Hatchで作るオリジナルITHモノグラム・マグラグ(6.5インチ正方形)デジタイズ手順—PE Design/Embrilliance/Embirdの対応ツールも解説

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Sueのチュートリアル内容を、現場で再現しやすい「繰り返し可能な手順」に整理した実践ガイドです。インザフープ(ITH)のモノグラム・マグラグ(封筒式コースター)を題材に、配置線と仮止め線の作り方、モノグラム素材の分解と管理(Break Apart)、Hatchでサテン枠をアップリケ化(Convert to Applique)、装飾モチーフ枠の追加、最後に封筒式の裏布を閉じるシール縫いまでを一連で解説します。さらに、PE Design 10/11・Embrilliance StitchArtist・Embird Studioで同等の作業を行う際の「どこにそのツールがあるか」も整理。途中で迷いやすいポイントのチェック項目、失敗の原因→確認→対処、無駄な試し縫いを減らすための段取りも盛り込みました。
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目次

インザフープ(ITH)デジタイズ&実行の決定版ガイド

インザフープ(ITH)刺繍は、うまく組めると「刺繍機だけで完成品が出てくる」工程です。裏布まできれいに閉じて、縫い代が隠れた“売り物品質”に仕上げられるのが最大の魅力です。

一方でITHは、ソフト上のデータ作り=現物の段取り(布・キルト芯・スタビライザー・手作業の介入タイミング)をプログラムする作業でもあります。画面上で見えているのは2Dでも、実際は厚みのある3Dの積層を針が貫通します。

本稿では、モノグラム入りマグラグ(封筒式コースター)を例に、デジタイズの流れを分解して再構築します。単なる「クリック手順」ではなく、縫いの物理うまくいっている時の見た目・感触、そして量産を見据えた段取りまで含めて整理します。

A split-screen view showing the fully digitized monogram mug rug design in the Wilcom Hatch interface.
Introduction showing the final result

目的と「厚物サンドイッチ」問題

作るのは標準的な正方形マグラグ:外枠 6.5 x 6.5インチ、内側の装飾枠 5.7インチ

現実チェック: データは平面でも、最終工程では「スタビライザー+キルト芯+アップリケ布+裏布(2枚)」のような厚みを縫います。

  • 不安になりやすい点: 厚物を縫う時の“ゴリッ”とした音に驚いて手が止まり、手順が崩れる。
  • 解決の方向性: 成功の鍵は シーケンス管理(止める場所を作る)枠張りの安定(厚物を歪ませず保持する) です。

量産(例:イベント用に50枚)を考えると、ネジ式枠は締め付け作業がボトルネックになりがちです。ここで マグネット刺繍枠 が「流行語」ではなく「作業負担を減らす道具」になります。厚いITHの“サンドイッチ”でも一発でクランプでき、締め込みによる歪みや枠跡(枠焼け)を抑えやすいのが利点です。

注意(機械安全): ITHは枠の内側に手を入れて布を置く工程があります。スタートを押す前に、指・髪・袖口が危険域に入っていないことを必ず確認してください。


Step 1: 基礎—配置線と仮止め線

この工程は、スタビライザー上に「設計図」を縫い描く作業です。

The software sequence docker showing the layers: placement line, tack down, and applique steps.
Deconstructing the design steps

1.1 配置線(Placement Line)を作る

配置線は、キルト芯や土台布を置く位置を示すガイドです。

手順(Hatch/共通ロジック):

  1. ツール選択: 四角形(Rectangle/Square)のデジタイズツールを選ぶ。
  2. 縦横比ロック解除: X/Yを個別入力できる状態にする。
  3. 寸法入力:6.5、高さ 6.5インチ
  4. ステッチ種: 「シングルラン(ランニング)」を選ぶ。
    • 補足(動画の流れに沿った実務ポイント): 配置線は“後で隠れる”前提のガイドなので、まずは見やすく・ほどきやすい設定で作ると作業が進めやすいです。
A single green running stitch square on the grid, representing the placement line for the stabilizer and batting.
Explaining the first step of ITH projects
Sue using the rectangle digitizing tool to draw a green square on the canvas.
Starting the design from scratch
Close up of the toolbar where the width and height values (6.5) are entered manually.
Setting precise dimensions

成功の目安: オブジェクト一覧に、単純な正方形アウトラインが1つだけ見える。

1.2 仮止め線(Tack-Down)=刺繍機を止める仕組み

刺繍機は「止める指示」がないと止まりません。刺繍データの基本ロジックでは、色替え=停止(作業介入のタイミング) になります。

  1. 複製: 配置線の正方形をコピー(Ctrl+C / Ctrl+V)。
  2. 色替え: 複製側に別色を割り当てる(例:緑→赤)。
  3. 補強(任意): ここでBacktrack(往復縫い/二度縫い)を入れる人もいます。標準的な綿+薄手キルト芯なら1周でも成立しやすく、嵩高い芯なら2周で押さえが効きやすい、という考え方です。

チェックポイント: シーケンスが「四角(色A)→停止→四角(色B)」になっている。

1.3 絶対センター(0,0)に揃える

基本ルール: デザインは常にソフト上で(0,0)にセンタリング。

枠張り(刺繍ミシン 用 枠入れ)の現場では、枠の機械中心を基準にするのが最も再現性が高い方法です。データが数mmでもズレると、外枠と内枠の余白が片側だけ狭く見えて“歪み”として目立ちます。


Step 2: 複合形状—モノグラムのアップリケ化

ここが初心者がつまずきやすい理由は、「アップリケ」が単一オブジェクトではなく、置く→固定する→切る→カバーするという複数挙動の集合だからです。

Browsing the built-in monogram library in Hatch to select the decorative frame style.
Selecting the design asset

2.1 枠デザインの“挙動”を管理する(Break Apart)

ライブラリから装飾枠を入れると、色順や縫い順が非効率になりやすいことがあります。

  • 対処:Break Apart
    • 「Ungroup」が使えない(グレーアウト)場合があります。
    • そのときは「Break Apart」で要素を分解し、個別に並べ替え・色整理できる状態にします。
Right-click context menu showing the 'Break Apart' option highlighted.
Separating design elements

2.2 変換(Hatchの要点)

  1. 対象選択: サテン枠(サテンステッチのフレーム)を選択。
  2. コマンド: Convert to Applique を実行。
  3. 確認: 配置線・カット線・仮止め線などが自動生成されます。
The 'Convert to Applique' toolbar button being clicked.
Converting satin stitch to applique

補足: この自動変換は、基本的にネイティブの.EMBのように「形状情報」を持つデータで有効です。.DSTや.PESなどの“ステッチデータ”中心の形式だと、ソフトが形状として認識できず自動化が難しくなります。

2.3 画面上の色分けは「作業ミス防止」

現場のコツ: ソフト上では、配置線を蛍光色など“見間違えない色”にしておき、実際に縫う糸色は後で決める運用が安全です。工程を誤って統合(停止が消える)しにくくなります。

ミシン速度について(コメントより要約)

「デジタイズ中に、ソフト側で刺繍速度を遅くできる?」という疑問が出がちです。

  • 結論: ソフトは主に密度や縫い経路を作りますが、速度(回転数)は基本的に刺繍機側の制御です。
  • 補足: 刺繍機は必要に応じて自動的に減速することがあります。厚物や細かい動きでは、縫い品質を保つために機械が判断して速度を落とすケースがあります。

Step 3: 装飾—付加価値を作る

ここで見た目の完成度が一段上がります。

3.1 内枠(5.7インチ)の考え方

  1. 四角を作成: 5.7 x 5.7インチ の正方形。
  2. センター: (0,0)に揃える。
  3. ステッチ選択: モチーフラン(例:キャンドルウィッキング系、クロス系など)を適用。
Adjusting the corners of an inner square using the Reshape tool to create a notched corner effect.
Customizing the decorative border shape

チェックポイント: 外枠6.5インチに対して内枠5.7インチだと、外周までの余白が確保できます。標準的な 刺繍枠 では、端に近いほどテンションや布の動きの影響が出やすいので、装飾をギリギリまで寄せない方が安定します。


Step 4: 最終工程—封筒式の裏布を閉じる

ここが仕上がりを左右する“決め”の工程です。

4.1 閉じ縫い(Closure Stitch)

  1. 複製: 外枠6.5インチの正方形をコピー。
  2. 移動: シーケンスの一番最後へ移動。
  3. 縮小: 6.48インチ にリサイズ(外枠よりわずかに内側)。
    • 理由: 最初の配置線が表に出ないよう、最後の縫いを“少し内側”に入れて縫い代側へ隠します。

4.2 補強(Backtrack)

最後の閉じ縫いは、返し口をひっくり返す動作で負荷がかかります。Backtrack(往復縫い) などで補強しておくと安心です。

注意(マグネットの取り扱い): 厚物対策でマグネット枠を使う場合、強力な磁力があります。ペースメーカー等の医療機器に近づけない、また不用意に“バチン”と吸着させない(指を挟む危険)ことを徹底してください。

量産の考え方(段取りのレベル分け)

1枚できたら、次は10枚・50枚をどう安定させるか。

  • レベル1(個人制作): 標準枠でも可。ただし厚物でネジ締めが増えると手が疲れやすい。
  • レベル2(作業効率重視): マグネット刺繍枠 用 枠固定台 やマグネット系の治具で、枠張りの再現性と準備時間を改善。
  • レベル3(設備で回す): 多針刺繍機なら色替えの手間が減り、介入は「布を置く/アップリケをトリムする」中心になります。

ソフト別:同じことを“どこでやるか”

ロジック(配置→仮止め→装飾→閉じ)は共通です。違うのは「ボタンの場所」だけ。

The interface of Brother PE Design 11 showing the shape tools menu.
Comparing software tools
The Monogram Decorations library in PE Design 11.
Showing alternative assets in PE Design
The Embrilliance interface showing the 'Outlines' dropdown menu.
Locating shapes in Embrilliance
Selecting the 'MGM Diamond' font style in Embrilliance properties.
Creating monograms in Embrilliance
The Embird Studio interface showing vector nodes for drawing a shape.
Drawing shapes in Embird
The final digitized design layout in Hatch with the decorative border and monogram fully assembled.
Final review before saving
  • PE Design 10/11: フレーム素材は Design Library > Monogram Decorations。最初はウィザードに頼らず、四角形ツールで外枠→内枠を一つずつ作ると混乱しにくいです。
  • Embrilliance StitchArtist: Outlines のドロップダウンに形状があります。取り込んだ線は“線”のままなので、目的に合わせてステッチ種(サテン/ジグザグ等)のプロパティを割り当てます。
  • Embird: Point Mode で形状を作ります。文字は独立オブジェクトとして扱いやすく、文字間(カーニング)調整の自由度が高いのが特徴です。

判断フロー:スタビライザーと枠張り方針

布を切る前に、ここを決めておくと失敗が減ります。

Q1:積層は標準(綿+薄手キルト芯)?

  • YES: ティアアウェイ(tearaway)系が扱いやすい。
  • NO: Q2へ。

Q2:伸びる素材(ニット)/目が粗い?

  • YES: カットアウェイ(cutaway)や、ノーショーメッシュ系で変形を抑える。
  • NO: Q3へ。

Q3:10枚以上の量産?

  • YES: 刺繍用 枠固定台 やマグネット枠でテンションの再現性を上げ、個体差を減らす。
  • NO: 標準枠でも運用可能。

Phase 1: 準備(プリフライトチェック)

ITHは準備不足がそのまま不良につながります。縫い始めると、裏布のシワは簡単に直せません。

見落としがちな消耗品

糸と布以外に、仕上がりを左右するもの:

  • 針: 太めの針は厚物で糸が傷みにくく、安定しやすい場合があります。
  • カーブシザー: アップリケのトリムを縫い目ギリギリで安全に行うため。
  • マスキングテープ/養生テープ: 裏布がめくれ込まないよう仮固定に使う。

位置合わせを固定する

hoopmaster 枠固定台 のような治具を使う場合は、ステーション位置を一度決めたら動かさないのが基本です。毎回同じ位置に枠張りでき、仕上がりのブレが減ります。

準備チェックリスト

  • デザイン確認: 外枠6.5インチ、内枠5.7インチ、閉じ縫い6.48インチ。
  • 停止の確認: 配置線と仮止め線の間に色替え(停止)がある。
  • 下糸(ボビン糸): 途中で切れない残量がある。

Phase 2: セットアップ(データの背骨)

レイヤー(オブジェクト)一覧が“物語”になっているか確認します。

  1. Layer 1: ガイド(配置線)
  2. Layer 2: 固定(仮止め)
  3. Layer 3: 意匠(アップリケ+装飾)
  4. Layer 4: 封止(閉じ縫い)

セットアップチェックリスト

  • センタリング: (0,0)に揃っている。
  • グループ管理: 必要な停止以外は、同色をまとめて無駄な色替えを減らす。
  • 干渉確認: 端ギリギリに密なサテンが来ないよう、余白を確保する。

Phase 3: 実行(手順と感覚)

ここからは“現場の動き”です。

手順の流れ

  1. 配置線: 四角を縫う。音:軽いタッピング。
  2. 介入: 枠内にキルト芯と土台布を置き、手でならす。
  3. 仮止め: もう一度四角を縫って固定。音:少し鈍い。
  4. アップリケ: アップリケ布を置く→仮止め→トリム。
  5. 折り返し裏布: 裏布を中表(RST)で折って重ね、少し重なりを作る。必要に応じてテープで固定。
  6. 最終封止: Backtrack入りの閉じ縫い。音:厚物で重め。

実行チェックリスト

  • 手の安全: スタート前に指が危険域にない。
  • テープ位置: 針の進路にテープが入っていない。
  • 中表(RST): 裏布の表面が、コースター表側に向く配置になっている。

品質確認&トラブルシュート

初回の試し縫いは、縫い終わったらすぐ検品します。

1. 角が丸い/シャープに出ない

  • 原因: テンションや布の引き込みで角が逃げる。
  • 対処: スタビライザーを見直す、または 刺繍用 枠固定台 のような治具運用で枠張りの再現性を上げる。

2. 下糸(ボビン糸)が表に出る

  • 原因: 上糸テンションが強い、または厚みで糸が引かれている。
  • 対処: 上糸テンションをわずかに緩め、糸道の引っ掛かりも確認。

3. Ungroupが使えない(グレーアウト)

  • 原因: 単純なグループではなく複合オブジェクト。
  • 対処: Ungroupではなく Break Apart を使う。

4. ズレ/段差が出る

  • 原因: 枠が動いた、厚物でネジ枠がわずかに“逃げた”。
  • 対処: クリップやマグネット枠で積層を安定させる。

まとめ

この手順で、ITHマグラグを「データとしても」「作業としても」再現できる状態になります。

  • 個人制作: ひっくり返した瞬間の“完成の見え方”を楽しむ。
  • ビジネス: ばらつきを減らす仕組み(枠張りの治具化、工程の固定化)に注力する。

まずはロジックを固める。スピードは後からついてきます。