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「Terrifying Tower」を作り切る:自立型3Dマシン刺繍の現場ガイド
この作品は、混合素材(Fiber Form+ビニール)を使った上級者向けの構造物です。自立するパネルをITH(枠内)で刺繍し、キラ感のあるビニールアップリケを入れ、最後にタブ(差し込み)・アイレット(鳩目状の穴)・ボタンネット(留め具パーツ)で立体のタワーに組み上げます。
3D刺繍は「魔法」に見えますが、実際は糸で作る構造物です。反り(ワープ)、端の白残り、タブが入らない/ロックしない——こうした失敗は、腕前というより材料の物理と段取りで起きることがほとんどです。
このガイドでは、工程を「驚きゼロ(手戻りゼロ)」に寄せるために、枠張りの安定、素材のストレス管理、トリミングとすすぎの加減を中心に、迷いどころを潰していきます。

Phase 1:準備が9割(材料・道具・安全)
自立型の作品は、刺繍そのものより「準備の精度」で結果が決まります。まずは動画で使用されている標準構成を、作業順に並べます。
基本道具・材料
ミシン/枠張り
- 刺繍ミシン
- 刺繍枠(フープ):オーバル枠(目安 6x10 以上)
スタビライザー/構造
- OESD AquaMesh WashAway:メッシュ状のウォッシュアウェイ
- OESD BadgeMaster WashAway:フィルム状のウォッシュアウェイ
- OESD StabilStick CutAway:ビニール裏打ち用(粘着タイプ)
- OESD Fiber Form:硬さを出す芯材(骨格)
アップリケ/仕上げ
- OESD Applique Fuse and Fix:型紙を貼り付けるための接着シート
- OESD Luxe Sparkle Vinyl:(パープル/グリーン/ブラック・シルバー)
- OESD Expert Embroidery Tape:(TearAway または WashAway)
カット/組み立て
- アップリケ用ハサミ(カーブ刃)
- ロータリーカッター+定規
- 細工用ナイフ(X-Acto系):タブ差し込み口の開口
- OESD Perfect Punch Tool:アイレット穴あけ
- クランプ類:Alligator Clamps または OESD Button Clips

初心者がつまずきやすい「見落としポイント」
コメントでも「材料は揃えたが、型紙がどこにあるのか分からない」という声がありました。この作品は型紙の精度=後工程のはまりに直結します。
- 型紙(テンプレート)の扱い:デザインデータに印刷用テンプレートが含まれている場合はそれを使用します。含まれていない場合、ソフトで自作が必要かどうかはデータ構成によります(まずは同梱ファイルを確認)。
- 刃物の切れ味:タブ差し込み口は「切れ味」で仕上がりが変わります。引きずると糸を傷めやすく、差し込みが渋くなります。
注意(安全)
フィルム状スタビライザーやビニールは滑りやすく、ハサミ・ロータリーカッター・ナイフが抜けやすい素材です。必ず安定したカッティングマット上で、刃の進行方向に指を置かない姿勢で作業してください。枠をミシンに付けたままのトリミングは行いません(動画でも、枠から外さずにミシンから外してトリムしています)。
Phase 2:素材準備(基礎を作る)
この作品は、重力に負けないために「硬さの作り方」を2系統で組み合わせています。
- Fiber Form:構造の芯(骨格)
- ビニール+StabilStick CutAway:密度と安定性を追加
Step 1 — Fiber Formのテンプレートを貼って切る
精度はここで決まります。後で「入らない/ズレる」を起こさないために、冷却まで含めて丁寧に。
- 印刷:ミラー(反転)指定のテンプレートを Applique Fuse and Fix に印刷します。
- アイロン接着:テンプレートを Fiber Form にアイロンで貼り付けます。
- 冷ます:完全に冷めるまで待ちます(動画でも「冷ましてからカット」が強調されています)。
- カット:黒いアウトラインに沿って正確に切り出します。
チェックポイント:角が浮いていないか、端までしっかり貼れているかを確認。浮きがあるとカット精度が落ち、後の位置合わせが崩れます。

Step 2 — ビニールを裏打ちして補強する
ビニールは針の打撃で伸びやすく、縫いズレや歪みの原因になります。先に裏打ちして「伸び」を抑えます。
- 剥離紙を剥がす:StabilStick CutAway の台紙を剥がします。
- 貼り合わせ:Luxe Sparkle Vinyl の裏面に貼ります。
- ならす:気泡が残らないように押さえて密着させます。

Phase 3:ITH(枠内)工程(ここが勝負)
この工程での手戻り原因は、だいたい「枠張りの不安定」「トリムでのズレ」「素材の浮き」です。
補足(作業感の目安):コメントでも「可愛いけど手間が多い/時間がかかる」という反応がありました。工程数が多い分、各ステップで“次の工程が楽になる状態”を作るのがポイントです。
Step 3 — 「粘着面」を作る枠張り手順
安定した 刺繍ミシン 用 枠入れ を作るために、動画の流れに沿って進めます。

- 2枚重ねで枠張り:ウォッシュアウェイを2層で枠に張ります(動画では BadgeMaster WashAway と AquaMesh WashAway を重ねています)。
- 位置縫い(配置縫い):ミシンで配置線を縫います。
- スジ入れ→剥がす:スクリブツール(ウィーディングツール等)で、縫い線の内側だけ表層をスジ入れして剥がします。
- チェックポイント:下の層まで傷つけないこと。剥がすのは「内側だけ」です。
- Fiber Formを置く:露出した粘着面に、切り出したFiber Formをはめ込み、指でしっかり押さえます。

現場のコツ:このスタビライザーの積層が「一時的な布」になります。枠張りが均一でないと、配置線が歪み、後の組み立てで合わなくなります。
チェックポイント:Fiber Formが完全にフラットに収まっているか。端が浮いていると、後で針が引っ掛かる原因になります。

Step 4 — ビニールアップリケの貼り込みとトリム
- 配置枠を縫う:ビニールを置く位置が縫われます。
- ビニールを置く:準備したビニールを配置枠の上にかぶせ、テープで固定します。
- 仮止め縫い:ミシンがボックス状に縫ってビニールを固定します。
- トリム:ミシンから枠を外し(※枠から作品は外さない)、縫い線ギリギリで余分なビニールをカットします。
トリムの要領:枠を机に置いて安定させ、カーブ刃のアップリケハサミで縫い線に沿って少しずつ。ビニールを持ち上げるとズレやすいので、できるだけ寝かせたまま切ります。

チェックリスト(ミシンに戻す前)
- 枠のテンション:トリム中にたわんでいないか
- テープの取り忘れ:縫い進める前に必ず除去
- トリムの際:縫い線の近くまで切れているか(残りがあると後で縁から見えます)
- 下糸(ボビン糸)残量:サテンが多い工程で途中交換になると見た目が乱れやすい
Phase 4:カット/すすぎ/乾燥(硬さを作る工程)
すすぎは「全部落とす」ではなく、自立に必要な硬さを残すのが狙いです。
量産や段取り改善の話として、粘着式 刺繍枠 刺繍ミシン 用 やマグネット系の枠で作業性を上げる考え方はありますが、この作品はウォッシュアウェイが前提の工程なので、まずは動画通りの構成で進めるのが安全です。

Step 5 — すすぎとプレス
- 荒裁ち:ロータリーカッターで、外周から約 1/4インチ残してスタビライザーを整えます。
- すすぐ:ぬるま湯の流水で、残ったスタビライザーを溶かします。
- 注意:すすぎすぎると柔らかくなり、自立性が落ちます。
- 完全乾燥:しっかり乾かします(動画でも「乾いてから組み立て」が明確です)。
- プレス:当て布をしてアイロンで平らに整えます。

Phase 5:組み立て(壊さず、確実にロックさせる)
ここは力任せにすると戻れません。タブを折る、アイレットを裂く——この2つが一番痛い失敗です。
段取りを揃える目的で ミシン刺繍 用 枠固定台 を使う考え方もありますが、まずは「各パーツの開口精度」と「差し込み順」を守るのが最優先です。

Step 6 — タブ差し込み口/アイレットの開口
- タブ差し込み口:細工用ナイフで、刺繍されたスリット(ボタンホール状)を切り開きます。
- アイレット穴:Perfect Punch Tool で、刺繍された丸穴をきれいに抜きます。

チェックポイント:光に透かして、スリットがきちんと抜けているか確認。糸が橋渡しで残っていると、タブが途中で止まります。

Step 7 — 3D組み立て
- 壁パネルをつなぐ:指示のある箇所をジグザグでつなぎます(動画ではジグザグ接合の説明が入ります)。
- 装飾パーツを先に留める:ボタンネットをアイレットに通して、バルコニー等の装飾を取り付けます。
- ロッキングタブで立体化:床/屋根パーツのロッキングタブを、壁側の差し込み口に入れて固定します。
- 現場のコツ:作業中はクランプ(Button Clips等)で仮固定すると、手が足りない場面で安定します(動画でもクリップ使用が示されています)。


段取り改善:手間が多い作品を“回せる工程”にする
コメントでも「可愛いけど手間が多い/時間がかかる」という声がある通り、この作品は工程が多い分、枠の付け外し・トリム・再セットが負担になります。
- 安定性の改善:厚みのある積層でも素早く固定できる マグネット刺繍枠 は、ねじ締めの手間を減らしやすい選択肢です。
- 機種用の選定:刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 のように、対応枠を前提に揃えると段取りが組みやすくなります。
- 位置合わせの再現性:hoopmaster 枠固定台 のような治具系の枠固定台は、同じ位置・同じテンションで枠張りしやすく、複数パネルを作るときに効いてきます。
注意(マグネットの取り扱い)
マグネット刺繍枠は強力です。指を挟まないよう、必ず端を持ってゆっくり合わせてください。医療機器(ペースメーカー等)への影響があるため、取り扱い注意事項に従って距離を確保します。

最終チェック
完成したタワーは、次の状態になっていれば合格です。
- 自立性:壁が外に反らず、立てたときにグラつかない
- 清潔感:濃色ビニールの縁に白い残り(スタビライザー残渣)が目立たない
- ロック:タブが奥まで入り、ボタンネットが抜けにくい
この作品で身につく「硬さの作り方」「混合素材の扱い」「すすぎの加減」は、他の自立型・立体作品にもそのまま応用できます。
