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1 プロジェクトの概要
建設車両モチーフの“ゲームキルト”を、機械刺繍で作った正方形ブロックをつないで完成させていきます。Part 2では、ブロック7〜14から成る「列2」の作り方と、「列1」との縫い合わせ、そして仕上がりを左右するアイロンの当て方を丁寧に解説します。
前回までに「列1(0=GO〜6)」を完成させていれば理想的です。列2はゲームの進行(コース)に合わせ、列1とは逆方向に数字が流れるのが特徴です。

1.1 なぜ“交互の流れ”が必要か
このキルトは遊べるゲーム盤として設計されており、下段(列1)は左→右へ、次の段(列2)は右→左へ、さらにその上段(列3)は左→右へ……と、左右が交互に切り替わります。こうすることで、プレイ時に視線とコマの移動が自然に蛇行し、ゲームとしての流れがわかりやすくなるのです。

1.2 どこまでが刺繍作業で、どこからが縫製か
各ブロックは「枠張り→刺繍→枠から外す→不要をトリム」の繰り返しで準備済みである前提です。動画では、アップリケは「GO」と最終列の「STOP」など一部に限られると述べられています。従って本稿では、刺繍済みブロックを“縫ってつなぐ”工程に集中します。
2 準備するもの
- 刺繍済みブロック一式(特に7〜14は列2用)
- ピン(待ち針):縫い合わせの位置決めと交差点の固定に使います
- ミシン:直線で安定して縫えること
- アイロンとアイロン台:縫い代を開き、面をフラットに整える必需品
- 平らな作業面:レイアウト確認や番号順チェックに便利
- キルト綿(後工程で使用):厚すぎるものは非推奨(後述)
刺繍工程の段階で、マグネット刺繍枠 を使って安定したフーピングができていると、ブロックの歪みが少なく後工程の合わせが楽になります。
2.1 事前チェックリスト(準備編)
- ブロックは必要枚数が揃い、外周のトリムが済んでいる
- 7〜14の番号が明確にわかる(裏表の向きも確認)
- ピンは十分な本数が手元にある
- アイロンは温度・蒸気ともに安定して使える
- 作業面はブロックを横一列に並べられるだけのスペースがある
3 セットアップの要点
3.1 作業スペースのレイアウト
列単位で“右から左”もしくは“左から右”に広げられる横長スペースを確保しましょう。列2は右→左に数字が流れるため、右端に「7」、左端に「14」を想定した並べ方が基本となります。

刺繍ブロックの作り分は動画の通り単純で、GOや最終列以外はアップリケがありません。刺繍の負荷が比較的均一なので、縫い合わせ後のプレスで面一(ツライチ)を取りやすいのが今回の利点です。

3.2 工具・補助具の補足
ブロックの直線を活かすためには、ピン打ちの精度が要です。刺繍段階で 刺繍用 枠固定台 を使って安定した位置決めをしておくと、縫い合わせ時の目違いが減ります。
3.3 セットアップのクイックチェック
- 右端に「7」、左端に「14」を仮配置したか
- 縦の方向(上下の向き)は全ブロックで揃っているか
- ピンが交差部(シーム交点)にも届く長さか
4 手順:列を作り、列同士をつなぐ
列2の組み立てと、列1との接続を順を追って行います。以降の列も基本は同じロジックで反復できます。

4.1 列2(ブロック7〜14)を正しい向きで並べる
- 基本配置:右から左へ向かって7,8,9,10,11,12,13,14の順に並べる(ゲームの流れに合わせる)
- 確認:数字が一筆書きのように蛇行して繋がるイメージになるか
注意:この段階で左右方向を誤ると、後から全体のゲームの道筋が崩れるため、一度写真を撮るなどして向きを固定しておくと安心です。
プロのコツ:刺繍時に hoopmaster 枠固定台 を活用して全ブロックの外周を揃えておくと、縫い合わせ後の数字位置や車両の並びがすっきり整います。
4.2 ブロック7と8を中表に重ねてピン打ち
- 右端の「7」を「8」に重ね、中表(表同士が内側)で縫い合わせる辺を揃える
- コーナーと辺の中央、さらに必要なら2〜3点を追加してピンを打つ
- ミシンで直線縫い(縫い代幅は動画で具体値の提示なし)

クイックチェック:縫い始めと縫い終わりの目が乱れていないか、表に返して接合ラインが波打っていないかを確認します。
4.3 9を8側に足し、同様に10,11…と継ぎ足す
- 手順は常に「中表→ピン→直線縫い→表に返して確認」
- 接合ごとに、後述のアイロン工程(縫い代を開く)を挟むと面がより整います

プロのコツ:連結ごとに短い間隔でピンを打つと、縫いズレが起きにくくなります。刺繍密度が高い箇所は特に布送りが変わるため、ピンの本数を少し増やすのが有効です。
4.4 列1と列2を重ね、交点を基準にピンで固定
- 列2を列1の上に中表で重ねる(縫い合わせる辺を整える)
- 四隅から始め、次にブロック同士の交点(シーム交点)にピンを垂直に通す
- その後、辺の中間にも均等にピンを追加していく



注意:交点でのわずかなズレは、完成後に数字や道路模様の“段ズレ”として目立ちます。ピンは交点優先で打ち、辺の中間は後から補う順番がズレ防止に効果的です。
4.5 列同士を一気に縫い合わせ、表で歪みをチェック
- 端から端まで直線で縫い合わせる
- 縫い上がったら表に返し、交点の合致と波打ちの有無を確認
- 問題があれば、その区間だけ糸をほどき、ピン打ちからやり直す


4.6 列3以降への展開
- 列3は再び左→右に数字が流れる配置でブロックを並べ、列2同様に連結
- 列が完成するたび、直ちに下の完成列へと縫い継ぎ、都度プレスする

4.7 ステップごとのチェックリスト(作業編)
- 列2の並び順:右7→左14が正しいか
- 中表で重ね、縫い方向が一定か(縫い代の倒れ方向が揃う)
- 列間の交点が合っているか(ピンは交点優先)
- 連結ごと(ブロック、列)にアイロンで縫い代を開いたか
5 仕上がりチェック
5.1 アイロンで“縫い代を開く”理由とやり方
- 理由:厚みや段差を最小化し、刺繍面の波打ちを防ぎ、交点の合致を保つため
- やり方:裏面から縫い代を左右に割り、スチームを適度に使ってしっかり開く
- 仕上げ:表面からも軽く押さえるようにプレスし、面の平滑性を回復する

クイックチェック:開いた縫い代が再び倒れていないか、表にテント状の盛り上がりがないか、刺繍の縫い目に光の反射ムラが出ていないかを目で追います。
5.2 良い状態/注意したいサイン
- 良い状態:交点がきれいに揃い、列の境目が直線的に走る。表面がフラット
- 注意サイン:縫い代の盛り上がり、列の蛇行、刺繍の密な周辺での布送りムラ
プロのコツ:刺繍密度が高い場所は布が硬くなりがちです。そこだけプレスクロスを挟み、熱と蒸気を気持ち強めに当てると縫い代がしっかり開きます。刺繍段階で 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 を使ってフラットに仕上げておけば、後工程のプレスに必要な力も少なくて済みます。
6 完成イメージと次の展開
列1と列2をつないだ時点で、GO(0)から14までが連続して見える盤面が得られます。以降は同じ手順の反復で列を積み上げるだけ。最終列ではSTOPや追加のアップリケが再登場しますが、基本思想は変わりません。
動画では、刺繍直後・縫製直後の“毎回のプレス”が強調されました。これを守る限り、列が増えるほど精度が落ちるどころか、むしろ安定感が増していきます。キルト綿は厚すぎるものを避けるのがコツで、縫い継ぎのストレスやミシンの負荷を軽減できます。
プロのコツ:枠サイズが大きい環境では ミシン刺繍 マルチフーピング を前提にデータ配置を組むと、同一条件のブロックを量産しやすく、後の並べ替えが効率化します。
7 トラブルシューティングとリカバリー
症状→原因→対処の順に整理します。
- 症状:列2の並びがゲームの進行と合わない(右→左になっていない)
- 原因:初期レイアウトの左右方向ミス
- 対処:写真やメモで正解レイアウトを再確認し、並びを修正してから縫い直す
- 症状:列間の交点がずれる
- 原因:交点でのピン不足、または縫い代の厚みによる送りムラ
- 対処:交点を最優先にピン打ちを増やす。縫い代を開いてから再縫製
- 症状:縫い合わせた面が波打つ/膨らむ
- 原因:プレス不足、または刺繍密度の高い周辺での厚み残り
- 対処:裏から縫い代を再プレス、必要ならスチーム量を増やし表からも押さえる
- 症状:ミシンが重く感じる、段差で針目が乱れる
- 原因:キルト綿が厚すぎる
- 対処:薄手〜中厚のキルト綿を選び、段差に差し掛かる前に布をしっかり支える
- 症状:刺繍面の歪みでブロックが正方形に収まらない
- 原因:刺繍時のフーピングが不安定
- 対処:次ブロックから brother マグネット刺繍枠 や マグネット刺繍枠 11x13 などの安定した保持手段を検討し、同時に下地の伸びを抑える
- 症状:ピンを打っても縫うとずれる
- 原因:ピンの間隔が広すぎる/交点に通していない
- 対処:交点に垂直に通すことを最優先し、間隔も短くする
クイックチェック:各列をつなぐ前に「交点4か所→辺の中央→残りの均等ポイント」の順にピンが入っているかを確認すると、ズレの大半が未然に防げます。
注意:厚いキルト綿はミシンが進みにくく、特に刺繍密度の高い両側をまたぐ縫いでは不具合が出やすいと動画で警告されています。作業性を優先し、厚すぎる綿は避けましょう。
プロのコツ:刺繍段階から保持力を高めておくと、その後の縫い合わせも精度が上がります。例えば マグネット刺繍枠 と マグネット刺繍枠 brother 用 の互換性を理解して使い分ける、あるいは固定治具として 枠固定台 を準備して一貫した位置合わせを徹底する、といった前段の工夫が効きます。
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最後に、本プロジェクトでは「縫う→開く→プレス→確認」のリズムを手に馴染ませることが最重要です。列を増やすたびに、この4拍子が作品全体の精度を底上げしてくれます。刺繍の段階から安定化を図るなら、マグネット刺繍枠 や hoopmaster 枠固定台 の活用も有効です。次の列でも、同じ手順を淡々と繰り返していきましょう。
