けるとき、カッター刃は 3mm(1/8インチ)以上出さないのが基本です。上面のすぐ下にマニュアル袋や小箱が密着していることがあり、深く切ると外装に傷が入ったり、紙類を切ってしまいます。
付属品と刺繍枠
ここからは「部品の山」を、管理できる棚卸しに変えます。全点確認が終わるまで次工程に進まないのがコツです。

付属の刺繍枠サイズ
動画では 大型枠が2つ入っていることが確認できます。
- 240 × 240 mm(約 9.5" × 9.5"): キルトブロック、大きめロゴ、クッションカバー等
- 360 × 240 mm(約 14" × 9.5"): いわゆる「背中サイズ」用途の大型枠
大型枠で起きやすい“テコ”問題: 枠が大きいほど、固定点から針位置までの距離が長くなり、わずかな緩みがズレとして増幅されます。標準の樹脂枠は摩擦とネジでテンションを作るため、ネジの締め具合が甘いと縫製中に生地が内側へ引き込まれ、シワ(パッカリング)につながります。
アップグレードの考え方(きっかけ→対策): 大型枠のネジ締めがつらい/厚物(タオル等)で枠跡が強く出る――これは現場では典型的な切り替えポイントです。
- レベル1: 粘着系スタビライザーで「浮かせ(フローティング)」運用(手間は増えるが回避可能)
- レベル2: マグネット刺繍枠へ。横方向に引っ張らず上から挟み込むため、枠跡を抑えやすくなります。
- 業務的判断: トートや厚手ジャケットなど完成品への刺繍が増えるなら、マグネット刺繍枠 は保持力と段差越えの面で検討価値が上がります。
標準アクセサリーの内訳
白いアクセサリーケースを見つけます。中には押え類、リッパー、ドライバーなどが入っています。


補足(箱に入っていない“必要品”): 動画は「入っている物」は見せてくれますが、「安全に始めるために必要な物」までは教えてくれません。最低限、次を事前に用意しておくと立ち上げがスムーズです。
- 新しい針: 工場出荷時の針はテスト用途と考え、交換前提にします。
- 刺繍糸(40wt): ミシン糸は太さ・毛羽でテンション系に負担が出やすいので避けます。
- 糸切り(スニップ): ジャンプ糸処理をきれいに。
- 仮止め手段: スタビライザー固定用(スプレーのり/仮止めテープ等)。
刺繍ユニットの取り扱い
カートン2/2から刺繍ユニットを取り出します。ここがシステムの可動部(アーム)です。

現場のコツ(「カチッ」と噛み合う感覚): 刺繍ユニットは本体左側に装着します。装着時は、確実に機械的に噛み合う感触が必要で、グラつきがある状態はNGです。接続部に遊びがあると、円が楕円になるなど、縫い上がりの歪みにつながります。
アップグレードの考え方(量産のボトルネック): 小規模でも受注運用を始めると、詰まるのは刺繍速度より 枠張り時間です。機械が10分縫っている間に次の準備ができると、段取りが一気に楽になります。位置決めを安定させたいなら hoopmaster 枠固定台 のような治具系ツールと、用途に合う brother ミシン 用 刺繍枠(マグネット系を含む)を組み合わせる発想が出てきます。
初期セットアップと電源投入
ここからは「物の確認」から「起動確認」へ移ります。順番は固定です:本体を台へ→テープ除去→付属品確認→電源投入。

輸送用テープ(青)の除去
メーカーは可動部固定のために 青い弱粘着の輸送用テープを貼っています。見落とすと引っ掛かりの原因になります。
- 持ち手/上糸経路周辺: 上部ハンドル付近
- 針棒周辺: 特に重要。針棒の裏側も見る
- キャリッジ接続部: フリーアーム側


テープ除去:手順(感覚で確認する)
- 本体位置決め: 作業台の中央に置き、周囲に手を入れられる余白を確保します。

- ゆっくり剥がす: 上糸経路付近は特に、急に引っ張らずゆっくり。
- チェックポイント: 糊が「伸びる」感触がある場合は、剥がしが速すぎる可能性があります。
- 針周りのクリアランス確認:
- 目視チェック: 押え周辺・喉奥に青が残っていないか。
- 動作チェック: 押え上げレバーをゆっくり動かし、引っ掛かり感がないか。
- 糊残りの確認:
- 目視チェック: 白い樹脂面にくすみやベタつきがないか。糊残りはホコリを呼び込みやすいので、見つけたら早めに拭き取ります。
注意: 針先付近で作業する際は、指を針先に近づけすぎないでください。滑って指を傷つけたり、針板を擦る原因になります。狭い箇所はピンセット等を使う判断も有効です。
大型タッチパネル(操作の中枢)
Stellaire は大型のタッチパネルが特徴で、ここが操作の中心になります。


起動シーケンスと初回チェック
初回起動の確認(動作の“第一呼吸”):
- 電源コードは 本体側→壁側 の順で接続します。
- 右側のスイッチをON。
- 音のチェック: 起動音のあと、初期化の作動音(クリック/ウィーン)が自然に続くか。異常な擦れ音は要注意です。
- 表示チェック: 「Stellaire」ロゴが鮮明に表示されるか。
- 画面遷移チェック: ホーム/実用縫い(ユーティリティ)メニューに到達するか。
初期表示(実用縫い)の確認: 画面上で次が確認できる状態が目安です。
- Stitch 1-01(直線:中央)
- 長さ: 2.5 mm
- 幅: 4.0 mm(直線の場合は針位置に関係する表示)

準備(テープを切る前にやること)
ここを飛ばすと後悔しやすい工程です。「到着時破損」の多くは、実際には開梱中の傷や紛失が原因になりがちです。
作業環境の準備
動画からも、広めのスペースで作業していることが分かります。最低限の要件は次の通りです。
- 床スペース: 大箱を扱えるだけの余白
- 作業台: しっかりした台(持ち上げ・設置時にたわまないこと)
小物紛失を防ぐ段取り
開梱前に、次を用意しておくと事故が減ります。
- ゴミ用の箱: ビニールや発泡片を即回収(足元の滑り防止)
- 小物トレー: ネジ・押え・クリップなどを即投入
- スマホ撮影: 開梱前の外箱状態を撮影(輸送ダメージ確認の証拠)
準備チェックリスト
- 作業台: 物をどけて天板を空けた
- 床: 箱を回せるスペースを確保した
- 工具: ハサミ+カッター(刃は浅く)
- 整理: 小物トレーを手元に置いた
- 手の清潔: 手を洗って乾かした(樹脂面に皮脂が残りやすい)
セットアップ(2箱ワークフロー:この順番で固定)
事故を減らすため、時系列を崩さないで進めます。
Step 1 — カートン2(刺繍ユニット側)を開ける
目的: デリケートな刺繍ユニットと刺繍枠を先に確保。
手順:
- 箱 2/2 を開けます。
- いったん停止: マニュアル/保証書を最初に見つけて安全な場所へ。
- ビニール包装の刺繍枠を取り出し、枠のネジ部や樹脂に割れがないか確認します。
- 刺繍ユニットを取り出します。
- チェックポイント: 軽く揺すって、内部でカタカタ音がしないこと。
完了状態: 刺繍ユニットと枠が、作業台上で安全に管理できている。
Step 2 — カートン1(本体)を開ける
目的: 重量物を安全に移動。
手順:
- 箱 1/2 を開け、上部の発泡材を外します。
- 持ち上げ: 両手で底面を支え、腰ではなく膝で持ち上げます。
- 作業台へ静かに設置します。
- ビニールを外します。
補足(将来的な拡張の考え方): 本体サイズが大きい分、設置面積も取ります。将来的に処理量が増えると、単針フラットベッドでは段取りが詰まりやすくなるため、運用規模に応じて次の設備計画を考えることになります。
セットアップチェックリスト
- カートン2(刺繍): 空。枠とユニットに割れ・欠品なし
- カートン1(本体): 空。本体が台に水平に設置できた
- 発泡材: 可能なら箱に戻して保管(移動時に必要)
- マニュアル: すぐ取れる場所に置いた
操作(テープ除去→初回電源投入)
Step 3 — 保護テープを外す
目的: 可動部のクリアランス確保。
手順:
- ハンドル/持ち手周辺のテープを剥がす
- 針板/ボビンカバー周辺のテープを剥がす
- アクセサリードロワー周辺のテープを剥がす
チェックポイント: 継ぎ目を指でなぞり、ベタつきがあればその場で拭き取ります。
Step 4 — 付属品を開封する
目的: 棚卸し完了。
手順:
- 白いアクセサリーケースを開ける
- 電源コードを確認する
- ニーリフターバーを確認する(発泡材の側面に固定されていることがあるので見落とし注意)
Step 5 — 初回電源投入
目的: 電気系の正常確認。
手順:
- 電源コードを接続する
- スイッチをON
- 画面表示を確認する(起動してメニューが出ること)
補足(刺繍枠の互換性確認): サードパーティ製の枠を使う予定がある場合は、Stellaire 側の装着機構(スライドしてロックする形状)に合うかを必ず確認します。brother stellaire 用 刺繍枠 は接続形状が前提になるため、無理な装着は破損リスクになります。
操作チェックリスト
- テープ: 外装・喉奥に青いテープが残っていない
- 糊残り: ベタつきがない
- 電源: 本体側の差し込みが確実(浮きがない)
- 起動: ロゴ表示→メニュー表示まで到達し、エラーが出ない
初日の品質チェック(「良い状態」の基準)
糸掛け前に、スタート地点を確認します。
外観+機能チェック
- ガタつきチェック: 本体四隅を軽く押して、台の上でロッキングしないこと。
- 枠ネジの感触: 240×240枠のネジがスムーズに回ること。
- 起動時の音: 不自然な擦れ音がなく、初期化動作が自然に終わること。
判断フロー:枠張り(刺繍枠)をどう運用するか
標準枠があっても、すぐアップグレードが必要とは限りません。次の条件で判断します。
- 想定:安定した布帛(キルト綿・ブロード等)が中心
- 結論: 標準枠で十分運用可能。
- 想定:タオル・ベルベット等、毛足や厚みがある素材が多い
- 課題: 標準枠は押さえ込みが強くなり、枠跡が出やすい。
- 結論: マグネット刺繍枠を検討。
- 想定:手首が弱い/ネジ締めが負担
- 課題: 標準枠の締め込みが作業負担になる。
- 結論: マグネット刺繍枠が作業性の面で有利。
注意: マグネットの取り扱い。マグネット刺繍枠は強力で、挟み込み事故のリスクがあります。指を挟まない持ち方・置き方を徹底してください。また、電子機器の近くでの取り扱いにも注意が必要です。
アップグレードする場合は、汎用品ではなく マグネット刺繍枠 brother stellaire 用 のように機種に合う前提のものを選び、装着・認識の相性問題を避けます。
トラブルシューティング(症状→原因→対処)
開梱が丁寧でも、つまずくポイントはあります。落ち着いて切り分けます。
| 症状 | ありがちな原因 | すぐできる対処 |
|---|---|---|
| 電源コードが見当たらない | 発泡材の溝に隠れている | 発泡材ブロックの外周・くぼみ・テープ固定を確認 |
| 本体がベタつく | テープを勢いよく剥がして糊が残った | 少し湿らせた布でやさしく拭く(強い溶剤は樹脂を傷める) |
| 電源が入らない | 本体側プラグが奥まで入っていない | 本体側の差し込みを再確認(浮きがない状態まで) |
| 起動時にキャリッジ系エラーが出る | 刺繍ユニット側に梱包材が残っている | レール周辺に段ボール片・発泡材が残っていないか確認して除去 |
| 枠が途中で緩む/開く | 厚物を標準枠で無理に挟んでいる | 無理に締めない。フローティング運用かマグネット枠へ切替 |
最終結果(ここまでできていればOK)
この手順で進めると、最後に次の状態が揃います。
- 輸送用テープが完全に除去され、外装に傷のない本体が安定した台に設置できている
- 刺繍枠(240×240、360×240)と付属品の棚卸しが完了している
- 初回起動が正常で、タッチパネル表示が確認できている
- 標準枠で行くか、枠跡や作業負担を理由に マグネット刺繍枠 や ミシン刺繍 用 枠固定台 を検討するか、判断の軸ができている
ここまでが、立ち上げの「危険地帯」を抜ける工程です。次はボビン(下糸)準備と試し縫いに進みましょう。刺繍は機械性能だけでなく、段取りと準備で結果が大きく変わります。
