目次
ITHコースターに必要な材料
このインザフープ(ITH)のハロウィン・ゴーストコースターは、一見「小物」ですが、実は基礎の総合練習になります。スタビライザーの枠張り、層のコントロール、端の処理精度、そして枠内完結の仕上げまで、4x4枠で一通り確認できます。
基本の brother 4x4 刺繍枠 で十分作れます。とはいえ、標準枠だと手間が出やすいポイント(特に裏布の固定やトリミング)もあるので、どこで詰まりやすいか/どこを道具で解決できるかも合わせて整理します。

ここで身につくこと(なぜ重要か)
- 「太鼓張り」基準: ティアアウェイ(破り取り)スタビライザーを、叩くとパーンと音がするレベルまで均一に張る方法。
- 浮かせ(フローティング)で層を安定させる: 生地を強く挟まずに固定し、枠跡(枠のリング跡)を避ける考え方。
- スティップルは“飾り”ではなく下地設計: キルト綿の膨らみを先に潰して、後工程の引きつれを減らす。
- ジグザグ「カバー確認」: 最終サテンで端が出ないかを事前に合否判定する工程(ここを飛ばすと端が出やすい)。
- 多層サンドのトリミング: 表布+キルト綿+裏布を、土台(スタビライザー)を傷つけずに切りそろえるコツ。
動画で使用している材料
- ミシン: Brother SEシリーズ(同等の家庭用刺繍機)。
- 刺繍枠: 標準4x4枠(またはマグネット枠へのアップグレード)。
- スタビライザー: ティアアウェイ(破り取り)。
- キルト綿: 薄手。
- 生地: 布帛コットン(紫:表/裏、白:アップリケ)。
- 糸: 刺繍糸(白・黒・オレンジ・紫)。
- 下糸: 下糸(ボビン糸)。

所要時間の目安(現実的な段取り)
よくある質問は「どれくらい時間がかかる?」ですが、制作者の目安はトリミング込みで50分弱です。
- 慣れていない場合: 約60〜70分(スピードより精度優先)
- 慣れている場合: 約35〜45分
量産を考えると、ボトルネックになりやすいのは 枠張り と トリミング です。後半で、ここを楽にする道具面の改善点も触れます。
刺繍枠とスタビライザーの準備
コースターは枠張りの「試験紙」です。最後の外周サテンが高密度なので、生地を強く引っ張ります。スタビライザーが緩いと、円がわずかに歪んだり、波打ちが出やすくなります。

手順1 — スタビライザーを太鼓張りで枠張りする
- 外枠のネジをしっかり緩めます。
- ティアアウェイを外枠にかぶせます(シワや傷のない部分を使用)。
- 内枠を均等に押し込みます。
- 感覚チェック: ネジを締めたら指で軽く叩き、乾いた「パーン」という張り音が出るか確認します。鈍い音/スポンジ感があれば、張り直します。
- 枠をミシンに装着します。
補足: ネジを締めた後にスタビライザーだけを強く引っ張って調整すると、目に見えない裂けが入り、外周の高密度縫いで破れやすくなります。
仕上がりの目安: 面がフラットで、たわみのない土台。

見落としがちな消耗品&事前チェック(失敗を減らす)
スタート前に、最低限ここだけ確認するとトラブルが減ります。
- 下糸残量: 外周サテンの途中で下糸切れになると、修正が大変です。最低でも半分以上ある状態に。
- 押さえの当たり: キルト綿+布の厚みで引っかかりが出ないか、布端がめくれないかを目視。
- ハサミ: 小回りの利く小型(カーブ刃があると尚良い)を用意。
- 手元の安全: トリミング時は枠を安定させ、刃先をスタビライザーに突き立てない。
注意: アップリケのトリミングは、作品を台無しにしやすい工程です。急がず、糸を切らない角度で「滑らせる」ように切ります。
セクション終わりのチェックリスト
- スタビライザーが太鼓張りになっている
- 下糸(ボビン糸)の残量が十分
- 小型ハサミが手元にある
- ボビン周りの糸くずを軽く除去した
ベース作り:キルト綿とスティップル
ここでは「浮かせ(フローティング)」で進めます。つまり、表布やキルト綿を枠で強く挟まず、縫いで固定していくやり方です。枠跡を避けたいときにも有効です。
手順2 — スタビライザーに配置縫い(ガイド円)を縫う
最初の色(工程)で、スタビライザー上に配置縫いの円が入ります。
チェックポイント: 円が潰れず、きれいに丸く見える。
仕上がりの目安: 材料を置くための「的」ができる。

手順3 — キルト綿と表布を浮かせて重ねる(ガイド線を完全に覆う)
- ガイド円の上にキルト綿を置きます。
- その上に紫の表布を重ねます。
- 感覚チェック: 中心から外側へ手のひらでならし、空気だまりや浮きを取ります。
フローティング用 刺繍枠 のような表現で語られる手法は、まさにこの「挟まずに置いて、縫いで固定する」考え方です。

手順4 — 押さえ縫い(タック)→スティップルで下地を安定させる
ミシンが層を固定する縫い(タック)を入れた後、背景にスティップル(うねり縫い)が走ります。
なぜ必要?: スティップルでキルト綿の膨らみを先に押さえ込むことで、後からアップリケや外周サテンを入れたときの波打ち(パッカリング)を減らします。
チェックポイント: 端がめくれそうなら一時停止して手でならします(針の近くに指を入れない)。
仕上がりの目安: 紫の面がしっかり固定され、うねり模様が入ったフラットな下地。

ゴーストのアップリケ:配置→固定→トリミング
ここでの精度が、ゴーストが「きれいなシルエット」になるか「もこっと崩れる」かを分けます。
手順5 — ゴーストの配置線を縫う
紫の下地の上に、ゴースト形状の配置線が入ります。
チェックポイント: 白布を置くために、配置線が見える状態になっている。
仕上がりの目安: ゴーストの“地図”ができる。

手順6 — 白布を置いて固定縫い(タック)する
- 配置線を完全に覆うように白布を置きます。
- 固定縫い(タック)を縫います。
チェックポイント: 縫っている途中で白布がめくれていない。
仕上がりの目安: トリミングできる状態で白布が固定される。

手順7 — アップリケをきわでトリミングする(糸は切らない)
枠をミシンから外し、枠から作品は外さずにトリミングします。
切り方の基準: 固定縫いのラインぎりぎりまで、できるだけ近くを切ります。近くまで切れていないと、後のサテンで白布がはみ出して見えやすくなります。
感覚の目安: ハサミがスッと滑る感覚で進めます。急に引っかかる感じがしたら、固定縫いの糸を噛んでいる可能性があるので止めて確認します。
仕上がりの目安: 端が整ったゴーストのシルエット。

手順8 — ジグザグ「カバー確認」(後戻りしないための合否判定)
この工程は飛ばさないのが安全です。枠を戻して、ゴースト外周にジグザグが入ります。
これは合否がはっきり出る確認工程です。
- OK: ジグザグが生地端をしっかり押さえ、端が外に出ていない。
- NG: 白布の切り端がジグザグより外に見える。
対処: NGの箇所だけ枠を外して追加トリミングします。ジグザグで押さえられていない端は、最終サテンでも目立つことがあります。


手順9 — ゴースト外周のサテン→顔パーツを縫う
ゴースト外周に高密度のサテンが入り、そのまま黒糸で目と口が縫われます。
チェックポイント: サテンの途中で糸切れや引っかかりがないか。カーブが多いので、異音がしたら一度止めて確認します。
仕上がりの目安: 立体感のある外周と、くっきりした表情。

手順10 — 「BOO!」の文字を縫う
オレンジ糸で「BOO!」が入ります。
チェックポイント: 飛び糸(ジャンプ糸)が残りやすい箇所があれば、停止時にその都度カットします(自動糸切りがない場合は特に)。
仕上がりの目安: 読める文字で、糸だまりがない。

裏布の追加と最終外周
手順11 — 裏布を枠の下側に差し込んで浮かせる
ここは初心者がつまずきやすい工程です。枠の下側に裏布を入れるため、見えにくくズレやすいからです。
- 枠を外します(動画では、枠を外さずに下へ差し込む方法も示されていますが、フラットに入ることが最優先です)。
- 紫の裏布を枠の下側に入れ、シワなく平らにします。
作業を楽にするアップグレード: 標準枠はネジの締め直しが必要になりがちです。裏布の固定を手早く安定させたい場合、マグネット刺繍枠 のように挟み込みが速い枠が作業短縮に効きます。

注意(マグネットの取り扱い): マグネット枠は吸着力が強く、指を挟むと危険です。指を挟まない位置で保持し、勢いよく吸着させないように扱ってください。
手順12 — 表側と裏側を円のきわでトリミングする
トリミングは2回に分けて行います。
- 表側: 紫の表布+キルト綿を、円のきわまで切りそろえる。
- 裏側: 紫の裏布を、同様に円のきわまで切りそろえる。
切り方: ハサミはできるだけ面に沿わせ、スタビライザーを切らない角度で少しずつ進めます。層が多いので焦らないのが最短です。
仕上がりの目安: 表裏がそろった「生地サンド」ができ、最終外周で封止できる状態。

手順13 — 最終ジグザグ確認→最終サテン外周で封止する
- ジグザグ確認: 表裏とも端が出ていないか確認する縫い。
- 最終サテン外周: 表布・キルト綿・裏布をまとめて封止します。
チェックポイント: 厚みが出る工程なので、ミシンの音や振動が重く感じたら無理をせず様子を見ます。
仕上がりの目安: 外周が完全に閉じたコースター。

仕上げ:スタビライザーを外す
手順14 — 枠から外し、スタビライザーを破り取り、糸処理する
- 枠から作品を外します。
- 外周の外側からスタビライザーをやさしく破り取ります。
- 感覚チェック: 外周サテンを指で支えながら、少しずつ破ります(勢いよく引くと縫い目が歪みやすい)。
- 飛び糸や端の糸をカットして整えます。
仕上がりの目安: 外周がきれいに締まり、表裏とも見た目が整ったコースター。
量産で安定させる段取りメモ(再現性を上げる)
販売やイベント用に複数作るなら、品質のブレを減らす段取りが効きます。
- 下準備キット化: 表布・裏布・白布・キルト綿をあらかじめ同サイズでカットして束ねる。
- 作業台の固定: 刺繍用 枠固定台 のような枠固定台があると、材料をまっすぐ置きやすくなり、ズレの再発防止になります。
セクション終わりのチェックリスト
- 裏布が下側でシワなくフラットになっている
- スティップルでキルト綿がしっかり押さえられている
- ジグザグ確認で端が出ていない
運用(チェックポイント付きの全手順まとめ)
量産や段取りのために、工程を一本化して整理します。
- スタビライザーを枠張り: 太鼓張りチェック。
- 配置縫い: ガイド円。
- 浮かせ: キルト綿+表布を重ね、ならす。
- 固定: タック→スティップル。
- ゴースト配置: 形のアウトライン。
- アップリケ固定: 白布→タック。
- トリミング: きわで切る(糸は切らない)。
- 品質ゲート: ジグザグ「カバー確認」。端が出たら追加トリム。
- 仕上げ縫い(表): ゴースト外周サテン→顔→「BOO!」。
- 裏布追加: 枠の下側へフラットに入れる。
- 最終トリム: 表(表布+キルト綿)→裏(裏布)。
- 封止: ジグザグ確認→最終サテン外周。
- 仕上げ: 枠外し→スタビライザー破り取り→糸処理。
作業効率を上げたい場合、brother 用 マグネット刺繍枠 4x4 のような枠を使うと、特に裏布を入れる工程(手順10)がスムーズになりやすいです。
運用チェックリスト
- 白布のトリミングは十分きわまでできている?(手順7)
- 裏布は円全体を確実に覆っている?(手順10)
- 最終外周前に、端の出をジグザグで確認した?(手順12)
- 飛び糸は出荷前にすべて処理した?
トラブルシューティング(症状 → 原因 → 対処)
まずは現場で起きやすい「物理的な原因」から潰すのが近道です。
| 症状 | 起きやすい原因(物理) | 対処 |
|---|---|---|
| 端から白布が出る(いわゆる“飛び出し”) | トリミングが甘い | 予防: きわまで丁寧に切る。確認: ジグザグ「カバー確認」でNG箇所だけ追加トリム。 |
| 背景が波打つ(パッカリング) | キルト綿の膨らみ/層のズレ | 対処: スティップルで先に押さえ込む。重ねたら中心からならして空気を抜く。 |
| 多層のトリミングが難しい | 層が厚く、刃先が入りにくい | 対処: 小型ハサミで少しずつ。スタビライザーを刺さない角度を維持。 |
仕上がり基準(「良い状態」の見分け方)
品質の目安:
- 外周: サテンが均一で、端が出ていない。
- 形: 円が自然で、歪みが目立たない。
- 裏面: 裏布がしっかり封止され、糸の乱れが少ない。
使いどころ別のメモ(ギフト/イベント/小ロット販売)
- 梱包: サテンが引っかからないよう、透明袋などで保護すると安心です。
- 時間の見積もり: 1枚あたり約50分(トリミング込み)を基準に、段取り(カット済みセット化)で短縮を狙います。
枠張り運用を見直すタイミング(判断の目安)
作業の痛点は、道具と段取りを見直すサインです。
- 枠跡が気になる:
- 状況: 生地にリング跡が残る。
- 対策: 強く挟む工程を減らし、浮かせ+縫い固定を徹底。必要なら brother 刺繍ミシン 用 刺繍枠 のアップグレードも検討。
- ネジの締め直しが負担:
- 状況: 何度も締めたり緩めたりで手が疲れる。
- 対策: マグネット式など、段取りが速い枠を検討。
- 枚数が増えて追いつかない:
- 状況: 1台で数十枚を回す必要がある。
- 対策: 段取りのキット化+ マグネット刺繍枠 brother 用 のような枠で準備時間を削る。
太鼓張りの音、トリミングの手応え、ジグザグ確認の合否。この3点を基準にすると、作業が「運任せ」から「再現性のある工程」に変わります。
