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1 プロジェクトの概要
刺繍データの整理とは、仕立て前の“裁断”に等しい工程です。Etsyなどで購入したデータは、多フォーマット・多サイズ・付随テキストが混在しがち。ここで迷いをゼロにしておくと、制作段階はただ縫うだけになります。

1.1 何を実現するか
- デスクトップで一時作業→解凍→不要フォーマット削除→わかりやすい命名→大分類フォルダへ移動→外付けに丸ごとバックアップ。
- ゴールは「探さない」状態です。必要なデザインに、迷いなく最短で到達できること。
1.2 いつこの方法が有効か
- データ購入が週1以上、または同種デザイン(誕生日番号、動物、フレーム、フォントなど)が増えてきたとき。
- 逆に、月1回未満の使用頻度なら、最小限の分類で十分です。
1.3 前提と限界
- 本稿の流れは、PES中心で運用する個人の実例に基づきます。別機種で他形式が必要な場合は削除ポリシーを調整してください。
2 準備するもの
本手順は、一般的なWindows環境を想定しています。
2.1 ツールと環境
- Windowsのエクスプローラー(圧縮フォルダの展開に使用)
- 刺繍ソフト(例:So What Pro)—データ確認や合成用
- 外付けハードドライブ—完全バックアップ先
- 作業用のデスクトップ領域(見通しが良い)
2.2 ファイルの入力
- Etsy等からダウンロードしたZIP(PESや他形式を同梱)
- 解凍後の各デザインフォルダ
2.3 セーフティ
- 外付けドライブに必ずコピーを保持(過去にPCクラッシュで全損した事例があるため、二重化は実用上の必須対策)。
2.4 クイックチェック
- デスクトップの空き領域は十分か。
- 外付けドライブは接続・認識済みか。
- 刺繍ソフトは起動できるか。
3 初期セットアップ
作業の見取り図を先につくると、後工程が短くなります。
3.1 メインフォルダの用意
- 外付けドライブに“Dani Embroidery”のようなメインフォルダを作成。

- ここに、後述の大分類(Animals、Birthday、Applique Characters、Theme Fonts and Alphas、True Fonts、Used Fonts など)を作ります。
3.2 デスクトップを作業場に
- ZIPを開いたら、エクスプローラーの圧縮フォルダビューから、フォルダをデスクトップへドラッグ&ドロップします。

- 一時置きは可視性が高く、すぐ仕分けできるのが利点です。
3.3 注意
- デスクトップは散らかりやすいので、後述の「移動」までを一気に終える段取りにします。
3.4 プロのコツ
- メインフォルダは必ず内蔵とは別ドライブに。PC故障時の物理的分離が最大の保険です。
3.5 チェックリスト(セットアップ)
- 外付けに“メインフォルダ+大分類”を作成済み
- デスクトップに対象フォルダをすべて展開済み
4 手順:ダウンロードから整理まで
ここからは実操作の順番通りに進みます。判断基準と中間結果の目安も併記します。
4.1 ステップ1:ダウンロードと展開
1) 購入元(例:Etsy)からZIPをダウンロード。 2) ZIPはWindowsエクスプローラーで開き、中のフォルダをデスクトップへドラッグ。ここで展開が完了します。
期待する中間結果:対象デザインごとに1フォルダができ、作業対象がデスクトップに見えること。
クイックチェック:すべてのZIPを展開できたか。展開エラーはないか。
4.2 ステップ2:不要フォーマットの削除
1) 各フォルダを開き、「種類」で並べ替え。 2) 自分のマシンで使わない拡張子(DST、HUS、JEF、XXX、JPG、TXTなど)を選んで削除。PESだけを残す構成にします。

理由:容量を削減し、選択時の迷いを排除するため。結果として、PESのみの軽いフォルダに。

注意:将来別機種を使う可能性があるなら、元のZIPは必ず外付けに保管しておきます(復元できるように)。
プロのコツ:コメントでは「必要になったら刺繍ソフトで別形式に再保存できる」という意見もありました。元データのバックアップを前提にすれば、当面はPES一本化で運用を軽くできます。
期待する中間結果:PESだけが並び、内容を一目で判断できる状態。
ここで、フォルダ名やメモの中にツール名や枠サイズのタグを入れる場合、例えば 刺繍枠 のサイズ(4x4/5x7など)を明記しておくと後工程で迷いにくくなります。
4.3 ステップ3:わかりやすい命名
1) デスクトップ上の各フォルダを右クリック→名前の変更。 2) “Unicorn_only”→“Unicorn Only”、“farm_numbers_all”→“Farm Numbers”のように、「自分が即解読できる言葉」に統一。



理由:制作中の検索と選択を最短化するため。長い記号やダッシュは極力削除し、意味語だけで構成します。
クイックチェック:中身を開かず名前だけで想起できるか。曖昧なら微調整を。
タグ運用の例:用途タグを短く添える手もあります(例:“Only”“Numbers”“Frame”など)。運用に合わせて、将来使うアクセサリー名(例として マグネット刺繍枠 や 刺繍用 枠固定台 など)を「メモ」フィールドに書くのも整理上は有効です(本動画では具体的ツールには言及していません)。
4.4 ステップ4:大分類フォルダへ移動
1) 外付けのメインフォルダ(例:Dani Embroidery)に、Animals、Birthday、Applique Characters、Theme Fonts and Alphas、True Fonts、Used Fonts などの大分類を作成。
2) デスクトップの整理済みフォルダを、該当の大分類へドラッグ&ドロップ。

3) Applique Characters には単体キャラクター(例:Dragon)を格納し、後で数字と合成する用途で保管。


4) Birthday には完成済みの数字セット(1~9など)を格納。テーマ単位で下位フォルダを設けると検索が速くなります。


5) フォントは Theme Fonts(季節・イベント系)/True Fonts(汎用)に分け、さらに常用は Used Fonts に分離。

期待する中間結果:デスクトップから作業フォルダが消え、外付けの大分類下に論理的に集約されていること。
注意:大分類は増やし過ぎないこと。覚えられない体系は探しにくく、かえって遅くなります。
プロのコツ:既存デザインにフレームを被せる用途の例を、あらかじめ“Frames”としてひとまとめに。

補足:コメントには「SE1900で5x7のPESを選別している」という初学者の声もありました。サイズ別に分けたい場合は、フォルダ名やメタ情報に“5x7”などを書き添えると、例えば 刺繍枠 brother se1900 用 で使う想定サイズがすぐ判断できます。
4.5 ステップ5:運用の流れを締める
- 合成前の素材(例:Dragon)は Applique Characters へ、合成して完成した数字セットは Birthday へ、というように「役割が変わったら居場所も変える」を徹底。

- この一往復が、後からの再利用性を最大化します。
4.6 ステップ別チェックリスト(総括)
- ダウンロード/展開:すべて展開済み、重複なし
- 削除:PESのみ残し、他形式は元ZIPにより復元可能
- 命名:短く具体的、記号の乱用なし
- 移動:大分類へ集約、迷う項目は一時“Review”へ
- バックアップ:外付けにメインフォルダごとコピー
5 仕上がりチェック
完成したライブラリは、次の観点でセルフレビューしてください。
5.1 探索テスト
- 想定ケースを3つ作り、各30秒以内に該当デザインへ到達できるか(例:「Animals>Elephant」「Birthday>Circus Tent>9」「Applique Characters>Dragon」)。
5.2 命名の一貫性
- 英単語の表記揺れ(単数/複数、ハイフンの有無)が残っていないか。
- “Only”“Numbers”“Frame”などのタグ語が統一されているか。
5.3 容量の軽量化
- フォルダ内がPESのみになり、ビューのノイズが消えているか。
- 元ZIPのバックアップが外付けに存在するか(削除の安心材料)。
5.4 クイックチェック
- “Used Fonts”など即戦力フォルダが最上段から2クリック以内か。
- “Birthday”に1~9が欠番なく並ぶか。
6 成果物とその後の運用
完成イメージは「見れば迷わないフォルダツリー」。ここから先は、保守運用で品質を保ちます。
6.1 定期移動
- 新規購入分は必ずデスクトップで一時処理→大分類へ即移動。溜めないことが最大のコツです。
6.2 バックアップの型
- 外付けへ“メインフォルダ全体”を定期コピー。コメントでも二重保存の発想を採り入れたいという声がありました。実運用では週次または案件完了時が目安です。
6.3 体系のアップデート
- “Boys”“Cars and transportation”“Easter and spring”“Sports”など、増えたカテゴリは四半期ごとに見直し。流行遅れや使わないデータ群はアーカイブへ退避。
6.4 ライセンス配慮
- ライセンスキャラクターは個人保管に留め、販売用途では避ける判断が示されています。方針はフォルダ名にも反映(例:“Licensed (No Sell)”)。
6.5 コメントから(要点)
- 初学者は「複数箇所に置いて迷子」になりがち。作業は常に“デスクトップ→大分類”の一方向に限定する。
- 外付けドライブの導入タイミングは「容量が逼迫する前」。
7 トラブルシューティングと回復策
症状→原因→対処の順でまとめます。
7.1 展開したのにファイルが見当たらない
- 原因:ZIPビューのまま閉じた、またはドラッグ先を誤った。
- 対処:再度ZIPを開き、フォルダそのものをデスクトップへドラッグ。
7.2 誤って必要なPESを削除した
- 原因:種類ソート後の一括削除で選択ミス。
- 対処:外付けの元ZIPから再展開し復元。元ZIPがなければダウンロード元から再取得を検討。
- 注意:削除前に必ずZIP保管を癖づける。
7.3 フォルダ名が曖昧で中身が思い出せない
- 原因:抽象名や記号だらけの命名。
- 対処:中身を一度確認し、名詞+短いタグ(Only/Numbers/Frameなど)へ改名。
7.4 カテゴリが増えすぎて見失う
- 原因:細分化しすぎ。
- 対処:上位3~5カテゴリに集約し、下位は2階層までに抑える。迷う項目は一旦“Review”へ仮置きし、月次で確定移動。
7.5 デザインの中身を開かずに確認したい(プレビュー)
- コメントには「サムネイルでチラ見できた場面」への関心がありました。本記事はWindows標準の範囲を前提としており、プレビューの具体的な設定については動画内での明示はありませんでした。ビューオプションや対応拡張子の関連付けを確認し、刺繍ソフトでサムネイル表示の可否を検討してみてください。
7.6 将来的に別機種へ乗り換えるかもしれない
- 原因:形式削除への不安。
- 対処:元ZIPの長期保管で解決。必要時に解凍→刺繍ソフトで目的形式に書き出す。コメントでもこの運用が支持されています。
プロのコツ(横断)
- 一回の作業バッチは「購入分をすべて処理し切る」単位に。途中放置が最大の敵です。
- “Used Fonts”のような頻出グループはトップから2クリック以内に置く。最短動線を可視化します。
- 命名は“短い英語+空白のみ”。ハイフンやアンダースコアは最小限に。
注意(横断)
- デスクトップに中間生成物(重複フォルダ)を溜めない。
- ライセンス物は販売用途に混ぜない(方針は明確にラベル付け)。
補助ヒント:ラベリング例
- 枠サイズを素早く判断するため、フォルダ名の末尾に“4x4”“5x7”などを記すと、例えば brother se600 刺繍枠 を使う案件かどうかを一目で見分けられます。
- さらに運用メモにアクセサリー名を添える場合、たとえば 枠固定台 や mighty hoop マグネット刺繍枠 の使用有無を簡記しておくと、制作時の物理段取りまで逆算しやすくなります(本動画では具体機材の使用解説はありません)。
- 「最終保管はメインフォルダへ、作業はデスクトップで」の原則は、将来 マグネット刺繍枠 や補助ツールを増やしても不変です。
ミニFAQ(コメントから)
- Q:不要形式を削るのは不安。A:元ZIPを外付けに保存しておけば、必要時に再展開できます。刺繍ソフトで別形式へ保存し直すことも可能という意見が複数見られます。
- Q:バックアップはどこまで?A:外付けへ“すべて”を保存しておく運用が紹介されました。過去のクラッシュ経験からも、完全バックアップが有効です。
最後に:一貫した命名・絞り込み・配置・バックアップ——この4点のルーチン化こそが、迷いを減らし制作時間を取り戻す最短ルートです。今日の購入分から、この流れをそのまま適用してみてください。制作に集中できる手元の“刺繍ライブラリ”が、確実に育っていきます。
