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1 プロジェクトの概要
刺繍対象は一般的な前立て付きの帽子です。目標は、キャップフレーム上で帽子をまっすぐに固定し、つばのキワまでデザインを寄せつつ、ズレや引きつれなくきれいに縫い上げること。今回のポイントは以下の3つです。
- 粘着式(スティッキー)スタビライザーで前パネルをしっかり支持すること。
- キャップフレームの赤いラインと赤いドットでセンター合わせを行うこと。
- マシン側でデザインを自動反転・位置調整し、アウトラインで実位確認を行うこと。
硬い帽子ほどフレーミングはシビアですが、コツを押さえれば安定します。特にリチャードソンの帽子は難しいとされますが、つばの納め方とテンションの掛け方を丁寧に行えば問題ありません。なお、似た作業で刺繍用 枠固定台を使った事前位置合わせを想定することもありますが、ここでは動画の実演手順に沿って進めます。
2 準備:道具・素材・環境
作業前に揃えるものと、作業スペースの整え方を確認します。
2.1 使用する道具と素材
- 帽子(フロントパネルつき。作例はリチャードソン系)
- 粘着式スタビライザー(スティッキー)
- はさみ
- キャップフレーム/キャップフレームドライバー
- バインダーフック(4個付属想定。実作業では下側に2個使用)
- ドライバー(フレーム固定のネジ用)
- 刺繍機(Brother Entrepreneur PR1000e)
- デザインデータ(USBで読み込み)
なお、別機種ユーザーは、類似のキャップフレームを用意してください。特定の代替枠やアクセサリー(例:hoopmaster 枠固定台)の使用は本手順には含まれていません。
2.2 作業スペース
- 平らで安定したテーブル。
- ミシン周りに十分なスペース。
- 取り回し時に帽子が針や本体に干渉しないだけのクリアランス。
作業環境が整っていれば、フレーミング時の微妙な調整がしやすくなり、装着・取り外しもスムーズです。

2.3 スタビライザーの事前準備
粘着式スタビライザーは、帽子のフロントパネルに合わせてカットし、センターが取りやすいように折り目で印をつけておきます。折り目は薄くてもガイドとして役立つので、強く折りすぎないのがコツです。

2.4 スタビライザーの挿入
- バッキングを剥がし、粘着面を帽子内側のフロントパネルへ。
- 折り目のセンターと帽子のセンターを合致させながら、気泡が入らないように密着させる。
ここでパネル面がフラットに支えられていれば、後のフレーミングが安定します。

2.5 準備チェックリスト
- スタビライザーを帽子のセンターに合わせたか。
- 粘着面がしっかり密着しているか。
- はさみ、ドライバー、バインダーフックは手の届く位置にあるか。
- デザインデータはUSBに入っているか。
参考として、別環境ではbrother 帽子用 刺繍枠を使うケースもありますが、本手順では動画で用いられたキャップフレーム前提で進みます。
3 セットアップ:キャップ刺繍のための機械準備
ここからはキャップフレームへの装着と、ミシン側のフレーム交換を行います。
3.1 帽子をキャップフレームドライバーへ置く
- 帽子をキャップフレームドライバーに載せ、つばの小さな縁がフレームの前リップ下へ確実に入るようにします。
- フレーム上の赤いセンターラインと赤いドットを、帽子のセンターに一致させる。
- 必要に応じてテンションを調整し、反対側を掛けて固定。
この段階で完璧に合わせるには数回の微調整が必要なこともあります。


3.2 つばを一時的に曲げて納める
つばは軽く曲げてフレーム形状に沿わせます。刺繍後に元の形へ戻せるので、無理のない範囲でOK。ここでテンションが均一になると、縫製中のズレや波打ちが減ります。


3.3 バインダーフックで下辺を増し締め
標準で4個付属するフックのうち、作業では下側に2個使って左右から挟み、帽子の下辺を「さらに」 snug(しっかり)にします。これで縫製中の微小な揺れが減り、アウトラインのズレを防ぎやすくなります。

3.4 セットアップのクイックチェック
- つばは確実に前リップの下へ入っているか。
- 赤ラインと赤ドットでセンターが取れているか。
- 生地のたるみ・歪みがないか。
- 下辺にフックを2個掛け、手で触っても動かないか。
他機種用アクセサリーとしてマグネット刺繍枠 brother 用を使う選択肢も存在しますが、ここではキャップフレームでの固定に限定します。
4 手順:フレーミングから縫製まで
この章では、ミシン側のフレーム交換、帽子の装着、デザイン読み込みと位置決め、刺繍、取り外しまでを順番に行います。
4.1 Aフレームの取り外し(標準枠からの交換)
- ミシンから標準のAフレームを外します。
- タブを捻ってロックを解除し、Aフレームを取り外し。
この操作でキャップフレームを取り付けるスペースが空きます。

4.2 キャップフレームの取り付け
- キャップフレーム上部の小ネジを緩めて通しやすくする。
- ミシン側の2つのタブにキャップフレームを確実に載せる。
- 上部の小ネジを締めて固定。
- 下部の大きいネジも締めて、全体をがっちり固定。
取り付け後、左右の座りとガタつきがないか確認します。



4.3 フレーム取り付けのクイックチェック
- タブ上に正しく載っているか。
- 上下のネジは締まっているか。
- 手で軽く揺すっても動かないか。
キャップフレームの選定は機種ごとに異なるため、他モデルのユーザーは互換性に注意してください。たとえば、6本針機向けの情報としてbrother pr680w キャップ用刺繍枠に関心を持つ人もいますが、ここではPR1000eの構成に限って説明しています。
4.4 フレームへ帽子を装着(ミシン本体)
- フレーミング済みの帽子を横向きにして、ミシンの針下に通します。
- フレーム機構の奥へ押し込み、そこで帽子を正位置に回転させる。
- 両側のローラーを、それぞれ対応する穴に「カチッ」と入るまで確実に差し込む。
この横向き→奥→回転という流れが、針やヘッドに干渉せず装着するコツです。

4.5 デザインの読み込みと自動反転の確認
- 画面上部に帽子フレームのアイコンが表示されていることを確認(正しく認識されているサイン)。
- USBからデザインを読み込みます。
- セット→エンド編集の操作で、帽子刺繍に適した向きへ自動反転されることを確認。
その後、デザイン位置をできるだけ「つばの縁に近い」位置へ寄せます。

4.6 アウトライン機能で実位置をトレース
縫い始める前にアウトライン(トレース)機能を使って、デザインの外周が帽子上でどう動くかを実際に確認します。これにより、センターや上下位置が合っているか、つばとの距離が充分かを目視で確かめられます。ズレが気になれば再調整して、納得いくまでトレースを繰り返します。

4.7 刺繍の開始
- 画面の「縫い」ボタンを押す。
- 使いたい糸色を割り当てる。
ここでデザインは帽子へ刺繍されていきます。刺繍中は手や衣類が針・ヘッドに触れないよう、十分に注意してください。作例では糸条件や速度などの詳細は明示されていませんので、各自の標準設定で問題ありません。
4.8 縫製後の安全な取り外し
- 画面の「ホーム」を押して、取り外しやすい位置へフレームを移動。
- フレーム側のローラーを押して帽子を解放。
- 最初と同様、横向きにして針下をくぐらせ外します。
この手順により、針やヘッドへ帽子が引っかかるリスクが減り、スムーズに取り外せます。

4.9 アンフープ(フレームから外す)
- キャップフレームをドライバーへ戻して固定。
- クリップを外し、帽子をやさしく引き抜く。
つばの形はここで整え直せます。過度に曲げていなければ、元の形に戻しやすいはずです。

4.10 手順のチェックリスト(総括)
- スタビライザーはセンターに密着しているか。
- 赤ライン/赤ドットに対し、帽子のセンターが合っているか。
- つばは前リップ下に正しく入っているか。
- バインダーフックで下辺がしっかり締まっているか。
- 帽子の装着時、ローラーは両側とも穴に確実に入っているか。
- 画面に帽子フレームのアイコン表示があるか。
- 自動反転後、デザインをつば寄りへ移動し、アウトライントレースで確認したか。
キャップ以外のワークではmighty hoop マグネット刺繍枠のような磁力枠を活用する人もいますが、本プロジェクトはキャップフレームを用いた標準的な流れに限定しています。
5 仕上がりチェックと中間確認
刺繍の品質を左右するチェックポイントをまとめます。
5.1 見た目・触感の基準
- フロントパネルにシワや波打ちがない。
- デザイン上端がつばに近く、想定どおりの余白になっている。
- センターが取れており、左右で傾きが出ていない。
- 糸の浮き・つりがなく、パイルの乱れが最小限。
5.2 クイックチェック
- デザインの外形を指でなぞると、刺繍のエッジが均一で段差が出ていない。
- 裏側(スタビライザー側)に極端な糸だまりや緩みがない。
5.3 注意
- 位置決めを急いでアウトライン確認を省略すると、つばとの距離が足りなくなったり、上下がズレたりしやすいです。
- つばがフレーム前リップの下に入っていない場合、刺繍中に帽子が持ち上がる原因になります。
場面によってはbrother pr1000e 刺繍枠で扱う他の枠と相違があるため、キャップ専用の規格やガイドを必ず確認してください(本ガイドは動画の実演範囲に限定しています)。
6 完成後の扱いと次の一手
6.1 仕上がりイメージ
完成品はフロントにロゴが入り、つば寄りにきれいに収まっています。スタビライザーは帽子の内側に密着しており、見た目の凹凸も最小限。必要に応じて、つばの形状を軽く整えてください。
6.2 片付けと保管
- フレームのネジは緩みがないか点検し、次回に備えて元の位置へ戻す。
- スタビライザーの余りは折り目を活かして次回用にカットし、無駄を減らす。
- デザインデータはUSBのフォルダを整理し、同じ帽子サイズで再利用できるようにしておく。
本流れの中に、他ブランドの枠や台(例:マグネット刺繍枠 11x13サイズの磁力枠や大型枠)を混用する手順はありません。必要な場合は別途の手順に従ってください。
7 トラブルシューティングと復旧手順
症状別に、考えられる原因と対処を整理します。
7.1 センターが合わない/傾く
- 可能性:赤ライン・赤ドットの合わせ不足、帽子の初期セット角度がずれている。
- 対処:帽子をいったん浮かせ、赤ガイドに再度合わせる。必要なら数回やり直す。
7.2 つば付近で布が浮く
- 可能性:つばが前リップ下に完全に入っていない、テンション不足。
- 対処:つばを軽く曲げ直し、しっかりリップ下に差し入れる。下辺のバインダーフックで増し締め。
7.3 縫製中に帽子が動く
- 可能性:下辺の固定が甘い、フレーム装着時にローラーが穴へ完全に入っていない。
- 対処:フック数を見直す(下に2個)、ローラーの係合を左右とも再チェック。
7.4 デザインが上下にずれる
- 可能性:画面上の位置移動が足りない、アウトライン確認を省いた。
- 対処:デザインをつば寄りに再移動し、アウトラインで物理位置をトレース。必要に応じて数回繰り返す。
7.5 取り外し時に針へ引っ掛かりそうになる
- 可能性:ホーム位置へ戻しておらず、クリアランス不足。
- 対処:「ホーム」を押してから、帽子を横向き→回転の順で取り外す。
7.6 装着できない/狭くて通らない
- 可能性:正面から無理に押し込んでいる。
- 対処:必ず横向きで針下を通し、奥で回転させる手順を守る。
他環境ではマグネット刺繍枠のような磁力枠でフローティング刺繍を行う場合もありますが、帽子の前立て刺繍ではキャップフレームの支持・ガイドが利点となります。
プロのコツ
- センター合わせは「赤ライン+赤ドット」の2本立て。どちらか一方ではなく両方を見ると傾きが出にくい。
- つばの曲げは最小限でOK。刺繍後は手で軽く形を戻し、放置して癖を抜く。
- アウトラインは一度で終わらせず、気になるなら2〜3回トレースして納得するまで合わせ込む。
注意
- 本ガイドはBrother Entrepreneur PR1000eの実演に基づいています。他機種や他ブランドではフレーム構造・UIが異なるため、固有の手順に従ってください。
- デザインの密度や下打ちなどの設定は動画で明示されていません。素材や糸に合わせて各自の標準値を用いてください。
キャップ以外の小物対応でマグネット刺繍枠 babylock 用や類似規格を探す声もありますが、ここでは工程の普遍部分(センター合わせ、物理係合、アウトライン確認)にフォーカスしています。
最後に、今回のワークフローを別の枠で再現する場合も、センター取りと物理的な係合(ローラーと穴、つばとリップ)は必ず置き換え方法を確認してください。枠や台の呼称は環境によって多様で、例えばマグネット刺繍枠 brother se1900 用やマグネット刺繍枠 brother 用のような表記で販売されている製品もありますが、帽子の前立て刺繍では「キャップフレームに最適化されたガイドと支持」が仕上がりを大きく左右します。本ガイドの核は、その“合わせ方と確認の順序”にあります。
