ITH(枠内完結)で作るバンティングフラッグ(アップリケ)— きれいな縁処理/裏布で縫い代を隠す/枠張りを速く安定させる

· EmbroideryHoop
水溶性スタビライザー(WSS)を枠張りし、キルト綿(バッティング)+表布(ボーダー)+センター布(アップリケ)+裏布を重ねて、最後にサテン縁とボタンホールまで「枠内で完結(ITH)」させるバンティングフラッグの手順を、工程ごとのチェックポイント付きで解説します。滑りやすいWSSがズレない固定方法、アップリケのトリミングで縫い目を切らないコツ、刺繍枠の裏側に裏布を“浮かせて”貼り付けて縫い目を隠す段取り、作品全体を濡らさずに縁だけを溶かして仕上げる方法まで、現場目線で再現性を上げるための注意点とワークフロー改善もまとめました。
【著作権声明】

学習目的のコメントのみ。 このページは元の作者(制作者)の作品に対する学習メモ/解説です。権利はすべて原作者に帰属します。再アップロードや転載は禁止配布は行いません。

可能であれば、元動画を作者のチャンネルで視聴し、チャンネル登録で次のチュートリアルを応援してください。1クリックが、より分かりやすい手順解説・撮影品質の改善・実践テストの継続につながります。下の「登録」ボタンから支援できます。

著作権者の方で、修正・出典追記・一部削除などのご希望がある場合は、サイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。速やかに対応します。

目次

ITHバンティングに必要なもの

「飾りたい気持ちはあるけど、ミシンで縫って返して…の作業は正直しんどい」。そんなときに刺さるのが、刺繍機だけで完結するITH(In-The-Hoop/枠内完結)バンティングです。これは単に「旗を刺繍する」のではなく、スタビライザー+バッティング+アップリケ布+裏布を順番に重ねて“テキスタイルのサンドイッチ構造”を作る工程。

ただしITHは精度勝負です。縫製と違って、刺繍中は刺繍枠の裏側が見えません。だからこそ、最初の枠張りと固定が甘いと、最後のサテン縁で一気に破綻します。このガイドでは、単なる手順の翻訳ではなく、手触りで判断するチェックズレを防ぐ工程管理に重点を置いて、仕上がりの安定性を上げます。

Finished bunting flags hanging on a wooden door, showing teal and purple colors with ribbon.
Introduction / Final Result

ここでつまずきやすいポイント(学べること)

ITHで挫折しやすい摩擦ポイントを先に潰します。

  • スタビライザーのズレ/伸び:水溶性スタビライザー(WSS)が布の重みで動かないようにする。
  • 縁がふにゃっとする問題:溶かし方を“部分的”にして、旗のハリを残す。
  • 裏布の固定ミス:刺繍枠の裏側に貼る裏布がたるんで、糸絡み(鳥の巣)を起こさない。

動画で使用している材料(+作業に必須の周辺アイテム)

このプロジェクトは 5" x 7" の刺繍可能範囲が前提です。

基本材料:

  • 5" x 7" 刺繍枠(フープ)
  • 水溶性スタビライザー(WSS):動画ではWSSを枠張りして使用。
  • :ボーダー布/センター(アップリケ)布/裏布(バック)
  • バッティング(キルト綿)
  • :3色(工程用・装飾用など)+下糸(ボビン糸)
  • リボン1/4インチ

作業を止めないための道具:

  • Tピン:WSSを枠内で動かさないための固定
  • テープ(動画では青いテープ):バッティングや布の仮固定、裏布の固定
  • ハサミ(できればカーブ刃):アップリケのきわトリム用
Flat lay of all supplies including hoop, stabilizer roll, fabrics, threads, and scissors.
Supply Check

補足:量産(複数枚)を前提に段取りを変える

動画はフラッグ1枚のデモです。ですが、バンティングは基本的に複数枚で成立します。複数枚作る場合は、刺繍機を回し始める前に段取りを寄せると失敗が減ります。

段取りの考え方(バッチ処理):

  • バッティング、ボーダー布、裏布を「必要枚数分」先に裁断しておく
  • テープ、ハサミ、Tピンを手元に固定配置して、工程ごとの探し物をなくす

Step 1: 枠張りとスタビライザーのセットアップ

ここが土台です。ここでWSSが緩いと、最後の外周サテンがズレて、アップリケ端が見えたり、縁が波打ったりします。WSSは綿布より滑りやすく、針数が増えるほど“なじんで”伸びやすい素材です。

Step 1 — 水溶性スタビライザー(WSS)を枠張りする

手順:

  1. 刺繍枠より大きめにWSSをカットする。
  2. WSSを挟んで枠を締める。
  3. チェックポイント(手触り):軽く叩いて、たるみがないか確認する。
  4. 固定:枠の内周に沿ってTピンを刺し、WSSが内側へ引き込まれないように“機械的にロック”する。

なぜ重要か: WSSは針が何千回も貫通すると、徐々に伸びたりズレたりします。Tピン固定を省くと、アウトラインが縮んだように見えるズレが起きやすく、結果としてサテン縁と布端の位置が合わなくなります。

道具のアップグレードという考え方: ネジ締めの負担や、均一に挟めないストレスがある場合は、設備側の見直しポイントです。現場では、こうした理由で マグネット刺繍枠 に切り替えるケースがあります。周囲を均一にクランプできるため、滑りやすいWSSでもテンションを作りやすく、枠張りの再現性が上がります。

注意:マグネットの安全管理
マグネット刺繍枠は強力な磁力を使用します。ペースメーカー等の医療機器に近づけないでください。指を挟むと強く痛みます。外すときは“こじる”のではなく、ずらして外す動作を徹底します。


Step 2-3: バッティング配置とアップリケの土台作り

ここからフラッグの“芯”を作ります。狙いは、バッティングを確実に止めつつ、縁に余計な厚みを残さないことです。

Embroidery machine needle stitching the initial V-shape placement line on white stabilizer.
Stitching Placement Line

Step 2 — バッティングの配置線を縫う

手順:

  1. デザインをセットし、最初の工程(色)を実行する。
  2. WSSの上に、V字のランニングステッチ(配置線)が縫われる。

チェックポイント:

  • 見た目:線が途切れていないか。
  • 手触り:中央を軽く押して、緩みが出ていないか。緩いと感じたら、次工程に進まず枠張りをやり直した方が安全です。
Taping down the white batting square onto the stabilizer with blue tape.
Placing Batting

Step 3 — バッティングを置いて仮止め→トリム

手順:

  1. 配置線を覆うようにバッティングを置く。
  2. テープで固定:角をテープで止める(縫い進むラインにテープがかからない位置に)。
  3. タックダウン(仮止め縫い)を実行する。
  4. 刺繍枠を外して(作品は枠から外さない)、平らな台で作業する。
Trimming excess batting close to the stitch line with curved embroidery scissors.
Trimming Batting

トリムの要点:

  • できるだけ縫い線の近くまで、丁寧に余分を切る。
  • 縫い糸を切ると、内部でバッティングがめくれたり、段差が出やすくなります。

注意:作業安全
テープ固定や素材の位置調整は、必ず刺繍機を停止してから行います。稼働中に刺繍枠内へ手を入れないでください。

チェックリスト(布を置く前の確認)

  • WSSのテンション:Tピンが効いていて、たるみがない
  • バッティングの切り口:余りが大きく残っていない
  • テープ位置:縫いラインにかからない
  • 道具:トリム用のハサミがすぐ取れる位置にある

Step 4-8: 表面デザイン(ボーダー布+センター布)を作る

ここから表側の見た目を作ります。工程としては、典型的な“切りっぱなしアップリケ”です。

Border fabric (pink) taped down over the batting ready for stitching.
Placing Fabric

Step 4 — ボーダー布を置いてタックダウン

手順:

  1. バッティング全体を覆うようにボーダー布を置く。
  2. しわをならし、テープでしっかり固定する。
  3. タックダウンを縫う。

補足: 柄に方向性がある布は、刺繍枠の上側(フラッグ上辺)に対して柄がまっすぐになるように置くと、吊ったときに見栄えが安定します。

Step 5 — センター布の配置線を縫う

手順:

  1. ボーダー布の上に、ひと回り小さいV字の配置線が縫われる。

Step 6 — センター布を置いてタックダウン→きわトリム

手順:

  1. センター布を表(柄面)を上にして配置線を覆うように置く。
  2. テープで固定する。
  3. タックダウンを縫う。
  4. 余分な布を縫い線ギリギリまでトリムする(縫い糸は切らない)。

なぜ“きわ”が重要か: 布端が残ると、次のサテンで覆い切れず、毛羽や糸端が見えて仕上がりが荒れます。

Machine stitching the satin border around the inner pattern.
Satin Stitching

Step 7 — センター周囲のサテン縁を縫う

手順:

  1. 必要に応じて糸色を替える。
  2. センター布の端を覆うようにサテンステッチが入る。

チェックポイント:

  • 見た目:センター布の切り口が見えていない。
  • 動き:厚みで針が苦しそうな挙動が出る場合は、針や素材の重なりを疑い、無理に続行しない。

Step 8 — ロゴ/モチーフを縫う(空白でも可)

手順:

  1. 中央に好みのデザインを刺繍する(動画ではロゴ例)。

作業効率の観点: 複数枚を連続で作ると、枠張り・テープ固定の反復がボトルネックになりがちです。枠の締め直しを減らしたい場合、 brother 5x7 マグネット刺繍枠 のようなキーワードで周辺アクセサリを探す人が多いのは、まさにこの工程短縮が目的です。


Step 9-11: 裏布を付けて最終縫い(縁サテン+ボタンホール)

ITHの“肝”です。刺繍枠の裏側に裏布を貼って縫い込み、裏面の縫い目や下糸側の見た目を隠します。

Hoop flipped over showing the backside, taping the backing fabric into place.
Placement of Backing

Step 9 — 刺繍枠の裏側に裏布を貼る

考え方: 裏面をきれいにするため、刺繍枠の“裏側(下糸側)”に布を固定します。ここは見えない状態で縫うので、固定が命です。

手順:

  1. 刺繍枠を刺繍機から外す(作品は枠から外さない)。
  2. 刺繍枠を裏返し、裏側が見える状態にする。
  3. 裏布を表(柄面)を上にして置く(裏側に貼るので直感と逆だが、完成後に裏面として見える側が表になる)。
  4. 四隅をテープで強く固定し、必要なら辺の途中も追加で固定して、たるみを作らない。

注意(ここが事故ポイント): 裏布がたるむと、刺繍中に針板付近へ噛み込み、糸絡みや停止の原因になります。

Cutting away the excess fabric from the outer border on the front side.
Final Trimming

Step 10 — 表裏両方を外周ラインでトリム

手順:

  1. 刺繍枠を戻し、外周のタックダウンを縫う(表布→バッティング→WSS→裏布をまとめて固定)。
  2. 刺繍枠を外す。
  3. 表側(ボーダー布)を外周縫い線の近くでトリムする。
  4. 裏返して、裏布も同様にトリムする。

チェックポイント: 指で縁をなぞり、段差が大きい箇所があれば、余りが残っているサインです。

Final heavy satin stitch sealing the outer edges of the bunting.
Final Stitching

Step 11 — 最終サテン縁+ボタンホールを縫う

手順:

  1. 外周の太いサテン縁を縫い、表裏を完全に“封止”する。
  2. 上部にボタンホールが縫われる。

作業の標準化(設備投資の方向性): 安定した位置合わせと段取り短縮を狙う場合、 マグネット刺繍枠 用 枠固定台刺繍用 枠固定台、または hoopmaster 枠固定台 のような枠固定台システムを検討する人もいます。厚みのある積層でも同じ条件で枠張りしやすく、再現性を上げる方向性です。小規模でも、 マグネット刺繍枠 の導入で固定のムラが減るケースがあります。

最終チェックリスト(枠から外す前)

  • 外周サテン:途切れや隙間がない
  • 裏布:しわ・たるみが縫い込まれていない
  • ボタンホール:2か所とも縫い切れている
  • 位置合わせ:内側の形と外周が極端にズレていない(ズレが大きい場合は枠張りテンションが原因になりやすい)

仕上げ:スタビライザー除去/ボタンホール開き/リボン通し

スタビライザーに閉じ込めた状態から、作品を“解放”します。

Cutting the project out of the water soluble stabilizer after unhooping.
Removing Stabilizer

Step 12 — 枠から外して、スタビライザーの大部分を切り落とす

手順:

  1. 枠を緩めて(マグネットの場合はスライドして)作品を外す。
  2. 外周サテンの外側に残ったWSSを、ハサミで大きく切り落とす。
Dipping finger in a bowl of water to dissolve edge stabilizer.
Finishing Edges

Step 13 — 縁だけを溶かして仕上げる(全体を浸さない)

やりがちな失敗: 作品を丸ごと水に浸ける。

起きやすい問題: バッティングまで濡れて、乾燥後に形が崩れたり、ハリが落ちたりします。

動画の手順に沿ったやり方:

  1. 指先をぬるま湯に付ける。
  2. サテン縁に沿って“縁だけ”をなぞり、残ったWSSを溶かす。
Using small scissors to pierce and cut open the buttonhole.
Cutting Buttonholes

Step 14 — ボタンホールを開く

手順:

  1. 小さめのハサミ、またはボタンホール用のカッターで切り開く。
  2. 縫い糸を切らないように、少しずつ開ける。
Holding the finished bunting with confetti overlay effect.
Final Reveal

Step 15 — リボンを通す

手順:

  1. 1/4インチのリボンをボタンホールに通す。
  2. 必要な間隔で並べて完成。

品質チェック(仕上がり判定)

  1. 縁の見た目:外周サテンから布端が飛び出していない。
  2. 裏面:裏布がピンと張っていて、しわの縫い込みがない。
  3. ボタンホール:リボンが無理なく通る。

トラブルシューティング

ITHは「段取りの精度」がそのまま不良率に直結します。症状→原因→対策の順で切り分けます。

症状:サテンが布端を外して“隙間”が出る

  • 原因候補:WSSが工程中に伸びた/ズレた。
  • 対策:Step 1でTピン固定を増やす、テープ固定を見直す。
  • 予防:外周を均一にクランプできる マグネット刺繍枠 のような方式で、テンションのムラを減らす。

症状:糸絡み(鳥の巣)が発生する

  • 原因候補:Step 9の裏布がたるんで噛み込んだ。
  • 対策:無理に引っ張らず、状況に応じて安全に切り分ける。
  • 予防:裏布は四隅だけでなく辺も追加でテープ固定し、たるみゼロを徹底する。

症状:針がベタつく/糸切れ・糸が毛羽立つ

  • 原因候補:テープの粘着やWSSの残留が針周りに影響。
  • 対策:針交換、縫いライン付近にテープを近づけない。

症状:ボタンホールがきつくてリボンが通らない

  • 原因候補:ステッチ密度で開口が狭くなった/リボン幅が合っていない。
  • 対策:次回はリボン幅に合わせたデータ設計を選ぶ、またはより細いリボンに変更する。

まとめ(結果と次の一手)

WSSで土台を安定させ、バッティングで厚みを作り、表布をアップリケで整え、裏布で裏面を隠して封止する。この流れを守るだけで、ITHでも“作品感”のあるバンティングに仕上がります。

Finished bunting flags hanging on a wooden door, showing teal and purple colors with ribbon.
Introduction / Final Result

複数枚を作る段階に入ったら、見直すべきは「Step 1(枠張り)」と「Step 9(裏布固定)」の手作業時間です。ここが詰まると生産性が落ちます。テンションと位置合わせを標準化できる マグネット刺繍枠 用 枠固定台 のような仕組みは、作業の再現性とスピードを上げる方向性として検討価値があります。