Table of Contents
1 プロジェクトの概要
Hatch Embroideryのツール群を活用して、ドレスと帽子のアプリケ形状を正確にトレースし、ソフトから直接SVGとして書き出してBrother Scan N Cutで布をカットします。その後、刺繍ミシンで配置ガイドの淡色アウトラインを縫い、カット済み布を仮止めして、黒糸のスケッチ風ステッチで仕上げます。
1.1 本ワークフローの到達点
・デジタイズした形状と実機のカット・縫製をシームレスに接続し、狙い通りの位置へ布アプリケを収めます。 ・線画表現はBackstitchやSculpture Run Stitchで描き分け、手描き風の揺らぎを保ちながらも破綻のない連続性を確保します。 ・ソフト上のフープサイズは700×300mmが例示されていますが、実作業で用いたフープの寸法は動画で明言されていません(ソフト設定と実機環境が一致しない可能性に注意)。

1.2 適用範囲と前提
・Hatch Embroideryの基本的な操作(トレース、ノード編集、ステッチタイプ変更、書き出し)を想定します。 ・Brother Scan N Cutの基本操作(ファブリックマット/回転刃の使用)を前提とします。 ・Brother刺繍ミシンの基本操作を前提とします(画面にはInnov-is M330Eの表示が見えますが、機種名は明言されていません)。
プロのコツ: ・線画のルート設計は「最後の終点から次の始点を近づける」意識で行うと、ジャンプステッチを短く保てます。
注意: ・ソフトのフープ設定値は実機と一致しない場合があります。テスト縫いで必ず物理的な可動域を確認しましょう。
2 準備(道具・素材・ファイル)
Hatch Embroidery、Brother Scan N Cut(ファブリックマットと回転刃)、Brotherの刺繍ミシン、布(アプリケ用)、リネン、スタビライザー、刺繍糸(淡色/ダークグレー/黒)、布用接着剤、はさみ、参照画像(PNG/JPG)を用意します。
2.1 必要ファイルと保存拡張子
・Hatchネイティブ:.EMB(編集可能な状態を保持) ・刺繍機用:.PES(Brother用) ・カット用:.SVG(Scan N Cut用にエクスポート)
2.2 作業スペースの整備
・PCデスクはマウス操作のストロークを確保できるように広く。 ・ミシン周辺はリネンとスタビライザーの取り回しがしやすいように。
クイックチェック: ・参照画像とデザインファイルは同じフォルダ名・同じベース名にしておくと後工程で迷いません。
チェックリスト(準備):
- Hatchと必要フォント/ステッチタイプが使える状態
- 参照画像の用意(PNG/JPG)
- .EMB/.PES/.SVGを保存するフォルダを決定
- リネン・スタビライザー・布・糸・接着剤・はさみの準備
- Scan N Cutのファブリックマットと回転刃
なお、フーピングを安定させたい場面では、マグネット刺繍枠 と併用することで生地のズレを抑えやすくなります。

3 ソフトのセットアップとアートワークの読み込み
Hatchで機種・フープ・計測単位を設定し、参照画像を配置してロックします。
3.1 フープと計測の設定
ソフト上でフープサイズを設定します(動画では700×300mmが表示)。この設定はガイド用であり、実機フープと一致しない可能性があるため、後工程での物理検証を前提とします。

3.2 参照画像のインポートとレイヤーロック
・参照画像をインポートし、拡大率と位置を整えます。 ・参照レイヤーをロックし、トレース中に動かないようにします。
注意: ・ロックを忘れると、ドラッグ時に画像がずれて精度が落ちます。気づいたら即ロックに戻しましょう。
チェックリスト(セットアップ):
- フープサイズの設定を確認
- 参照画像の位置・倍率を調整
- 参照レイヤーをロック
- 作業ズームとスナップ挙動を確認
フレームの安定化を重視する場合、作業途中の一時固定には 刺繍用 枠固定台 を活用すると、マウス操作に集中しやすくなります。
4 アプリケ形状のデジタイズ(ドレスと帽子)
ドレスと帽子はアプリケに用いる主要パーツです。後でSVGに書き出すため、形状の精度が完成度を左右します。
4.1 ドレスのアウトラインを精密になぞる
・拡大表示して「Digitize Closed Shape」を選択。 ・直角は左クリック、曲線は右クリックで頂点を打ち分けます。 ・曲率が思い通りでなければBackspaceで点を戻し、ラインを調整します。 ・ステッチタイプはSingle Run Stitchに設定し、他パーツと識別しやすい色を割り当ててからレイヤーをロック。



クイックチェック: ・腰や肩の角度、裾ラインの滑らかさが参照画像に追従しているか。
プロのコツ: ・長い直線は頂点を減らし、曲線は必要最小限の点で制御すると修正が容易です。
4.2 帽子の形状を追加する
・帽子も同様にトレースします。 ・デフォルトがFillに戻る場合があるため、Single Run Stitchへ変更してからロック。

注意: ・デフォルトのFillで参照画像が一時的に隠れても、後からステッチタイプを変更可能です。
なお、実機での位置合わせをラクにするには brother マグネット刺繍枠 のような保持力の高いフレームが役立ちます。
5 スケッチ風ステッチの追加(腕・頭・髪・肩)
ドレスと帽子の形状が固まったら、線画らしさを担う腕・頭・髪・肩の描写を加えます。
5.1 腕と頭部をフリーハンドで描く
・「Featured Open Shape」+Backstitchを選び、クリック&ドラッグで描くように線を引きます。 ・Reshapeツールでノード単位の微修正、曲率が足りない箇所には点を追加してコントロール。 ・描き終えたらレイヤーをロック。


クイックチェック: ・「大筋の合致」を優先し、不要な微細表現に囚われない(本手法はスケッチ風の味が生きます)。
5.2 髪とドレス要素を彫刻風ランステッチで
・色を切り替え、「Sculpture Run Stitch」で髪や肩、ドレスの表情線を区切りながら描きます。 ・Backtrackで線密度を重ねつつ、ジャンプステッチは短く直線的にして交差を避けます。 ・必要に応じて短い区間を削除して描き直し、流れの良いラインに。ドレス外周にもう一巡の線を加えてスケッチ感を高め、小花のディテールを添えます。

プロのコツ: ・跳ぶ位置を常に意識し、次の始点を前の終点近くにとると後処理が最小限で済みます。
ここでの微調整に集中したい場合、着脱が容易な マグネット刺繍枠 brother 用 を使うと、検証と再装着を繰り返す作業がスムーズです。
6 カッティング用SVGと刺繍用PESの書き出し
EMBとして保存して編集可能性を確保したら、アプリケ形状をSVGに、完成デザインをPESに書き出します。
6.1 HatchからScan N Cutへ:SVGの書き出し
・ドレス/帽子レイヤーのロックを解除→対象を選択。 ・File > Export Cutting からSVGを選び、保存先を指定。 ・アプリケ形状のみを出力しているかフォルダで確認。

注意: ・ロック解除を忘れると選択できません。解除→出力→再ロックの流れを習慣化。
6.2 PESの書き出し(Brother用)
・File > Export Design からPESを選択し保存。 ・同名で.EMB/.PES/.SVGを揃えておくと検索性が上がります。
チェックリスト(書き出し):
- .EMB保存(継続編集用)
- アプリケ形状を選択して.SVG出力
- 刺繍デザイン全体を.PES出力
- 同一ベース名でファイル管理
なお、厚地や多層でも安定を図りたいときは mighty hoop マグネット刺繍枠 のように磁力で挟むフレームが一案です。
7 ブラザーのカッティングと刺繍(実機作業)
ここから物理工程。布をカットし、リネンへ配置して最終のステッチで仕上げます。
7.1 布パーツのカット
・Scan N Cutのファブリックマットに布を密着。 ・回転刃でSVGガイドに沿ってドレスと帽子をカットします。

クイックチェック: ・カットエッジが毛羽立たず、意図通りの寸法で抜けているか。
注意: ・マットへの密着が甘いとズレます。素材に応じて圧着を見直してください。
磁力で確実に固定したい場面では、作業台側の補助として hoopmaster 枠固定台 を併用すると扱いやすくなります。
7.2 刺繍の流れ(配置→ライン→スケッチ)
・リネンとスタビライザーをフープにセットし、淡色糸でドレスの配置ガイド(アウトライン)を縫います。

・続けてダークグレーで腕と顔の最小限の表情線を縫います。 ・ドレスと帽子の布パーツを布用接着剤で軽く仮止め。 ・黒糸でスケッチ風の最終ステッチを走らせて完成。

プロのコツ: ・ガイド縫いの糸色は視認性重視で薄めを選ぶと、上から黒線を被せた後も目立ちません。
もし厚手素材や多層構造で保持が不安なら、snap hoop monster マグネット刺繍枠 のような着脱容易なフレームが作業効率を高めます。
8 仕上がりチェックと品質管理
・アプリケ布のエッジがガイド内に収まり、浮きやシワがない。 ・ジャンプステッチが短く、交差していない(除去しやすい)。 ・線画の流れが途切れず、Sculpture Runの抑揚が自然。 ・表情や小花などの細部は、縮尺に対して情報過多になっていない。
クイックチェック: ・正面・斜め・近接の3視点で確認し、影の落ち方で浮きや段差を見抜きます。
なお、位置合わせの再現性を高めたいときは マグネット刺繍枠 11x13 のような固定しやすいサイズのフレーム選択が役立つことがあります。
9 トラブルシューティングとリカバリー
症状→原因→対処の順で整理します。
・曲線が意図通りに追従しない
- 原因:ノード間隔が広すぎる/点の種別(直線/曲線)が不適切
- 対処:Reshapeで点を追加、左クリック(直)/右クリック(曲)を使い分け、Backspaceで引き返して修正
・Fillに勝手に戻ってしまう
- 原因:ツール既定値の復帰
- 対処:Single Run Stitchに変更し直す(帽子の工程が該当)
・ジャンプステッチが長い/交差する
- 原因:線画のルート設計が非最短/始点終点の配置が遠い
- 対処:区間を分割し、次の始点を前区間の終点近くに移す。不要区間は削除して描き直し
・アプリケ布の位置がずれる
- 原因:仮止め不足/ガイドの視認性不足
- 対処:淡色ガイドを先に縫い、布用接着剤を適量。必要なら再フープしてやり直し
・小スケールの顔が潰れる
- 原因:情報過多
- 対処:最小限の線で表情を示すに留める(動画でも詳細は絞っている)
プロのコツ: ・ジャンプステッチを交差させなければ、仕上げ時の除去が容易です。ルーティング設計の段階で「交差禁止」を意識しましょう。
再現性向上の補助として、磁力系フレームの選択肢(例:マグネット刺繍枠 brother se1900 用)を検討すると、個々の機種での扱いやすさが増します。
10 コメントから
視聴者からは、色の選び方や丁寧なデモに対する称賛が複数寄せられました。また、刺繍カードへの応用アイデアも示唆されました(本編ではカード制作は実演していません)。こうしたフィードバックは、最終用途に合わせた配色・縮尺・紙媒体との相性検討に役立つヒントになります。
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参考タイムスタンプ(要点): ・参照画像の読み込み 00:45/ドレス形状 01:26/帽子 03:25/腕・頭 04:15/髪・肩 06:30/EMB保存 11:19/SVG出力 11:57/PES出力 12:24/布カット 12:40/配置ガイド 12:59/黒ステッチ 13:46/完成 14:14
最後に、編集可能性の担保として.EMB保存を最優先にし、.SVGと.PESを同名管理する運用を徹底しましょう。安定した固定や再現性を高めたい場合は マグネット刺繍枠 tajima 用 や他機種向けの磁力フレーム、ならびに作業台の固定補助具をニーズに合わせて検討してみてください。
