Baby Lock Arrayの内蔵フレームで作るアップリケ:バッグ向け「位置決め→仮止め→サテン」3ステップを迷わず実行

· EmbroideryHoop
Baby Lock Arrayの「Built-in Frames(内蔵フレーム)」だけで、ハートのアップリケを作る手順を現場目線で整理しました。外部ソフト不要で、画面上で「位置決め(単走り)→三重縫いの仮止め→サテン仕上げ」を組み立てる方法、フリーアームでファスナーポーチを安全に枠張りして装着するコツ、アップリケ用カラーチップで強制停止を入れる設定、縫い目やバッグ本体を切らずにきれいにトリミングする要点までを解説します。
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目次

完全ガイド:完成品バッグにきれいなマシンアップリケを入れる

きれいなアップリケは、ミシン性能よりも「段取り」で決まります。生地に安定感を持たせ、止まるべきところで確実に止まる縫製順を作り、最後に“切り”を丁寧に仕上げる——この3点が揃うと失敗が激減します。

このプロジェクトでは、Baby Lock Arrayの Built-in Frames(内蔵フレーム) だけを使い、画面上で「位置決め→仮止め→サテン」の3層レシピを組み立ててハートモチーフのアップリケを作ります。

Wide shot of Mike Johns standing next to the Baby Lock Array multi-needle machine.
Introduction

ここで身につくこと(なぜ重要か)

  • 「フリーアーム」の物理: 筒状アイテム(ファスナーポーチ)を、袋口を縫い閉じないように枠張り・装着する考え方。
  • 画面上の組み立てロジック: 外部ソフトなしで、3ステップのアップリケ工程を本体画面だけで作る手順。
  • 強制停止の入れ方: 「アップリケ用カラーチップ」を割り当てて、同じ糸色でも工程間で必ず停止させる方法。
  • 触感で決まるトリミング: カーブはさみで“隠れる距離”まで切り込み、サテンで端を完全に包むコツ。

必要な材料・道具

  • 土台: グレーのキャンバス地ファスナーポーチ(しっかりした織物)。
  • スタビライザー: ティアアウェイ(破り取り)スタビライザー(ポーチの裏側に当てる)。
  • アップリケ布: 赤の水玉コットン。
  • 補強材: 接着フリース(コットン裏にアイロン接着して“コシ”を出す。サテンでの波打ちを抑えやすい)。
  • 糸: ピンクの刺繍糸(Madeira Poly相当など)。
  • 道具: カーブ刃のアップリケはさみ。
Close up of the 4x4 hoop with grey canvas bag hooped and stabilizer visible on the back.
Supply overview
Close up of curved applique snips held in hand.
Tool introduction

見落としがちな消耗品と「開始前チェック」

初心者がつまずきやすいのは、見えない準備不足です。プロは“手元にある前提”で進めます。

  • 針の状態: 厚手キャンバスは針先が鈍いと線がブレやすいので、作業前に新品針か状態確認を。
  • 下糸(ボビン糸)の残量: サテンは下糸消費が大きい工程です。目視チェック: 少なくとも半分以上ある状態で開始すると安心です。
  • 仮固定(必要に応じて): スタビライザーを“浮かせる”場合は、ズレ防止のために仮固定手段を用意。
  • 照明: トリミング精度は照明で変わります。手元が影にならない明るさを確保。

判断:スタビライザーは必要?
* ケースA:硬めで厚いキャンバス → なくても成立する場合はありますが、動画では安全策としてティアアウェイを使用しています。
* ケースB:薄手・柔らかいバッグ → 形崩れしやすいので、より安定する貼り方を検討(まずは歪みが出ない固定を優先)。
* ケースC:毛足や凹凸がある素材 → ステッチが沈みやすいので、上に被せる資材の追加を検討。


フェーズ1:段取りと枠張り

動画では 4x4の標準チューブラー枠 とAアームアダプターを使用しています。難所は枠サイズではなく、ポーチの“筒”をフリーアームに通すときの取り回しです。

Side view of Mike loading the hoop onto the machine, hand underneath checking clearance.
Hooping

ポーチの枠張り(つまずきポイント)

  1. 準備: ティアアウェイスタビライザーを枠内に入れる、または枠下に当てます。
  2. 枠張り: ポーチ本体を刺繍枠にセット。
    • 触って確認: 表面を軽く叩いて、極端にたるまず、かつ織り目が歪むほど引っ張っていない状態を目指します。
  3. 干渉回避: ファスナーや厚い縫い代は、できるだけクランプ部(枠の締め付け部)から外し、枠が外れる原因を作らない。

現場で効く改善:枠跡(枠跡・圧痕)対策

キャンバスは圧痕が残りやすく、標準枠だと厚みのある箇所で締め付けが強くなりがちです。無理に閉める作業は手首の負担にもつながります。

  • 切り替えの合図: 枠のネジを締めるのに力が必要/生地に白っぽい圧痕が出る。
  • 対策案: こうした現場では マグネット刺繍枠 babylock 刺繍ミシン 用 を検討するケースがあります。
  • 理由: マグネット式は“押し込み摩擦”ではなく磁力で垂直に保持するため、枠跡の軽減や着脱の時短につながります。

注意:マグネットの安全管理
マグネット刺繍枠 を使用する場合は、工業用治具として扱ってください。
* 挟み込み注意: 強い磁力で指を挟む危険があります。端を持って扱います。
* 医療機器: ペースメーカー等には近づけないでください。
* 電子機器: ミシン画面や磁気媒体の近くに直接置かない。

ミシンへの装着(安全プロトコル)

  1. 枠をAアームにスライドして装着します。
  2. 「下から手を入れる」動作: ポーチの中に手を入れ、枠を差し込む間、布がフリーアームの“外側”を回り込むように誘導します。
  3. 目視確認: 針板〜アーム周辺に、ポーチ裏側の布が入り込んでいないか確認。刺繍エリアに裏布が噛むと、袋口を縫い閉じる事故につながります。

セットアップチェックリスト:

  • 針の状態は良好(必要なら交換)。
  • Aアームアダプターは4x4に設定済み。
  • ポーチはまっすぐ枠張りできている(歪みなし)。
  • 重要: ポーチ裏側が針の動線に入っていない。

フェーズ2:画面上で「アップリケのレシピ」を組む

高価なソフトは不要です。内蔵フレームで 位置決め → 仮止め → サテン の順番を作ります。

Screen capture showing the selection of stitch type 10 (Single Run) for the heart shape.
Software Setup

ステップ1:位置決め線(精度の基準)

  1. Built-in Frames(内蔵フレーム) を開きます。
  2. ハート を選択。
  3. ステッチタイプ 010(単走り) を選択。
  4. Set を押します。
    • 役割: アップリケ布を置く“地図”を先に縫います。

ステップ2:仮止め(安定の要)

  1. Add を押します。
  2. Framesハート を選択。
  3. Triple Run(三重縫い) を選択(3本線のアイコンが目印)。
  4. Set を押します。
Screen capture showing the Triple Run stitch selected for the tack down layer.
Software Setup

補足(なぜ三重縫い?) 単走りの仮止めだと、トリミング時のはさみ圧で布が動きやすくなります。三重縫いは固定力が上がり、サテン前のズレを抑えやすくなります(動画でもこの意図で選択しています)。

ステップ3:サテン仕上げ(端を隠す最終層)

  1. Add を押します。
  2. Framesハート を選択。
  3. ステッチタイプ 002(サテン/ジグザグ) を選択。
  4. Set を押します。
    • 役割: 切り口(生地端)を密なサテンで覆い、見た目を完成させます。

フェーズ3:工程間で確実に止める(強制停止)

このまま開始すると、3工程を止まらずに縫い進めてしまい、布を置くタイミングを失います。そこで、ミシンに「ここで止まる」指示を入れます。

Screen capture showing the Applique color chips in the palette menu.
Color Assignment

「アップリケ用カラーチップ」の使いどころ

多針刺繍機(Baby Lock/Brother系)では、パレット内の特定チップが“色”ではなく“機能指示”として働きます。

  1. カラーパレット を開きます。
  2. パレットをスクロールし、末尾付近にあるアップリケ関連チップを探します。
  3. 3工程それぞれに、以下のいずれかを割り当てます:
    • ステップ1:Applique Material
    • ステップ2:Applique Position
    • ステップ3:Applique
補足
動画内でも説明されている通り、3種類を順番通りに使う必要はありません。いずれかのアップリケチップを割り当てること自体が「停止させる」目的になります。
Screen capture showing the sewing order where thread colors are replaced by scissors icons.
Software Verification

成功の見分け方: 縫製順の表示に、色の代わりに はさみアイコン 等が出ていれば、工程として認識され停止が入る状態です。

生産目線メモ

メニュー操作の時間は積み上がります。業務で回すなら、この“レシピ”を本体メモリに保存しておくと段取りが安定します。さらに量産で位置を揃えたい場合、刺繍用 枠固定台 を併用すると、毎回同じ位置に枠張りしやすくなります。


フェーズ4:実縫いとトリミングの要点

ステップ1:位置決め線を縫う

  1. 針(ニードル)割り当て: 「Manual Color Sequence」で、3工程すべてを同じ針(例:#3)に割り当てます。
  2. 実行: スタート。
  3. 結果: キャンバス上にハートの細いアウトラインが入ります。
Screen capture of manual needle assignment showing all steps assigned to needle 3.
Needle Setup
Machine stitching the pink placement outline onto the grey bag.
Stitching Step 1

ステップ2:アップリケ布を置く

  1. 枠を手前へ: 画面の「Hoop Forward(枠を前へ出す)」機能を使い、枠を外さずに作業スペースを確保します。
  2. 配置: 位置決め線の上に、接着フリースを貼った赤いコットンを重ねます。
  3. 確認: 位置決め線が隠れるように、周囲に余裕を持たせて置きます(動画では布サイズを枠に近づけ、テープやスプレーは使わずにフラットに置いています)。
Placing the red polka dot fabric onto the hoop after it has been moved forward.
Fabric Placement

ステップ3:仮止めを縫う(三重縫い)

  1. 枠を元位置へ戻します。
  2. 実行: スタート。
  3. 観察: 縫っている最中に布がめくれたり大きく動く場合は一旦止め、平らに整えてから再開します。
Machine performing the triple run tack down stitch on the red fabric.
Stitching Step 2

ステップ4:トリミング(ここが仕上がりを決める)

  1. 安全優先: 枠はミシンから外して作業します。
  2. 姿勢: 平らな作業台に枠を置きます。
  3. 切り方: 余り布の端を少し持ち上げ、カーブはさみで縫い目ギリギリまで切り込みます。
  4. 注意: 縫い目(仮止め)を切ってしまっても、動画でも言及されている通り“致命的”とは限りませんが、最終サテンまで布が動かないようにだけは要注意です。
  5. 最重要: ポーチ本体まで切らないこと。先端を立てて刺さないよう、刃先の向きと角度を一定に保ちます。
Using curved snips to trim the excess red fabric around the heart shape.
Trimming

注意:刃物の取り扱い
* 先端が鋭いので、布に“突き刺す”動きは避けます。
* 無理に手首をひねらず、枠を回しながら切ると安全で均一に仕上がります。

ステップ5:サテンで仕上げる

  1. 枠を再装着します(装着時も、ポーチ裏側が噛まないかを毎回確認)。
  2. 実行: スタート。
  3. 結果: サテンが切り口を覆い、端がきれいに隠れます。
The machine stitching the final satin border around the heart.
Stitching Step 3

工程チェックリスト:

  • 位置決め後に停止した?
  • 布はアウトラインを十分に覆っている?
  • 仮止め(三重縫い)はしっかり入っている?
  • トリミングで縫い目/本体を切っていない?
  • 最終縫い前に、ポーチ裏側が完全に逃げている?

トラブルシューティング

不具合は、設定を触る前に「物理的な原因」から潰すのが近道です。

症状 主な原因 対処
サテン端から布がヒゲ状に出る トリミングが甘い 次回は縫い目の近くまで丁寧に。カーブはさみで追い込みやすくします。
アップリケ布がズレる 仮止めが弱い/布が動いた 仮止めは三重縫いを使用。布がフラットに置けているか再確認。
仮止めを切ってしまった はさみの角度・切り込み過多 すぐに大崩れしない場合もあります。最終サテンまで布が動かないように注意して進めます。
袋口を縫い閉じた 装着時に裏側が噛んだ 枠を装着するたびに、フリーアーム周辺を下から手で誘導し、目視で逃げを確認。
枠跡が残る 締め付けが強い 作業手順の見直しに加え、必要に応じて マグネット刺繍枠 babylock 用 のような方式も検討。

仕上がり確認と次の一手

The finished red polka dot heart applique on the grey bag.
Result Showcase

3層(位置決め→仮止め→サテン)の流れが正しく回ると、ハートの輪郭はシャープで、サテンが端をしっかり包み、ポーチは“袋として”きちんと使える状態のまま仕上がります。

量産に伸ばすなら(作業を安定させる)

  1. 枠張りを標準化: 位置の基準を決め、毎回同じ条件で枠張り。
  2. 段取りの摩擦を減らす: 標準枠で厚物を繰り返すと、着脱に時間がかかりやすくなります。現場では マグネット刺繍枠 のような方式で、枠セットの負担を下げる考え方もあります。
  3. 工程の組み方: 1点ずつ確実に完了させる運用はミスが減ります。作業環境に合わせて最適化してください。

アップリケは「焦らず、準備して、丁寧に切る」ほど仕上がります。トリミングに時間をかける価値は十分あります。