両面仕上げのITHクリスマスしおり:マイラーのきらめき+パフ系トッパー+裏面をきれいに閉じるフローティング

· EmbroideryHoop
イン・ザ・フープ(ITH)で両面仕上げのクリスマスしおりを作る手順を、現場目線で整理します。マイラー(スパークルシート)で金属糸なしのメタリック表現、必要に応じて水溶性トッパーでサテンを立体的に見せる方法、そして「フローティング」で裏面をプロっぽくクリーンに仕上げるコツまで。シワ・ループ・端の荒れを防ぐ事前チェックとトラブル対策もまとめました。
【著作権声明】

学習目的のコメントのみ。 このページは元の作者(制作者)の作品に対する学習メモ/解説です。権利はすべて原作者に帰属します。再アップロードや転載は禁止配布は行いません。

可能であれば、元動画を作者のチャンネルで視聴し、チャンネル登録で次のチュートリアルを応援してください。1クリックが、より分かりやすい手順解説・撮影品質の改善・実践テストの継続につながります。下の「登録」ボタンから支援できます。

著作権者の方で、修正・出典追記・一部削除などのご希望がある場合は、サイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。速やかに対応します。

目次

ITHしおりに必要な材料・道具

手軽に配れてギフトにもなる一方で、初心者の作品にありがちな「裏がごちゃつく問題」が出やすいのがITH(イン・ザ・フープ)系。ここでは、両面仕上げのクリスマスしおりを“作れる”だけでなく、裏面まで意図して仕上げた業務品質に寄せるための流れを分解して解説します。ポイントは、メタリック見えするマイラー層、サテンをふっくら見せる水溶性トッパー(任意)、そして裏布を途中で入れて閉じるフローティングです。

参考動画は多針刺繍機でキャラクター(サンタ/トナカイ等)を縫っていますが、考え方自体は単針でも多針でも同じです。管理する変数は主に3つ:スタビライザーの張り特殊素材(マイラー+トッパー)の扱い裏布のフローティング手順

Five colorful Christmas character bookmarks laid out on a white surface.
Intro showcase

ここで身につくこと(つまずきやすい原因も含めて)

長く教えてきて感じるのは、成功は「縫いながら直す」より事前の予防で決まるということ。この記事では次を押さえます。

  • 枠張りで安定させる: 形が砂時計状に歪む原因を最初に潰す
  • マイラー管理: Magic Sparkle Sheets(マイラー)で金属糸なしのキラ感を作る
  • サテンを立たせる: Puff Stuff(水溶性トッパー)でサテンをふっくら見せる(任意)
  • フローティングを習得: 途中で裏布を入れて、裏面をきれいに閉じる
  • “外科的”トリミング: 端から毛羽や生地端が出ないように仕上げる

よくある失敗ポイント(なぜ起きるか):

  • シワ/波打ち: 枠で引っ張りすぎ、またはスタビライザー不足
  • マイラーがボロボロ: 密度の高い塗りつぶしでフィルムを“切り抜き”状態にしてしまう
  • 縫い目がループっぽい: トッパーを不適切なステッチに使う/残留がテンションに影響
  • 下糸(ボビン糸)の白が見える: 厚みのある重ね縫いでテンションバランスが崩れる、またはボビン色が合っていない

作業が遅いと感じたときの道具アップグレード

枠跡(枠の押さえ跡)が気になったり、枠張りの反復で手首がつらくなってきたら、現場では道具側を見直すタイミングです。

単発の趣味制作なら標準枠でも十分ですが、例えば「イベント用に50枚」などのロットになると、マグネット刺繍枠が作業効率を押し上げます。特にこのしおりは「スタビライザー+フェルト+裏布」の“サンド”を扱うため、均一に押さえられる磁力枠は歪みを減らし、枠張りの負担も軽くなります。


Step 1: 枠張りと位置合わせ

刺繍の土台は魔法ではなく物理です。ベースが不安定だと、アウトラインと塗りがズレ、ITHでは層が増えるほど誤差が積み上がります。

Hooping the clear stabilizer into the blue magnetic hoop.
Hooping process

1) スタビライザーを枠張りする

手順:

  • スタビライザー(Prep Patch、またはWet N Goneを使うなら2枚重ね)を下枠に乗せる
  • 上枠(マグネット枠なら上側フレーム)をしっかり固定する
  • 感覚チェック: 指で軽く叩いて「太鼓の皮」みたいに張っているか確認(ピンと張るが、引っ張って繊維を歪ませない)

チェックポイント(縫い始め前):

  • 張り: たるみ・波がゼロか
  • はまり: 枠がきちんと座っているか(マグネット枠は確実に噛み合っているか)
  • 素材との相性: フェルトは比較的安定するので、基本は中厚の破り取り/水溶性で対応しやすい

期待する状態:

  • 針が当たっても土台がバタつかない。縫っている最中にスタビライザーが上下に跳ねる(フラッギング)なら、枠が緩いので即やり直し。

補足:なぜ枠の張りがここまで重要か

ITHは途中で「フェルト→マイラー→トッパー→裏布」と層が増え、抵抗(引きずり)が増します。土台(スタビライザー)がたわむと、その抵抗でデザインが引っ張られて位置がズレ、最後のサテン外周が端を外す原因になります。

マグネット枠は、ネジ枠のような“押して引いて”の摩擦固定ではなく、上から均一に圧をかけるため、厚みのある素材でズレが出にくいのが強みです。フェルトや厚物で位置合わせに苦労するなら、マグネット刺繍枠を検討すると「枠ズレ(hoop creep)」という変数を減らせます。

2) 位置縫い→フェルトを固定する

手順:

  • スタビライザー上に位置縫い(プレースメント)を走らせる
  • あらかじめカットしたフェルトの裏に仮止めスプレーを軽く吹く
  • 触感のコツ: スプレーは枠ではなくフェルト側へ。濡れるほど吹くとズレやすいので、手で触って“少しベタつく”程度に。
Placing the white felt rectangle onto the sprayed stabilizer inside the hoop.
Placement

チェックポイント:

  • 余裕: 位置縫い線より四方で最低5mm以上はみ出して覆えているか
  • 密着: 手のひらで押して、ズレないか(高速運転では小さなズレがそのままズレになります)

期待する状態:

  • フェルトとスタビライザーが一体化して動かない。

現場のコツ(動画のポイント)

動画でも「先にフェルトをプレカット」しています。量産視点ではこれが有利で、縫う前にサイズが揃うため、後工程のトリミング誤差や歩留まりロスを減らせます(SVGがあるならカッターでの事前カットも有効)。


Step 2: きらめき層と立体感を足す

ここで一気に“手作り感”から“商品感”に寄ります。扱うのは、マイラー(ポリエステルフィルム)と、Puff Stuff(水溶性トッパー)という異素材です。

3) スパークルシート(マイラー)を置いて固定する

手順:

  • Magic Sparkle Sheets(マイラー)を対象エリアにかぶせる
  • 角をテープで固定する
  • 重要: 使うのは養生テープ/刺繍用テープ。粘着が強すぎるテープは糊残りの原因になります。
Taping down the iridescent Magic Sparkle Sheet over the fabric.
Layering materials

チェックポイント:

  • 針の逃げ: テープが縫い経路に入っていないか(針がテープを刺すと糊が針や糸に絡みやすい)
  • フラット: マイラーは滑るので、フェルトに沿って浮きがないか

期待する状態:

  • 最初の押さえ縫い(ランニング)でマイラーが噛み込まれ、塗りに入ってもめくれない。

4) 低密度の塗りをマイラーの上に縫う

手順:

  • 低密度(隙間のある)塗りで背景を縫う。隙間からマイラーが見えて、金属糸なしでメタリックに見せられます。
Embroidery machine needle stitching the red fill pattern over the sparkle sheet.
Stitching fill

チェックポイント:

  • 音: マイラー上は少し硬い音になりやすい。鈍い当たり音が増えたら針先の摩耗も疑う
  • 破れ方: 穴あきはするが、切り抜きのように裂けて落ちないこと。落ちるなら密度が高すぎる可能性。

期待する状態:

  • マイラーが糸の隙間から反射し、金属糸のような見た目になる(しかもステッチ数を抑えやすい)。

補足:なぜ低密度が効くのか

密度が高いと、針がフィルムに“ミシン目”を作ってしまい、結果として破れやすくなります。動画の狙いは、隙間を残してマイラーを見せること。

5) Puff Stuff(水溶性トッパー)を置く(任意)

手順:

  • Puff Stuff(温水で溶ける水溶性トッパー)をサテンが入るエリアにかぶせる
  • マイラー同様にテープで固定する
Placing the white Puff Stuff sheet over the embroidered area.
Adding 3D topper

注意: トッパーは塗り(フィル)には使わない。動画でも、塗りの上にトッパーを使うと見た目がループっぽくなると説明されています。使うのはサテン(縁取り・細部)に限定。

チェックポイント:

  • 範囲: 立体感が欲しいサテン部分を覆えているか(全面に広げすぎない)

期待する状態:

  • サテンが沈まず、表面に乗って“ふっくら”見える。

6) キャラクターの細部(サテン)を縫う

手順:

  • サテン中心の細部を縫い進める
black satin stitching forming the character outlines over the puff stuff.
Detail stitching

チェックポイント:

  • エッジ: サテンの左右がきれいに揃っているか
  • 見た目: トッパーの上でサテンが盛り上がっているか

期待する状態:

  • 3Dフォームを入れたような立体感(ただしフォーム調整なし)。

注意(現場で起きやすいミス)

この工程は「フェルト+マイラー+トッパー」と重なるため、摩擦が増えます。糸切れや糸の毛羽立ちが出たら、まず針の状態を疑い、必要なら交換してから続行してください。


Step 3: 裏面をきれいにする秘密(フローティング)

フローティングとは、裏布を枠で挟まずに、枠の下へ差し込んで途中から縫い止める方法です。ITHで裏面をきれいに閉じる基本手順になります。

7) 裏布をフローティングで入れる(表を下に)

手順:

  • ミシンを停止する
  • 裏布(フェルト等)を、枠の下(針板と枠の間)へ差し込む
  • 向き: 仕上げ面(きれいに見せたい面)を下向きにする
  • テープで仮固定してもよいが、動画では筒型機で下から差し込んで、最初の数針で保持させています
Sliding the backing fabric underneath the hoop while attached to the machine.
Floating backing

チェックポイント:

  • 余裕: デザイン外周より四方に十分な余白があるか(動画では大きめに用意)
  • シワ: 下側で折れ・噛み込みがないか(手で軽くならして確認)

期待する状態:

  • タックダウン(押さえ縫い)で表裏が固定される。
Machine stitching the tack-down line to secure the floating backing.
Tacking down

補足:フローティングが効く理由(失敗しやすい条件)

フローティングは摩擦と保持で成立します。差し込み時に裏布が引っかかったり、滑って動くとズレます。薄型で出っ張りが少ない枠は差し込みがしやすく、フローティング用 刺繍枠という考え方(特にマグネット系)と相性が良いです。

マグネット枠のサイズ質問(コメントで多いポイント)

コメントでも「どのマグネット枠?サイズは?」という声がありました。動画で使われているのは Mighty Hoops と呼ばれるマグネット枠です。

サイズ選びでよくある誤解が「5x7デザインなら5x7枠でOK?」というものですが、余白が必要です。

  • 目安: デザインサイズ+1インチ=最低限の枠サイズ

量産や段取りを考えるとbrother マグネット刺繍枠 5x7のようなサイズを探す方も多い一方、このしおりのような小物は、デザインが収まるならbrother 用 マグネット刺繍枠 4x4のほうが取り回しが良い場合もあります。いずれも、機械側のアームや干渉がないかは必ず確認してください。


Step 4: トリミングと最終仕上げ

ここは“仕上げの外科手術”工程。品質はハサミの入れ方で決まります。

8) 枠を外して、タックダウン際で裏布をトリムする

手順:

  • 枠をミシンから外す(※生地は枠から外さない)
  • 裏側に返す
  • カーブ刃のアップリケ用ハサミ(動画では6インチの両刃カーブ)で、タックダウンのすぐ外側を切る
Using curved scissors to trim the excess backing fabric close to the stitch line on the back of the hoop.
Trimming applique

注意: 一度切ると戻せません。刃先を下に向けて突っ込むと、タックダウン糸を切って分解します。刃は生地と平行を意識。

チェックポイント:

  • 寄せ: タックダウンから1〜2mm程度まで寄せて切れているか
  • 毛羽: ここで残った毛羽は、最後のサテン外周から飛び出しやすい

期待する状態:

  • 最終サテンで端が完全に包まれる“ギリギリ”のトリム。

9) 最終のサテン外周(タブ含む)を縫う

手順:

  • 枠をミシンに戻す
  • 表フェルト+スタビライザー+裏布をまとめて、太めのサテン外周で封止する(タブも同時に形成)
  • 動画ではこの工程でもトッパーが載ったまま進行します
Final heavy satin stitch border being completed.
Final Stitching

チェックポイント:

  • 位置合わせ: 針が“表と裏を確実に噛む位置”を通っているか
  • 裏の見え: 裏側で白いボビン糸が目立つ場合は、ボビン色/仕上げ処理も検討

期待する状態:

  • 表裏がしっかり閉じ、端が均一で商品っぽい見た目になる。

10) タブ部分の白いボビン糸を目立たなくする(マーカー処理)

手順:

  • タブ(吊り下げループ)は幅が細く、裏側に白いボビン糸が見えやすい
  • 動画の方法:枠に付いたまま、黒の油性マーカー(Sharpie)で白い糸部分を軽く着色する
Coloring the white bobbin thread on the tab loop with a black Sharpie.
Finishing hack

チェックポイント:

  • にじみ: フェルトはインクを吸いやすいので、軽く・少しずつ

期待する状態:

  • 裏面の見た目が締まり、色ムラが目立ちにくい。

現場のコツ(コメント由来の悩みへの補足)

マーカー処理は“救済策”として有効です。動画でも「洗濯しない/身につけないアイテム」だから成立する、と前提を置いています。可能なら最初からボビン糸も色を合わせると、仕上げ工程がさらに安定します。


サテン系トラブルの切り分け

機械のせいに見える不具合も、原因を分解すると対処が早いです。動画内容に沿って、起きやすい症状を整理します。

  • 症状1:塗りがループっぽく汚い。
    • 原因候補: トッパー(Puff Stuff)を塗り(フィル)に使ってしまった
    • 理由: 高さが出て糸ループが締まり切らず、見た目が乱れる
    • 対処: 次回はサテン部だけに限定。今回は水で溶かして様子を見る
  • 症状2:濃色の外周で白いボビン糸が目立つ。
    • 原因候補: ボビン色が合っていない(動画の想定ケース)
    • 対処: 枠に付いたままマーカーで着色、または最初からボビン糸を合わせる
  • 症状3:マイラーが裂けて抜ける。
    • 原因候補: 塗り密度が高すぎる
    • 対処: データ側の塗り密度を下げる(縫いながらの修正は難しい)
  • 症状4:外周が波打つ/端が揃わない。
    • 原因候補: 枠張りが甘く、最初から土台が動いていた
    • 対処: 次回はスタビライザーの張りを“太鼓チェック”で合わせる

スタビライザー選び(このしおり工程の考え方)

迷いを減らすための判断軸です。

  1. スタビライザーを完全に消したい?
    • YES: 水溶性(Wet N Gone)。※動画の通り2枚重ねで安定させる
    • NO: 破り取り。※早いが、しおり内部に硬さが残る場合がある
  2. フェルトが柔らかい?しっかりしている?
    • 柔らかい: カットアウェイも選択肢(ただしトリムが増える)
    • しっかり: 破り取り/水溶性で十分なことが多い
  3. マグネット枠を使う?
    • YES: 均一に押さえられるため、仮止めスプレーを強く頼りすぎずに済む場合がある

材料&作業チェックリスト

準備チェック(見落としがちな消耗品)

  • スタビライザー: Prep Patch または Wet N Gone
  • 素材: フェルト(表・裏、プレカット)
  • 特殊素材: Magic Sparkle Sheets(マイラー)、Puff Stuff(任意)
  • 接着・固定: 仮止めスプレー、養生テープ
  • 道具: 6インチのカーブ刃ハサミ(アップリケ用)
  • 隠れ消耗品: 黒のマーカー(Sharpie)、必要なら黒のボビン糸

ミシン前チェック

  • 枠チェック: スタビライザーが均一に張っている
  • 固定物チェック: テープが縫い経路に入っていない
  • 向きチェック: デザインの回転ミスがない

作業フロー(工程の並び)

  • Step 1: 位置縫い → フェルトにスプレー → 貼り付け
  • Step 2: マイラーをテープ固定 → 低密度塗り
  • Step 3: Puff Stuff(任意)を固定 → サテン細部
  • Step 4: 裏布をフローティング(表を下) → タックダウン
  • Step 5: 枠を外す → 裏布を際でトリム → 枠を戻す
  • Step 6: 最終サテン外周 → 取り外し → マイラー除去/スタビライザー処理 → トッパーをぬるま湯で溶かす(使用時)

注意: マグネットの取り扱い。 マグネット枠(例:Mighty Hoops)は保持力が強く、指を挟みやすいので慎重に扱ってください。


仕上がり基準

素材の物理を尊重して、土台を安定させ、マイラーには低密度、裏はフローティングで閉じる。これだけで“クラフト”から“製品”へ寄ります。

Peeling away the excess Magic Sparkle Sheet from the front design.
Material removal
Pulling the stitched design out of the stabilizer prep patch.
Unhooping/Removal
Rinsing the final bookmark under running water to dissolve the topper.
Washing

「完成」の定義(チェック項目)

  • 表: 塗りの隙間からマイラーがきれいに反射している
  • 立体感: サテンが沈まず、ふっくら見える(トッパー使用時)
  • 裏: 裏布が外周サテンに完全に捕まっていて、端が出ない/ボビン糸の白が目立たない

量産の考え方: 20枚、50枚、100枚と増えるほど、枠張りの負担と仕上がりの再現性が課題になります。バッチ制作ではmighty hoop 5.5 マグネット刺繍枠が扱いやすいサイズとして語られることが多く、複数面付けを狙うならmighty hoop 8x9 マグネット刺繍枠のような大きめサイズが候補になります。手首の負担や枠跡によるロスが増えてきたら、道具側を見直すサインです。