目次
画面上でサテン縁取りを足すメリット
Brother機で My Design Center(画面上でデータ編集できる機能。機種によっては同等機能としてIQ Designer)を使える方は、外部のデジタイズソフトを使わずに、内蔵フォント/内蔵デザインへ「サテン縁取り(サテンアウトライン)」を追加できます。
このガイドの狙いはシンプルです。ミシン内蔵の「2」(内蔵フォントの1文字)を例に、 1) 形状を正確に抜き出し(Stampで輪郭を保存) 2) My Design Centerで線をサテン縫いの指示に変換し 3) 本体メモリーに保存して 4) 刺繍編集画面で元データに重ねる ——という流れで、ズレにくい縁取りを作ります。
縁取りがあると、文字や数字の端が「のっぺり」見えにくくなり、輪郭が立って見えます。特にシンプルな数字・ネームは、サテン縁取りが入るだけでワッペンのような“締まり”が出ます。
コメントでも触れられている通り、この内容は 「縫う」解説ではなく、画面上で“縫えるデータを作る”解説が中心です。ただし、サテン縁取りは生地を強く引くため、枠張りや下地が甘いと仕上がりが崩れます。そこで本稿では、作業前チェックと物理セットアップも要点だけ入れます。
このガイドで身につくこと
- 隠れた手順:Stampで輪郭(形状)を抜き出して保存する
- 「バケツで適用」:線にサテン属性を“流し込む”操作(ここで止まる人が多い)
- 設定の基準:幅0.120インチ、密度100%を起点に調整する
- 合体手順:保存→呼び出し→重ねで位置合わせを崩さない
- 現物対策:高密度サテンに負けない枠張りとスタビライザー

隠れた「輪郭抽出」ツールに入る
ベースデザインを選ぶ
まず通常の 刺繍 画面で、輪郭を取りたい元データを選びます。動画では内蔵フォントから、数字の 2 を1文字だけ選択しています。
- 現場のコツ: 最初は角がはっきりしたブロック体の数字/アルファベットがおすすめです。筆記体や細いループが多い書体は、操作に慣れてからにすると失敗が減ります。

「Stamp」アイコンの意味
ここが最大の要点です。アイコンが目立たないため、見落とされがちです。
操作手順:
- Set を押して選択を確定
- Edit を開く
- 動画のアイコン(四角の中に盾/花のように見えるStamp系アイコン)をタップ
いま起きたこと(重要): ここでやっているのは「刺繍データのコピー」ではありません。ミシン側が元デザインの外形を計算し、輪郭形状(スタンプ用の形)として My Design Centerのスタンプパターン一覧に送っています。つまり「この形を覚えておいて」と登録する動作です。

チェックポイント(画面確認):
- 表示: 「My Design Centerのスタンプパターンリストに呼び出しました(リコールしました)」趣旨の確認メッセージが出ます
- 操作: OK で確定します。メッセージが出ない場合は保存できていません
注意:機械の動作スペース
画面切替(Home/Edit)やMy Design Centerへ移るとき、機種によっては刺繍ユニット(キャリッジ)が待機位置へ動きます。手や道具(ハサミ、カップ等)を刺繍面に置いたままだと、挟み込みや落下の原因になります。モーター音がしたら「手を離す」が基本です。
My Design Centerへ保存できたら次へ
輪郭の保存が確認できたら、いったん Home に戻ります。ここからは「刺繍」ではなく「データ作成(My Design Center)」側の作業に切り替えます。

サテン縫いの縁取りを作る
スタンプ輪郭を読み込む
Home 画面から:
- My Design Center(または同等機能)を開く
- Stamp(スタンプ)領域を選ぶ(動画では葉/形のようなアイコンのメニュー)
- 先ほど保存した「2」の輪郭を選択
- OK でキャンバス(グリッド)に配置

チェックポイント: グリッド上に「2」の輪郭線が表示されます。この時点ではまだ“線”で、縫い方(ステッチ属性)が付いていません。
触らないルール(ズレ防止): この段階で輪郭を手で拡大縮小すると、元データと形が合わなくなりやすいです。
- 結果: 後で元の「2」に重ねたとき、縁取りが噛み合わず、ズレたシールのように見えます
- 基本: スタンプ輪郭は「位置合わせ用の型」として扱い、意図がない限りサイズ変更しません
線のプロパティ(Line Properties)を設定
次に、ただの線を「サテン縫いの線」に変換します。
- Line Properties(線の設定)を開く(鉛筆/線設定のようなアイコン)
- ステッチ種類で サテン縫い(ジグザグ) を選ぶ
- 見分けやすい色(赤や緑など)を選択して OK

バケツ(Fill)でサテン属性を“適用”する
ここが最重要: メニューでサテンを選んだだけでは、線に反映されません。線に対して“流し込み”が必要です。
操作手順:
- Fill/バケツ ツール(ペンキを注ぐバケツのアイコン)を選択
- タッチペンまたは指で、輪郭線そのものをタップして適用

チェックポイント(見た目): 線が太く見えたり、選んだ色に変わったりして、サテン属性が付いたことが分かります。細い線のままなら、タップ位置が外れている可能性があるので、輪郭線を狙って再度タップします。
幅と密度を調整する
細すぎるサテンは、下の塗り(フィル)端を覆いきれず、輪郭が弱く見えがちです。動画では幅を上げて“縁取りらしさ”を出しています。
操作手順:
- Next で設定画面へ
- 幅(Zigzag width) を 0.120インチ に調整(動画の例)
- 密度(Density) は 100% を確認
- Preview で縫い目プレビューを確認


期待される状態: プレビューで、しっかり太みのあるサテン縁取りが表示されます。
補足(現物の挙動): サテンが太いほど生地を内側へ引く力が強くなります。見た目は良くなりますが、枠張りとスタビライザーが弱いと、引きつれや隙間が出やすくなります(後述)。
アウトラインデータを本体メモリーに保存
プレビューが良ければ保存します。
- Set(ベクター情報を刺繍データへ変換)
- Memory(ポケット/ディスクのようなアイコン)
- 本体メモリーに保存

チェックポイント: これでアウトラインは本体内の刺繍データとして呼び出せる状態になります(ファイル形式は機種により異なります)。
仕上げ:元データと縁取りを重ねる
なぜ「保存→呼び出し」が必須なのか
My Design Center側で作った縁取りは、そのまま刺繍画面へ“貼り付け”できるわけではありません。保存して、刺繍編集で呼び出して重ねるのが基本フローです。ここを踏むことで、同じ書体をよく使う方は「縁取りテンプレ」を作り置きできます。
刺繍編集画面で重ねる
刺繍 画面に戻り、合体(レイヤー)します。
操作手順:
- 元の「2」をもう一度選び Set
- Add を押す
- Memory から、先ほど保存したサテン縁取りデータを選択
- Set で重ねる


位置合わせを崩さない確認
チェックポイント(画面確認): 縁取りが元の「2」にぴったり沿って表示されます。
ズレる典型原因:
- 元の「2」を、縁取りを追加する前に画面上で移動してしまった
- My Design Center側で輪郭を手でリサイズしてしまった
対処:
- 画面の移動(Move)で微調整し、拡大表示でエッジを確認します
現場のコツ: 機種に グループ化(リンク) がある場合は、位置が合った時点でグループ化し、以後は“セット全体”を動かします。個別に動かすとズレの原因になります。



高密度サテンに負けない枠張りの考え方
サテン縁取りは、見た目以上に生地へ負荷がかかります。データが完璧でも、枠張りが甘いと仕上がりが崩れます。
起きやすい症状:
- 隙間:塗りと縁取りの間に白っぽいスキマが出る
- 引きつれ:数字の周囲が波打つ
- 枠跡:締めすぎで輪ジミ/押し跡が残る
道具を見直す目安: 厚物(タオル等)や滑りやすい素材(スポーツウェア等)で、強く締めないと安定しない/締めると枠跡が出る/枠張り作業が負担——という場合、マグネット式が作業性と再現性の面で有利になることがあります。
マグネット刺繍枠で安定させる
Brotherユーザーの場合、マグネット刺繍枠 brother 用 を検討するタイミングが、作業の安定度を一段上げるきっかけになることがあります。
マグネット式の利点(作業目線):
- テンションが均一:一点締めになりにくく、目ズレを抑えやすい
- 枠跡が出にくい:押さえ方がフラットで、過度に潰しにくい
- 枠張りが速い:試し縫い→調整→再枠張りの回転が上がる
上位機種の方は、マグネット刺繍枠 brother stellaire 用 や brother luminaire 用 マグネット刺繍枠 のように、機種に合わせた選定をするケースもあります。
注意:マグネットの取り扱い
強力な磁力のため、指を挟むと痛みや内出血の原因になります。持つときはハンドルやフレーム側を持ち、磁石面同士を不用意に近づけないようにします。
縁取り向けスタビライザーの考え方
スタビライザー(刺繍用下地)は土台です。サテン縁取りは密度が高く、生地を引くため、下地の選び方で差が出ます。
判断の目安(素材別)
- 伸びる素材(Tシャツ、フーディー、ニット)?
- はい: カットアウェイ系が安定しやすい
- いいえ: 次へ
- 毛足・凹凸がある(タオル、フリース等)?
- はい: 縁取りが沈みやすいので、上面に水溶性トッパー等を検討(下地は素材に合わせて)
- いいえ: 次へ
- 今回のように縁取りが高密度?
- はい: 下地は弱すぎないものを選び、必要なら重ねて剛性を上げます
位置ズレ/分離のトラブルシュート
画面上では合っているのに、仕上がりが合わないときは「データ側」と「物理側」を切り分けます。
| 症状 | ありがちな原因(データ/物理) | すぐやる対処 |
|---|---|---|
| 塗りと縁取りの間に隙間 | データ: 画面上での位置が微妙にズレている | 拡大表示して、Moveで縁取りを合わせ直す |
| 物理: 枠張りが甘く、生地が動いた | 枠張りをやり直し、下地を見直す | |
| 縁取りが細く見える | データ: 幅設定が小さい | 幅を0.120インチなどへ上げる |
| 物理: 毛足に沈んでいる | 上面トッパーを検討 | |
| 縁取りで詰まる/止まりやすい | 物理: 密度が高すぎる設定になっている | 密度が100%であることを確認 |
| 移動するとレイヤーが分離する | データ: 個別に動かしている | 全選択/グループ化(リンク)があれば先に実行してから移動 |
リサイズのリスク(再確認)
動画でも注意されている通り、スタンプ輪郭は元データの形状を“そのまま”写したものです。輪郭だけを手で伸ばすと、元データと同心にならず、角やカーブでズレが目立ちます。
- ルール: 「縁取りを太くしたい」場合は、形を拡大するのではなく サテン幅(Zigzag width) で調整します。
事前準備(画面操作の前に)
作業は電源を入れる前から始まります。
消耗品チェック:
- 針:サテンは針に負担がかかります。状態の良い針を使用
- 下糸(ボビン糸):縁取り途中で下糸切れを起こさないよう残量確認
- 仮止め(必要に応じて):下地と生地のズレが気になる場合は、作業性を上げる工夫を検討
試し縫い→調整→再枠張りを繰り返すとき、刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 のようなクランプ式は作業負担を下げやすい選択肢です。
事前準備チェック(セクション末)
- ボビン周りの清掃(糸くず除去)
- 縁取り色は見分けやすい配色にしたか
- 素材に合う下地を用意したか
- 作業前に手を清潔にしたか
セットアップ(ミシン周り)
物理環境の確認です。
- 可動域の確保: フープが壁や物に当たらないよう、背面・側面のスペースを空けます(接触はズレの原因)
- 糸掛け確認: 上糸の通しを確認します
量産(例:ユニフォームの番号など)で位置再現性を上げたい場合、マグネット刺繍枠 用 枠固定台 のような枠固定台が、配置の迷いを減らす助けになります。
セットアップチェック(セクション末)
- ベースデザインを選択済み
- Stampで輪郭を保存済み
- My Design CenterでStampを読み込み済み
- ミシン周りに干渉物がない
操作手順まとめ(作成→保存→合体)
現場用のチェックリストとしてまとめます。
手順1 — Stampで輪郭を抜き出す
- デザイン(例:「2」)を選ぶ
- Edit
- Stampアイコン
- 確認メッセージを見て OK
手順2 — My Design Centerで輪郭を呼び出す
- Home → My Design Center → Stamp
- 保存した「2」を選択 → OK
- 輪郭はリサイズしない
手順3 — サテン属性を適用して設定する
- Line Properties → サテン(ジグザグ) → 色選択 → OK
- バケツ → 輪郭線をタップ(太さ/色が変わる)
- Next → 幅 0.120インチ
- 密度 100%
- Previewで確認
手順4 — 刺繍編集で重ねる
- Set → Memory(保存)
- Home → 刺繍
- 元の「2」→ Set
- Add → Memory → 縁取りデータ → Set
- 拡大して位置確認
- 可能ならグループ化(リンク)
作業を小規模ビジネス用途(例:ワッペン制作)に広げる場合、位置決めと枠張りがボトルネックになりやすいです。刺繍用 枠固定台 のような枠固定台と治具の考え方を組み合わせると、画面上の位置合わせを現物に反映しやすくなります。
注意:枠跡と安全
高密度サテンは同じ箇所を繰り返し縫います。稼働中は針周りに手を近づけないでください。ネジ式の刺繍枠を使う場合は、縫い終わったら早めに緩めて枠跡を残しにくくします。
最終チェック(セクション末)
- 縁取り幅が0.120インチになっている
- バケツでサテン属性を適用できている
- データを本体メモリーに保存した
- 合体後、画面上でセンターが取れている
- 枠張りが安定している(しっかり固定できている)
