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1 プロジェクトの概要
刺繍の上に塗る“ファブリックペインティング”は、縫い目の陰影を生かしつつ、色で質感や光を足していく作業です。今回扱うのは顔のシェーディングが要のポートレート。にじみを避けるために水ではなくアロエジェルを使うのが成功の鍵です。動画ではMont Marteの水彩色鉛筆を使い、肌の基調色(薄いオーカー)と影(濃い色)、頬のピンク、唇の赤とコーラル、目の色(最初はバイオレット、のちにグリーンへ変更)、髪の明暗を順に仕上げています。
この工程は、どんな枠で刺繍した生地でも応用できます。フープ固定が安定していれば、例えば作業前にマグネット刺繍枠で生地を平らに保ち、塗りムラや不意のヨレを防ぐと落ち着いて作業できます。

1.1 この方法が向く場面
- 機械刺繍済みのポートレートや花図案に“肌艶”“光”“奥行き”を加えたいとき。
- ステッチの境界をにじませたくないとき(アロエジェルの使用で制御しやすい)。
- 細部の色差し(目・唇・髪筋)を安全に行いたいとき。
1.2 向かない場面と注意
- 洗濯や強摩擦が頻繁な用途は不向き。定着は可能でも、過酷な運用では退色や擦れが起こり得ます。
- 水でのブレンドは布地に染み込みやすく、ステッチ外へのにじみが起きやすい(本稿では不採用)。
2 准備する道具と作業環境
塗りは“用意8割”。必要品を最初に揃えて、作業台を保護します。

2.1 道具リストと役割
- 水彩色鉛筆(Mont Marte 推奨。小規模セットでも可):肌色(薄いオーカー)、影色(濃色)、ピンク(頬)、赤&コーラル(唇)、瞳色(バイオレットまたはグリーン)、髪色(濃淡)

- アロエジェル(無色):水の代わりに使い、にじみを抑えながら色を湿らせて動かす媒体

- 小容器:アロエジェルを取りやすくするため
- 筆(Mont Marte No.4、短くトリミングしても扱いやすい):円運動でブレンド

- 鉛筆削り:細部(目や唇の輪郭)用に尖らせる
- 白紙または紙タオル:作業面の保護と、筆の色抜きに使用
- キューティクルスティック:平らな面で“擦り込み”、先端で溝に色を押し込む
プロジェクト前に、刺繍生地の固定も見直しましょう。塗りの最中に生地が動くとムラの温床になります。フープ固定を補助する器具として刺繍用 枠固定台を併用すれば、筆運びが安定します。

2.2 作業環境のセットアップ
- 刺繍の下に白紙または紙タオルを敷いて、裏抜けした色が作業台に移るのを防ぐ。
- アロエジェルを小容器に少量だけ出しておく(足りなければ随時追加)。

- 筆と鉛筆は、明→暗→明の順に触るたび紙タオルで軽く拭って色移りを抑制。
作業台への固定は各自のやり方で構いませんが、たとえばbrother マグネット刺繍枠でフラットに維持しておくと、顔や髪の広い面を均一に塗りやすくなります。
クイックチェック:紙タオルは“裏抜け確認”の指標になります。塗り進めるうち裏側にしっとり湿りが出るのが正常です。
3 手順:肌・目・唇・髪を塗る
以降は“軽い筆圧→ブレンド→必要に応じて重ねる”の繰り返し。濃くしたいところにだけ段階的に色を足します。筆圧は常に“羽のように軽く”。
3.1 肌のベースと頬の紅
1) ベース色(薄いオーカー)をアロエジェルに“軽く”浸し、顔や腕の面にごく薄くストローク。

2) 筆をアロエジェルに浸して円を描くようにブレンド。濃い所から薄い所へ“引き伸ばす”。

3) 頬はピンクを少量のせ、ベースと混ぜるようにブレンド。

4) 影色(濃いオーカー等)を生え際・顎下・指の隙間へ薄く置き、筆で境界を溶かす。
期待する中間結果:ベースは“ほのか”でOK。乾くと濃く見えるので、初手は薄すぎるくらいでちょうど良い。
注意:水は使いません。アロエジェルは布へ過度に染みず、境界を保ったままブレンドできます。
補足:作業中の保持に工夫したい人は、フープの種類を問わず使えるsnap hoop monster マグネット刺繍枠のような保持方法で、面張りを一定に保つと塗りムラを抑えられます。
3.2 目と唇の色入れ
目:尖らせた鉛筆をアロエジェルに“軽く”浸し、瞳をていねいに塗る。動画では最初バイオレット→後でグリーンに変更(色替えをする場合は、筆を紙タオルでよく拭ってから次色)。

唇:外周に赤、内側にコーラルを薄く入れ、筆またはキューティクルスティックの先に少量のアロエジェルをつけて“押し入れる”ようにブレンド。外周がやや濃く、内側がふっくら明るく見える配置にします。

プロのコツ:先に外周の“線”を赤で軽く描いてから、内側へ向けてコーラルを押し込みます。輪郭が自然に立ち、にじみを抑えられます。
3.3 髪のシェーディング
1) 影の部分(生え際・耳裏・顎の下あたりにかかる毛束など)に濃い髪色を置く。ステッチの上からそのまま塗って問題ありません。

2) 筆にアロエジェルを含ませ、上下方向へ引きながらブレンド。濃い→薄いへと滑らかに移ろうように。

3) 明るい束は、鉛筆を寝かせた“軽い面塗り”でごく薄く。暗部との境界は小さな円で溶かします。
4) ブラシで届かない溝には、キューティクルスティックの先にアロエを少量つけ、色を押し入れて均します。

プロのコツ:頬の“霞ませ”には、スティックの平ら面でピンクをやさしくこする方法が有効。筆跡が消え、ふわっとした血色に。

この段で、生地固定にもう一工夫するなら、たとえばjanome 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠のような保持でも同様の効果が得られ、筆のタッチが一定に保てます。
チェックリスト(手順セクション)
- ベースは“薄く”、影だけを後から足しているか
- ブラシは常にアロエで軽く湿っているか
- 目・唇は尖らせた芯で輪郭を崩していないか
- 髪の暗→明の勾配が自然か、境界に縞が出ていないか
4 仕上げのコツと安全な定着
4.1 “羽のような”筆圧を保つ
軽いストロークと、押し付けたストロークの差は仕上がりに直結します。紙に試し線を引いて“軽・重”の見え方を体に覚えさせると安定します。塗り面では常に軽く、濃くしたい箇所のみ回数で調整。
4.2 道具のブレンド術
- ブラシは小さな円で“濃→薄”へ運ぶ。
- スティックは“押し入れる/擦り込む”の2役で、溝やステッチの間を均一に。
- 色替えは紙タオルでブラシを都度リセット。
このとき、作業中の固定を助けるためにhoopmaster 枠固定台を併用すると、細部でも手元がぶれにくく、境界のにじみを抑えられます。
4.3 定着前の“全体が湿っている”状態を作る
アイロンでの定着前に、塗った部分の“どこを触っても湿りを感じる”状態にしておきます。局所的に乾いていると色が定着せずムラになります。動画でも裏側へ湿りが透けて見える様子が示されました(紙タオルを敷く理由)。安全に定着させるための合言葉は「濡れていないと、定着しない」。
注意:この手順で“水”を使うと布へ広がってにじみます。必ずアロエジェルを使用してください。
5 つまずきを防ぐポイント
5.1 にじみ・濃くなりすぎの回避
症状:塗りがステッチ外へにじむ/一気に濃くなる。
- 原因:水を使用/筆圧が強い/ジェル過多による制御不能。
- 対策:水は使わずアロエのみ。ストロークは常に軽く、濃くするのは“回数”。ジェルは少量ずつ足す。
5.2 境界の縞・ムラ
症状:暗→明のつなぎに縞やムラ。
- 原因:乾いた面の上をこすり続けた/ブレンド方向が一方向のみ。
- 対策:小さな円で往復し、濃い所から薄い所へ“引き”で伸ばす。届かない溝はスティックで補助。
ヒント:生地の平坦性が悪いとムラが出やすくなります。例えばmighty hoop マグネット刺繍枠のように強力にフラット保持できる機構で面を安定させると、タッチの均一化に役立ちます。
6 完成後の扱い方と活用アイデア
完成時は“濡れていると濃く見え、乾くとやや薄く落ち着く”のが正常です。影は生え際・顎下・鎖骨下・髪の内側に置かれ、頬はピンクがふんわり溶け、唇は外周が赤、内側がコーラルでふっくら見えます。

コメントから:仕上がった作品は“額装”にした事例が共有されています。バッティング(薄綿)はレリーフ感を出すために入れており、キルトにするなら先に背景をキルトしてから、上にこの図像を重ねる方法も紹介されました(コメントより)。
応用のヒント:背景を別布で作り、完成したポートレートを上から配しても映えます。布の固定や扱いは各自の設備で構いませんが、例えばマグネット刺繍枠やマグネット刺繍枠の亜種を使って工程ごとの着脱を楽にすると、乾燥待ちやアイロン前後の移動がスムーズです。
コミュニティから:
- 「手間はかかるが仕上がりが美しい」という声が複数。軽いストロークの徹底と、アロエの“湿り”管理が評価ポイント。
- 礼賛コメントへの返答も多数。着彩は小さな工夫の積み重ねが成果に直結します。
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チェックリスト(準備)
- 道具:水彩色鉛筆/アロエジェル/小容器/筆/鉛筆削り/紙タオル/キューティクルスティック
- 作業台は白紙または紙タオルで保護
- 刺繍生地はフラットに固定(必要に応じてマグネット刺繍枠や保持具を併用)
チェックリスト(セットアップ)
- ジェルは少量ずつ出し、必要な都度“軽く”浸す
- 筆・鉛筆・スティックは色替えのたび拭き取り
- 裏抜けを紙タオルで確認
チェックリスト(工程)
- ベース薄く→影を重ねる→円運動で境界を溶かす
- 目・唇は尖らせた芯で丁寧に、ジェルは少量
- 髪は暗部から置き、明部は“面塗りの軽タッチ”
- 定着前に、塗った面全体が湿っていることを確認
最後に、作業の段取りを支える周辺ツールとしてマグネット刺繍枠やhoopmaster 枠固定台などの保持系アクセサリを活用すれば、塗りの精度と再現性が上がります。お手持ちの設備に合わせて無理なく取り入れてください。
で示したように、必要なものはシンプルです。入手性のよい色鉛筆セットとアロエジェル、そして丁寧なタッチ。それだけで、ステッチの美しさに“色の命”が宿ります。
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プロのコツ
- 鉛筆の先端角度を寝かせて“面”で塗ると肌のムラが出にくい。
- ブレンドは“濃→薄”へ、円を描くリズムで。
- 乾くと色が一段階沈むので、初手は“薄すぎるくらい”が適正。
注意
- 水でのブレンドは不可。にじみの原因になります。
- アイロン前、塗った面の“湿り”を必ず確認(乾いていると定着しない)。
クイックチェック
- 顔の影:生え際/顎下/指の隙間にそっと置いたか
- 唇:外周が赤、内側がコーラルで自然なグラデーションか
- 髪:暗部の芯が残り、明部へ滑らかに抜けているか
なお、作業の合間に保持を解いても、たとえばマグネット刺繍枠系や刺繍用 枠固定台で素早く元の位置に戻せます。設備の選択肢としてマグネット刺繍枠 brother 用や類似の保持具も視野に入れると、再現性の高いワークフローを組みやすくなります。
参考:目・髪の微細な溝はブラシでは届きにくい箇所。キューティクルスティックの先端+アロエで“押し入れる”と、ステッチ間まで均一に色が回ります。
仕上がりの見本は
と
。暗部はしっかり、明部は軽やかに。頬はふわり、唇は立体的に。これらの要素が揃えば、刺繍は一枚のポートレートとして完成します。
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補足メモ
- 使用ブランド名・色番の詳細やアイロン温度など、動画内で具体的に明示されない数値は本稿では触れていません(動画ではアロエで“全体が湿っている”ことの重要性が繰り返し示されています)。
- 仕上げの活用例(額装/キルト背景の上に重ねる)はコメント出所の情報です。
