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1 プロジェクトの概要
ミンキーのようなパイル・起毛素材は、通常のフーピング(生地ごと枠に挟む)だと枠跡が残ったり、毛足に縫いが埋もれて文字がぼやけがちです。フロートは、下芯のみをピンと張り、その上に生地を仮留めして刺繍するやり方で、跡残りを避けつつ安定感を確保します。
この手順は、5x7 サイズの刺繍枠と Brother PE800 を例に説明しますが、他機種でも考え方は同じです。枠は5x7相当であればOK、下芯はカットアウェイ(動画ではこれを使用。通常はティアアウェイも好みで可)を使い、トップには水溶性スタビライザーを重ねます。
プロセスの全体像は次のとおりです。
- 下芯だけを枠に張る(“ソフトドラム”の張り)
- ミンキーの毛並み(ナップ)方向を確認し、名入れする角を決める
- 枠のセンター刻印と角をそろえ、左右のはみ出し量を測って中心出し
- 仮留めスプレーで生地を下芯に密着させる
- ミシンに装着し、デザインを90°回転&位置合わせ
- トップに水溶性スタビライザーを置いて刺繍
- 仕上げ(ジャンプステッチのカット、トップのはがし、裏の下芯を整える)
注意として、仮留めスプレーが枠にかかると、後々ベタつきや汚れになります。噴霧前に枠周辺をマスキングするひと手間で、作業の快適さが大きく変わります。作業の段取りを安定させるには、必要に応じて 刺繍用 枠固定台 を併用すると位置決めがより再現しやすくなります。
クイックチェック:
- フロートにする目的は“跡を残さず・毛足を制御する”ことか?
- デザインは角配置(対角)で読みやすい向きにする計画か?
2 準備するもの
必須の道具と素材:
- 5x7 刺繍枠(動画では5x7)
- 下芯:カットアウェイ(動画使用)。ティアアウェイも好みで可(動画コメントでも好みと発言)
- 上芯:水溶性スタビライザー(トップ)
- ミンキー生地(大きめの矩形)
- 仮留めスプレー(バスティング用)
- メジャー(はみ出し量の測定)
- はさみ(ジャンプステッチや芯のカット)
- ミシン本体:Brother PE800(例)
任意であると便利な補助:
- マスキングテープ(噴霧時に枠を養生)
- センタ刻印の視認用に細い印つけ道具(不要でも可)
- トップのフィルムを仮固定するスコッチテープ(コメント由来の実践知)
補足:動画ではフォントや具体的なブランドは明示されていません(トップ材は薄手/厚手の言及あり)。サイズやブランケット寸法も具体値は出ていません。
プロのコツ:ミンキーの位置決めや角度の再現性を上げたい場合、磁力で保持できる マグネット刺繍枠 も選択肢です。フロート運用でも枠の開閉ストレスが少なく、毛足の品物を扱いやすくなります。
チェックリスト(準備編)
- 下芯は枠サイズよりひと回り大きくカット済みか
- ミンキーは仕上がりサイズで裁断済みか(完璧な正方形は動画外だが、裏に計測線を引いてから裁つと精度が上がるとのコメントあり)
- スプレー、テープ、はさみ、USB(デザイン)を手元に用意したか
- 必要に応じて マグネット刺繍枠 brother 用 や固定台を準備したか
3 セットアップ:下芯だけをフーピング
まずは生地を挟まず、下芯のみを枠に張ります。

3.1 “ソフトドラム”の張りを作る
- 外枠に下芯をかぶせ、内枠を押し込んで挟み込みます。
- ネジを締めつつ、内枠が持ち上がらないよう周縁の下芯を軽く引いて張りを均一化。
- 指で軽く弾いて“ソフトドラム”のような音と反発があればOK。

注意:ゆるいまま始めると、文字が波打ったり密度の高い部分で歪みが出ます。ここでの張りが全工程の品質を左右します。必要に応じて、ドライバーで微調整します(動画でも手または付属のドライバーを使用)。
3.2 タイトな基盤が必要な理由
フロートでは生地は枠に固定されないため、基盤となる下芯の張りが唯一の“止まり”になります。ドラムのように張れない場合は一度外し、下芯の方向を変えて再トライしてください。補助として brother 5x7 マグネット刺繍枠 のような保持力の高い選択肢を使うと、張りの再現性が出しやすくなります。
チェックリスト(セットアップ編)
- 下芯のしわ・たるみがない
- 弾くと“ソフトドラム”の音がする
- 内枠の浮き上がりがない
4 完璧な位置決め:ミンキーの角とナップ
4.1 ナップ(毛並み)方向を見極める
ミンキーを手前から奥、奥から手前へ撫で、どちらが“滑らか”かを確認します。動画では、毛並みの下方向を“ブランケットの上から下”と見立て、名入れを“毛並みの流れに対角の右下角”に配置しています。

クイックチェック:毛並みに逆らって文字が寝て見えないか、想定の読み方向になるかを頭の中でシミュレーションしましょう。角配置は視覚的に安定し、贈り物としても収まりがよいです。角出しの再現性を高めるため、hoopmaster 枠固定台 を使って角・刻印・直角の関係をルーチン化するのも手です。
4.2 角と枠センター刻印をそろえる
- まだスプレーは使わず、枠上にミンキーを“そっと”置き、内側の輪郭を軽く指で押してイメージをつかみます。


- 角の一点(名入れする角)を、枠のセンター刻印に一致させます。

- メジャーで対角のはみ出し量を測り、左右が同じ(動画では1インチ)になるよう微調整します。

プロのコツ:測定は“角から枠内の直線”で行い、同一点を基準にするとずれに気づきやすくなります。必要に応じて snap hoop monster マグネット刺繍枠 のガイド線を活用すると視認性が上がります。
チェックリスト(位置決め編)
- 角の一点=枠のセンター刻印が一直線
- はみ出し量(左右・上下)が同値
- 生地のドットやパイル模様の流れが歪んで見えない
5 固定:仮留めスプレーできれいに密着
5.1 “持ち上げてから、狙って吹く”
位置が決まったら、片側をそっと持ち上げ、露出した下芯に仮留めスプレーを“薄く均一に”吹きます(生地や枠に直接ではなく、芯へ)。

注意:枠がベタつく原因は“枠に直接スプレー”。噴霧前に枠の縁をマスキングテープで養生しましょう(動画の教訓)。また、噴霧で生地が動かないよう“水平に持ち上げる”のがポイントです。
5.2 押さえて貼る→刻印再確認→全面プレス
持ち上げた生地を元の位置へ静かに戻し、角とセンター刻印の直線が保たれているかを再確認してから、全面を手のひらで圧着します。

クイックチェック:しわ・気泡・たるみがない/角と刻印が一本の直線上/測ったはみ出し量に変化なし。
コメントから:
- スプレー残りで洗濯が必要かという質問に対し、作者は「不要。接着は一時的で、仕上がりではブランケット内側に入る」と回答しています。
- 針に糊が付いて糸切れする問題には、刺繍用の“バスティング接着剤”を使えば大きなトラブルは起きにくいとの返答がありました(一般の多用途接着スプレーは不向きという声もコミュニティにあり)。
- 枠が汚れた場合は、温かい(熱すぎない)石けん水での浸け置きや、食洗機用タブレットでの浸け置きが有効だったという実践談が複数届いています。
補足アイデア:フロートの安定性をさらに上げたい現場では、角位置をキープしやすい brother pe800 用 マグネット刺繍枠 のような保持系アクセサリーも検討できます。
チェックリスト(固定編)
- スプレーは芯へ薄く、均一に(吹きすぎない)
- 角×刻印の一致を再確認
- 枠のベタつき対策の養生済み
6 ミシン設定とステッチング
6.1 枠を装着し、生地をさばく
- 枠のクランプ側の向きを意識してミシンにスライド装着します。

- ミンキーの余りが喉(スロート)側で折れたり巻き込まれたりしないよう、大きく払い出して平らに整えます。

注意:生地を巻き込んだままスタートすると、縫い付け事故や目詰まりの原因になります。開始直前に必ず“下もぐり”がないか目視で確認を。
6.2 デザインを90°回転→角に配置
- 画面で名入れデザインを呼び出し、90°回転させます(動画では横向きで右下角に読める向き)。


- 枠上の“角の内側”に相当する位置までデザインを移動し、プレビューレイアウトと実物の関係が一致しているか確認します。
コメントから:
- ダウンロードしたフォントの並びが曲がる場合、作者は Embrilliance で事前に名前を組み、USB 経由で“まっすぐ”出力しています(機上で一文字ずつ並べるより確実)。
- 名入れ高さについては、動画では1インチのフォントを使ったとの返答がありました(使用フォントパックに 1"/2"/3" のサイズが含まれていた旨)。
プロのコツ:厚手・起毛素材では、トップに水溶性フィルムを必ずかけ、毛足がステッチの上に起き上がるのを防ぎます。ずれやすい場合は周縁をスコッチテープで軽く留める方法がコミュニティで支持されています。
6.3 トップをかけて刺繍する
- 刺繍範囲を覆うサイズの水溶性スタビライザー(トップ)を置き、範囲全体に被っているかを確認します。
- 準備が整ったら刺繍を開始します。

注意:ミンキードットのように毛足が低い種類ではトップが必須でない場合もありますが、一般的なミンキーでは文字が沈みやすいため、トップの併用が画質向上に有効であると動画コメントで共有されています。
チェックリスト(刺繍直前)
- 生地の折れ・巻き込みゼロ
- デザインの回転・位置が意図通り
- トップが全範囲を覆っている
- 必要ならトップ周縁を軽くテープ留め
- 代替策として マグネット刺繍枠 brother se1900 用 のように対応機種向けマグネット枠を活用して安定化してもよい
7 仕上げ:スタビライザーと糸始末
刺繍が終わったら、次の順でクリーンアップします。
- 押え金を上げて枠をリリースし、ミシンから外す。
- 名入れのジャンプステッチを丁寧にカットする。
- トップの水溶性スタビライザーをやさしく剥がす。

- 裏側のカットアウェイを、文字の周辺を残しつつ余分をカットする(切りすぎ注意)。
仕上がりの見本:コーナーに“LINCOLN”が水平に、毛足に埋もれず判読性高く刺繍されています。

クイックチェック:
- 文字の周縁に毛足が飛び出していない
- ジャンプステッチの取り残しがない
- 裏の芯は縫い目を支える程度に残っている
プロのコツ:枠にスプレー残りがついた場合は、温かい石けん水での浸け置きで落ちやすいという報告が複数寄せられています(熱すぎは変形の恐れ)。食洗機タブレットの浸け置き、専用洗浄剤の活用などの声もありました。
8 トラブルシューティングと回復手順
症状→原因→対策の順にまとめます。
- 刺繍中に生地が動く/文字が波打つ
- 可能原因:下芯の張り不足、スプレーの均一性不足、位置決め後の押さえ不足
- 対策:“ソフトドラム”まで張る→スプレーは芯へ薄く均一→角×刻印を再確認してから全面プレス。必要なら マグネット刺繍枠 や マグネット刺繍枠 brother 用 を検討
- 文字が毛足に沈む/かすれる
- 可能原因:トップ(上芯)未使用、フィルムが刺繍範囲を覆っていない
- 対策:水溶性スタビライザーを全範囲に被せ、ずれる場合はスコッチテープで軽く固定
- 糸切れや針の糊付き
- 可能原因:汎用の接着スプレーで粘着が強すぎる
- 対策:刺繍用の仮留め接着剤を使用。付着した場合は針を交換、枠は温かい石けん水で洗浄(コミュニティ報告)
- 枠がベタつく/汚れが蓄積
- 可能原因:枠に直接噴霧
- 対策:噴霧前に枠周辺をマスキングで養生、終業後はぬるま湯で早めに清掃
- コーナーの中心がずれる
- 可能原因:角と刻印が一致していない、左右のはみ出し量が不均等
- 対策:角一点とセンター刻印を直線に合わせ、左右・上下のはみ出し量を同値に調整。測定基準点を統一する。補助に 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 やガイド定規を活用
- トップフィルムが動く
- 可能原因:毛足や静電気で滑る
- 対策:四辺をスコッチテープで軽く固定(コミュニティ提案)
コメントから(抜粋):
- 仕上がり寸法やテーブル寸法など細部の数値は、動画で明示されていません。作者は別動画でリアルタイム縫製も予定とコメントしています。
チェックリスト(最終)
- ビフォー:下芯はドラム張り、角×刻印一致、はみ出し量が同値
- ミドル:デザインは90°回転、角配置、トップは全範囲を覆う
- アフター:ジャンプカット済み、トップ除去、裏芯は必要量のみ残す
応用メモ:同系統のやり方は他機種でも有効で、対応枠サイズやアクセサリーは機種ごとに異なります。例えば マグネット刺繍枠 11x13 のような大枠や、対応機種ごとの マグネット刺繍枠 babylock 用 などが市場にあり、素材やサイズに応じて選択可能です(本ガイドの手順自体は変わりません)。
