目次
FSLピアスに必要な材料・道具
フリースタンディングレース(FSL)は、マシン刺繍の中でも「糸だけで布を作る」感覚に近い技法です。通常の刺繍のように生地が糸を支えるのではなく、糸そのものが構造体になります。
そのぶん、初心者には怖く感じやすいのも事実です。土台となるスタビライザーがズレたり破れたりすると、デザインが成立しません。一方でFSLのピアスは「短時間で達成感が出る」題材でもあります。材料消費が少なく、刺繍時間も短め(約10分/片耳)、縫製工程なしで仕上げられます。

何ができる?(このデザインが成立する理由)
このプロジェクトは、1色で刺繍する天使のピアスデザインで、仕上がりは高さ2インチ強です。あえてこのタイプのデザインを選ぶ理由は、密度と抜け感のバランスが良いからです。
- 密度が高すぎる:硬く重くなり、着け心地が悪くなります。
- 抜けが多すぎる:スタビライザーを溶かした瞬間に構造が崩れやすくなります。
このデザインは、細いサテンカラム(細幅サテン)主体でも、下地(アンダーレイ)が小分けで入るため、繊細に見えて形が保てます。
動画内で使用しているもの(そのまま)
- ミシン:Brother 刺繍ミシン(Disneyモデルが映っています)。
- 刺繍枠:標準の4x4または5x7。
- スタビライザー:メッシュタイプの水溶性スタビライザー(2枚重ね)。
- 糸:40番ポリエステル刺繍糸。
- 下糸(ボビン糸):表糸と同系色(重要)。
- 針:Organ 75/11。
- 道具:カーブ刺繍ハサミ、メッシュの食品用ストレーナー、タオル、ディフューザー付きドライヤー、アクセサリー用ペンチ。
- 金具:ピアスフック(イヤーワイヤー)。
見落としがちな消耗品・事前チェック(失敗の大半を潰す)
FSLでつまずく原因の多くは、「通常刺繍と同じ感覚で進めてしまう」ことです。FSLではスタビライザーが土台そのもの。ここを整えると安定します。
- 針は新しめを推奨:狭い範囲に高回数の貫通が入ります。針先が荒れているとスタビライザーを傷めやすくなります。
- カーブハサミ:レース内部の糸端やジャンプ糸を狙って切るため、先端が入りやすい形が便利です。
- ボビン周りの清掃:糸くずがあるとテンションが不安定になり、FSLでは仕上がりの強度に直結します。
注意: カーブ刺繍ハサミは先端が鋭い工具です。切るときは必ず手元から外側へ向け、落としたときに手や足で受け止めようとしないでください。
事前チェック(枠張り前)
- 針:75/11が装着されている
- ボビン:糸くずがなく、同系色の下糸が均一に巻けている
- スタビライザー:メッシュタイプの水溶性を2枚用意できている
- ハサミ:カーブハサミが手元にある
- 洗い場:ストレーナーをシンク近くに用意できている
FSL用のミシン準備
FSLは「枠内で土台が動かない」ことが最優先です。刺繍中に土台(スタビライザー)が動くと、糸の噛み合わせがズレて構造が崩れます。

枠張り:きれいなレースの土台作り
動画では、メッシュタイプ水溶性スタビライザーを2枚重ねで枠張りしています。FSLでは定番のやり方で、1枚だと密度の高い部分で破れやすくなります。
「ドラム皮」チェック(感覚で確認) 枠張り後、指で軽く叩いてみてください。たるみやシワがなく、しっかり張れている状態が理想です。
つまずきポイント:枠張りが滑る/枠跡が気になる スタビライザーは滑りやすく、ネジ式枠だと締め込みの途中でズレが出やすいことがあります。
- 対策(手順):内枠にバイアステープ等を巻いて摩擦を上げる方法があります。
- 対策(道具):ここで マグネット刺繍枠 が有効になります。ネジで引っ張りながら固定するのではなく、上から均一に押さえて固定できるため、メッシュが斜めに引かれにくく、枠内の張りが作りやすくなります。
注意: マグネット刺繍枠は磁力が強い工具です。挟み込み部に指を入れないようにし、医療機器(ペースメーカー等)や精密機器の近くでは取り扱いに注意してください。
動画で示されている設定(そのまま)
- 針:75/11
- 速度:600SPM
- 刺繍時間:約10分/片耳
下糸(ボビン糸)は「同系色」が基本
FSLは両面が見えます。下糸色が合っていないと裏面が目立ちやすく、テンションのわずかなズレも見えやすくなります。動画でも同系色の下糸を使っています。
枠張りがボトルネックになったら(作業性の考え方)
1〜2組なら標準枠でも十分ですが、まとめて作ると枠張りが時間を食います。現場では 刺繍用 枠固定台 のような治具で枠の扱いを安定させる考え方もあります。家庭用機の場合でも、枠張りの負担を減らす目的で、互換環境に合わせた枠固定台や、品質の良いマグネット枠を検討する流れはよくあります。
開始前チェック
- 張り:たるみ・シワなし
- 枚数:メッシュ水溶性が2枚
- 周辺:ミシン後方に物がなく、枠が動いても干渉しない
- 速度:600SPMに設定
- 配置:枠に当たらない位置にデザインが収まっている
天使デザインを刺繍:アンダーレイが命
1色刺繍でも、構造は複雑です。最初に「土台(アンダーレイ)」が入り、その上にサテンが乗ります。

開始直後に確認すること
スタートしたら最初の1分は必ず見てください。
- 見た目:粗い網目や格子のような下地が先に入ります。
- 音:一定のリズムで進むのが正常です。引っ掛かるような音が続く場合は、針やテンション、スタビライザーの状態を疑います。

刺繍中のチェックポイント(離席しない)
FSLは、スタビライザーが破れると一気に糸絡み(いわゆる鳥の巣)になりやすいです。
- アンダーレイ:糸が浮かず、安定して敷けているか。
- サテン:下地が透けて見えるほど薄くないか。違和感があれば早めに止めて確認します。
枠サイズの考え方 小物は brother 4x4 刺繍枠 を選ぶとスタビライザーの無駄が減ります。一方、まとめて作る場合は5x7で複数個取りする考え方もあります(枠内の張りを均一に保てることが前提で、ここでもマグネット枠が活きる場面があります)。
サテンが硬く感じるときの方向性
動画内でも触れられている通り、細すぎるサテンは硬い刺さり方になりやすい傾向があります。デザイン側の要素が大きいですが、テンションの影響も受けます。仕上がりが不自然に硬い場合は、次回はテンションや針状態も含めて見直してください。
水溶性スタビライザーの落とし方(失敗しない)
刺繍が終わったら、次は土台を溶かします。ここが一番不安になりやすい工程です。

手順1:余分なスタビライザーをざっくり切る(動画通り)
ミシンから外し、枠から外します。
- 作業:周囲の余白を残してカット。
- 目安:周囲に少し余白を残します。糸ギリギリまで攻めないのが安全です。
手順2:乾いたうちにジャンプ糸・糸端を処理(動画通り)
ここは先にやるのが重要です。
- 作業:カーブハサミでジャンプ糸や糸端を切ります。
- 理由:濡れると糸が見えにくく、絡みやすくなります。

手順3:温水+ストレーナーで溶かす(動画通り)
ストレーナーの使い方:小物を流失させないため、シンクで直接すすがず、メッシュストレーナーに入れて扱います。
- 水温:温水(熱湯ではなく、冷水でもなく)。温水の方が溶けが早いと動画で説明されています。
- 作業:流水を当てながら、指でやさしく動かして残りを落とします。

すすぎの考え方(動画での運用に合わせて)
動画では「完全にスタビライザーを残さないように洗い流す」運用を推奨しています。特にタオルに貼り付くトラブルを避けたい場合は、洗い残しを減らすのが安全です。

反らせずに乾かす(FSLの仕上がりを決める)
FSLは乾燥中に反りが出やすいので、乾かし方が品質に直結します。

動画の乾燥手順(そのまま)
- 水気取り:タオル2枚で挟み、押さえて水分を取ります(こすらない)。
- すぐ移動:タオルの上に置きっぱなしにしません。
- 置き方:ストレーナーなど、貼り付きにくい場所で乾かします。

表を下にして乾かす理由(動画のポイント)
FSLは自然に「表側へ反る」傾向があります。動画では、表を下(裏を上)にして乾かすことで、反りを抑えると説明されています。

タオルに貼り付く問題を避ける
動画でも注意があり、スタビライザーが残っているとタオルに貼り付くことがあります。
- 対策:水気取りはタオルで行っても、仕上げ乾燥はストレーナー等に移します。

ピアス金具の取り付け(組み立て)
レースが完全に乾いてから行います。濡れた状態で金具を扱うと、上部ループが変形しやすいと動画で注意されています。

組み立て手順(動画通り)
- 乾燥確認:触って冷たさや湿り気がない状態にします。
- 開く:ペンチでピアスフックの輪を開きます。
- 通す:レース側の上部ループに金具を通します。
- 閉じる:輪をしっかり閉じます(開きが残ると脱落の原因)。

動画では、白以外にも淡いブルーやラベンダーで作る例が紹介されています。色替えで印象が大きく変わるので、同じ手順で糸色だけ変えて試せます。
ラッピング(動画のアイデア)
台紙(ピアスカード)にセットし、袋に入れるとギフト感が上がります。


事前説明
これから、1色のFSL天使ピアスを刺繍します。必要条件は、75/11針、40番ポリエステル糸、そして枠張りテンションの徹底です。
位置ズレや仕上がりの乱れに悩んだ経験がある場合、まず「枠張りがそのまま結果になる」点を思い出してください。枠が甘いと、仕上がりも甘くなります。
準備
机を片付けます。FSLは「切る」「濡らす」「小さな金具を扱う」が同時に発生します。
作業動線(早くて安全)
- ドライゾーン:ミシン、糸、ハサミ
- ウェットゾーン:シンク、ストレーナー、タオル
- 組み立てゾーン:ペンチ、台紙
道具を拡張するなら、枠の扱いも見直しポイントです。Brotherユーザーが作業サイクル(枠張り→刺繍→すすぎ)を短縮する目的で マグネット刺繍枠 brother 用 を検討するケースもあります。
準備チェック(再現性重視)
- 照明:針穴が見える明るさ
- 水温:温水が出る状態
- タオル:清潔なものを用意
- 金具:必要数を数えて手元に
セットアップ
枠張りが最重要です。メッシュ水溶性スタビライザー2枚を、枠に対してまっすぐ(斜めに引かない)に張ります。
効率面では、 brother 5x7 マグネット刺繍枠 に切り替えることで、ネジ締めの負担を減らしつつ複数個取りを狙う考え方もあります。
刺繍開始前チェック
- スタビライザー:2枚、しっかり張れている
- ボビン:途中でなくならない量がある
- 糸掛け:上糸を掛け直し、引っ掛かりがない
- 針:75/11
- 速度:600SPM
運用
手順(チェックポイントと合格基準)
- アンダーレイ(開始〜序盤)
- 作業:最初の動きを必ず目視。
- チェック:下地が安定して入る。
- 合格:糸ループなし、枠内が乱れない。
- サテン工程(〜約10分)
- 作業:糸切れ・糸絡みを監視。
- チェック:サテンが均一。
- 合格:裏の糸絡みがない。
- 取り外し&粗裁ち
- 作業:余白を残してカット。
- チェック:糸を切っていない。
- 合格:デザインが欠けていない。
- ウェット工程
- 作業:ストレーナー+温水ですすぐ。
- チェック:スタビライザーが溶けている。
- 合格:狙った状態まで落とせている。
- 乾燥工程
- 作業:タオルで押さえ→すぐ移動→表を下に。
- チェック:反りが出ていない。
- 合格:平らに乾く。
- 組み立て
- 作業:金具を通して閉じる。
- 合格:輪が完全に閉じている。
初めて マグネット刺繍枠 使い方 を試す場合は、上下フレームを合わせて「挟み込み」で固定するだけで、メッシュに均一なテンションを作りやすくなります。
仕上げ検品(最後の品質チェック)
- 左右差:2つが同じ形に見える
- 強度:軽く引いても崩れない
- 平面性:反りがない
- 糸処理:ジャンプ糸が残っていない
品質チェック
ギフトや販売前に:
- 揺すりチェック:金具が緩くない。
- 透かしチェック:輪郭がきれいで、不要な糸が目立たない。
- 触感チェック:引っ掛かりが少ない。
トラブルシューティング
症状:ほどける/穴が開く
- 原因候補:針が傷んでいる、枠張りが甘い。
- 対策:次回は針交換、枠張りの張りを見直す。
症状:強く反る
- 原因候補:表を上にして乾かした。
- 対策:濡らし直して、表を下にして乾かす。
症状:タオルに貼り付く
- 原因候補:スタビライザーの洗い残し。
- 対策:タオルで押さえたらすぐ移動し、ストレーナー等で乾かす。
仕上がり
FSL天使ピアスが完成です。軽くて、形が保てる「糸のアクセサリー」になります。
枠張り(張りの安定)と、乾燥(表を下にする)の2点を押さえるだけで、FSLの難所は大きくクリアできます。標準枠でも、マグネット枠でも、狙うのは「毎回同じ品質で出せること」です。
