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Baby Lock Alliance用フリーモーションキット(Free-Motion Kit)の概要
刺繍ミシンでフリーモーションキルティング——一見すると矛盾しているようですが、Baby Lock AllianceはFree-Motion Kit(BNAL-FM)を使うことで、「キャリッジで動かす刺繍」から「手で布を動かすフリーモーション」へ切り替えられる設計になっています。
「フリーモーション」と聞くと、コントロールが効かず怖い・難しいという印象を持つ方も多いはずです。ですがこの構成の強みは、速度上限(420/610 spm)を機械側で固定できること。足踏みを強く踏んでも設定以上に上がらないため、手の動きだけに集中できます。
このガイドでは、当てずっぽうを排除して、(1)安全パーツの装着(ここは必須)、(2)画面でのモード切替、(3)針停止位置・ビーム・速度上限の設定、(4)U字グリップでの実縫い、の順に整理します。最後に「針の速度(一定)×手の移動量(可変)」という“コントロールの式”を使って、ムラの原因を切り分けられるようにします。

1. 安全ガードの装着:まず「物理的な安全」を作る
画面操作の前に、必ず安全パーツを取り付けます。フリーモーションでは手が針の近くに来やすく、数百spmで上下する針に対してリスクが高い作業になります。キットの要点は、動く部分と手指の距離を確保することです。
主要3点(コンポーネント)
- キャリッジカバー(背面・スナップ式)
- 役割: 背面の可動アーム(キャリッジ周り)を覆って、接触や巻き込みのリスクを下げます。
- チェックポイント: しっかり「パチッ」とはまり、軽く触れてもガタつかないこと。
- 透明ニードルガード(前面・針周り)
- 役割: 針棒周辺を囲う透明ガード。手元が見える状態で、指が針に近づきすぎるのを抑えます。
- 重要: これは“推奨”ではなく、作業の前提です。フリーモーションは布を手で動かすため、通常の刺繍よりも手指が危険域に入りやすくなります。
- フリーモーショングリップ(U字ツール)
- 役割: 両手で持ってキルトサンド(表布+キルト綿+裏布)を動かすためのハンドル。
- なぜ効く: 手のひらで直接押さえるより、摩擦のムラが減り、一定の圧で滑らせやすくなります。




注意: ケガのリスクが高い作業です。 服の袖・髪・アクセサリーは必ず固定してください。透明ガードは安全性を高めますが「完全防護」ではありません。ミシン稼働中は、U字グリップの内側(針に近い領域)へ指を入れないでください。
2. 画面操作:Free Motion Modeへ切り替える
ハードが固定できたら、次はミシン側に「刺繍データではなく、手動操作を受け付ける」状態へ切り替える指示を出します。
Free Motion Modeの起動
- 操作: メインメニューで Free Motion アイコン(ダーニング押えのようなマーク)をタップ。
- 見た目の確認: 刺繍キャリッジが物理的に後方へ退避し、画面が刺繍用のグリッド表示から、フリーモーション用のシンプルな画面に切り替わります。


現場のコツ: キャリッジが下がらない/動きが不自然な場合は、キャリッジカバーが正しくはまっているかを再確認してください。位置がずれていると、動作が制限されることがあります。
3. 「コントロールの式」を作る(針停止位置・ビーム・速度上限)
初心者がつまずきやすいのは、速度が毎回バラつく状態で縫い始めてしまうことです。Allianceでは、変数を減らして“再現性”を作れます。
A. 針停止位置(Needle Up/Down)
Needle Up/Down の切替で、停止時に針を上で止めるか/下で止めるかを設定します。
- おすすめ: Needle Down(針下停止)
- 理由: 一時停止して持ち替えるときに針がアンカーになり、布がズレて隙間が出るのを防ぎやすくなります。

B. ニードルビーム(Needle Beam:位置合わせ用ライト)
Needle Beam をONにします。
- 用途: 針が落ちる位置を視覚的に把握できます。狙った角やエリアに「着地」させたいときに迷いが減ります。

C. 速度上限(プリセット420/610 spm)
この機能が、フリーモーションを安定させる要です。足踏みを全開にしても、設定した上限(spm)を超えません。
- Preset 1:420 spm
- 学習用の速度帯。 小さめの渦や、動きを覚える段階に向きます。
- Preset 2:610 spm
- 流れを作る速度帯。 慣れてきたらこちら。針のサイクルが速い分、手の動きが一定なら線が滑らかに見えやすくなります。

4. 準備(消耗品と下準備):縫う前に勝負が決まる
刺繍では枠張りが品質を支えますが、フリーモーションでは準備が品質を支えます。
最低限そろえるもの
- 針: 厚みのあるキルトサンドを想定し、強度のある針を選びます(薄い針だと負荷でブレやすくなります)。
- 糸: キルティング用の糸。
- 下糸(ボビン糸): 均一に巻けていること。巻きムラはテンション不安定の原因になります。
- スタビライザー(安定紙): キルト綿が基本ですが、表布が伸びやすい素材の場合は、追加の安定層を検討します。
「枠張り」発想の切り替え
このモードでは刺繍枠は使いません。ただし、通常の刺繍に戻ったときに生産性のボトルネックになりやすいのは枠張りです。
- きっかけ: 通常の枠張りが遅い/手首がつらい/位置ズレが多い
- 選択肢: マグネット刺繍枠 の導入を検討する方もいます。ネジ式の枠に比べて着脱が速く、枠跡(枠のリング跡)を抑えたい現場で話題になりやすいカテゴリです。
注意: マグネットの取り扱い注意。 強力なマグネットは指を挟む危険があります。医療機器をご使用の場合は、機器メーカーの指示に従い距離を確保してください。
開始前チェックリスト(ここが抜けると失敗しやすい)
- 針の状態: 新しい針か(劣化すると異音や糸切れにつながります)。
- 糸くず: ボビン周りにホコリが溜まっていないか。
- 糸掛け: 糸掛け時に押えが上がっていたか(テンション皿が開く前提)。
- 作業環境: テーブル上に引っ掛かりがないか(抵抗=縫い目ムラの原因)。
5. セットアップ手順:機械と画面を「縫える状態」に揃える
次の順番で進めると、やり直しが減ります。
- ハード装着: キャリッジカバーをスナップ固定 → ニードルガード装着 → U字グリップを手元に準備。
- モード切替: Free Motion Modeを選択し、キャリッジが後方へ退避するのを待つ。
- 挙動設定: Needle Down(針下停止)→ Needle Beam ON。
- 速度上限: 最初は Preset 1(420 spm) を選ぶ。
セットアップ確認(OKが揃ってから縫い始める)
- キャリッジが後方に退避し、停止している。
- 画面がフリーモーション用の表示になっている(刺繍のグリッドではない)。
- 速度上限が420 spmになっている。
- フットコントローラーが接続されている。
6. 実縫い:ステッチを安定させる動かし方
ここからは「同期(シンクロ)」がテーマです。
動作の流れ
- 狙いを決める: 縫うエリア(例:無地の三角部分)を決める。
- グリップを置く: U字グリップを布の上に置く。
- 触感の目安: 押さえつけるのではなく、滑らせて動かせる程度の軽い圧にします。
- 踏み込む: フットコントローラーを踏み、設定した上限速度で針が回る状態を作る。
- 動かす: 渦を描くように、一定のリズムで布を動かす。



コントロールの式(ここだけ押さえると上達が速い)
- 手の速さ × 針の速さ(固定)= 縫い目の長さ
- 針の速さは 一定(420/610で上限固定)
- 手の速さが 縫い目の長さ を決めます
- 手が速すぎる=縫い目が長くなり、しつけ糸のように見える
- 手が遅すぎる=縫い目が詰まり、糸が溜まって見える
- 目標: ミシンの一定のリズムに合わせて、手も一定で動かす



仕上がり確認(品質チェック)
- 音: 一定の回転音で、引っ掛かりや異音がない。
- 見た目: 点の集合ではなく、短いダッシュが揃っている。
- 裏面: 裏側にループが引き出されていない(上糸テンションが緩い可能性)。
7. 判断フロー:動かしにくい/シワが出るときの考え方
フリーモーションは物理です。症状から原因を絞ります。
ケースA:布が波打つ/シワが出る
- 原因: 針の上下動で布が伸びたり、層が安定していない。
- 対策: スタビライザー追加を検討。刺繍に戻る場合は 刺繍ミシン 用 枠入れ の考え方(布を安定させる)も参考になります。
ケースB:目飛びする
- 原因: 布が針と一緒に持ち上がる(いわゆるフラッギング)などで糸が拾えない。
- 対策: まず針交換。次に、針周辺が浮かないようにU字グリップで近傍を安定させます。
ケースC:段取り替えが利益を削る(商用運用で切替が多い)
- 状況: 刺繍⇄フリーモーションを頻繁に行うと、準備時間が積み上がります。
- 対策: 刺繍モード側の効率化。
- 位置決めの再現性を上げたい場合は ミシン刺繍 用 枠固定台 の導入が検討対象になります。
- さらに検索するなら hoopmaster 枠固定台 や、着脱を速くしたい場合の 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 といった選択肢があります。
8. トラブルシューティング:経験則で最短復帰する
問題が起きたら、コストの低い順に切り分けます。
| 症状 | 主な原因候補 | その場チェック | すぐできる対処 |
|---|---|---|---|
| 糸がささくれる/切れる | 針/糸掛け | 針穴付近で毛羽立つ | 1. 針交換。<br>2. 糸掛けを最初からやり直す。 |
| 裏にループ(糸が泳ぐ) | 上糸テンション | 裏側がゆるく輪になる | 押えを上げた状態で再度糸掛け(テンション皿に入っていない可能性)。 |
| 動きがガクガクする | 抵抗(摩擦) | 手が引っ掛かる感触 | ベッド面を整える。圧をかけすぎない。 |
| 縫い目が長く荒れる | 手が速い | しつけのように見える | 手をゆっくりにする、またはPreset 2(610 spm)へ切替してリズムを作る。 |
| 針が当たったような音 | 布を引っ張っている | 「カチッ」「パチン」系の音 | 直ちに停止。針が下りた状態で強く動かさない。 |
9. まとめ:Allianceを“表現できる機械”にする
Baby Lock Allianceは、速度プリセット(420/610 spm)と安全パーツを組み合わせることで、刺繍ミシンをフリーモーションキルティングに転用できます。ポイントは「最初は420で一定リズムを作る」「U字グリップで摩擦ムラを減らす」「針停止位置とビームで迷いを減らす」の3つです。
商用目線の次の一手: baby lock alliance 刺繍ミシン を主力として使っている現場ほど、次に効いてくるのは縫い速度ではなく段取り時間です。
- 課題: ネジ式の刺繍枠は着脱に時間がかかり、手首の負担にもなりやすい。
- 改善案: 刺繍用 枠固定台 のような治具・固定台で位置決めを標準化したり、マグネット式の枠で着脱を短縮するなど、工程全体での最適化を検討すると作業が安定します。
