目次
マスタークラス:マグネット刺繍枠で「タオル刺繍」を失敗なく仕上げる
なぜタオルにマグネット刺繍枠が効くのか?
厚手のバスタオルは、マシン刺繍では「最後の難関」になりがちです。理由はシンプルで、毛足(パイル)が高くて縫い目が沈みやすいこと、そして生地が分厚くて通常の刺繍枠(内枠・外枠)に入れにくいことが同時に起きるからです。
一般的なネジ式フープでふかふかのタオルを枠張りした経験がある方なら、次の状況に心当たりがあるはずです。ネジを締めても締めても安定せず、押し込む力が必要で、最悪の場合は枠跡(パイルがつぶれて輪ジミのように残る)が出てギフト品質が落ちてしまいます。
マグネット刺繍枠は、この「つかみ方」の原理が違います。摩擦と力技ではなく、上からの磁力クランプ(垂直方向の押さえ)で固定するため、分厚い素材でも無理に押し込まずに安定させやすく、パイルをつぶしにくいのが利点です。参考プロジェクトでは、毛足のある高級タオルをマグネット刺繍枠で固定し、さらに追加マグネットで保持力を上げて安定性を確保しています。

厚手パイルで「枠跡」を出しにくい
通常フープの枠跡は、生地が内枠と外枠の間で強く挟まれ、90度に折れ曲がるような状態になることで起きやすくなります。摩擦と圧力でパイルが寝てしまうのが原因です。
マグネットの利点: マグネットは生地の上にフラットに乗って押さえるため、折り曲げ・食い込みが起きにくく、パイルの風合いを保ちやすくなります。狙うのは「押さえているのに潰していない」状態です。
位置合わせ(センター合わせ)とやり直しがラク
タオルは重くてたわみやすく、中心マークを合わせたまま内枠を押し込むのは手が足りません。マグネット枠なら、次の流れで作業が組めます。
- 下枠の上にタオルを置く
- マークを見ながら位置合わせ
- マグネットで「パチッ」と固定
もし1mmズレても、全解除してやり直す必要はありません。該当箇所のマグネットだけ外して、少し動かして、また固定できます。
厚みのある層を「追加マグネット」で安定させる
動画では四隅に追加マグネットを足しています。厚手素材では、これはかなり実務的なやり方です。
チェックポイント(感覚テスト): 枠を持ち上げたとき、タオルの自重でわずかでもズレる感触があるなら保持力が足りません。刺繍中はアームが動くため、重いタオルが引っ張って位置が変わると、文字が傾いたり、アウトラインが崩れます。ズレが出ない固定を目標にします。

タオル刺繍の準備物
タオルは「縫える」だけなら最低限でも可能ですが、仕上がりを安定させるには材料の選び方が結果に直結します。ここでは動画で使っているものを中心に整理します。
動画で使用しているもの
- タオル: Charisma luxury bath towel(毛足のある厚手)
- ミシン: Brother PE800(1本針)
- 枠張り: マグネット刺繍枠 + 追加マグネット
- 印付け: Cricut fabric pen
- 道具: 定規、カーブ(曲がり)ハサミ、粘着ローラー
- スタビライザー: 水溶性(ウォッシュアウェイ)スタビライザー(主に下側の支持)
注意:マグネットの取り扱い
マグネット刺繍枠は強力な磁力で固定します。
* 挟み込み注意: 近づけると一気に吸着し、指を挟むことがあります。必ずしっかり持ってゆっくり当てます。
作業が詰まったときの考え方(枠張り時間が長すぎる)
刺繍自体より枠張りに時間がかかると、作業全体のボトルネックになります。
- 状況: ネジ式フープで毎回手が疲れる/枠跡が気になってやり直しが増える
- 判断基準: 枠張りが刺繍時間を圧迫していると感じたら、固定方法の見直しが効果的です
手順:タオルの準備(中心出し〜枠張り)
準備で8割が決まります。ここでは「二度測って一度で枠張り」の流れで進めます。

中心線(センター)を出す
目的: デザインの中心と、タオルの帯(刺繍する面)の中心を一致させる基準を作ります。
手順:
- 二つ折りで折り目を作る: タオルを二つ折りにし、手でしっかり押さえて折り目を付けます。
- 印を付ける: 折り目の位置をCricut fabric penで中心としてマーキングします。
- 見た目で確認: 開いて、帯の見た目の中心に来ているかを目視で確認します。
マグネット枠での枠張り(固定の作り方)
目的: 安定しているのに無理がない「サンドイッチ状態」を作ります。
手順:
- 下枠を置く: 金属の下枠を、必ず平らな作業台の上に置きます。
- スタビライザーを敷く: 下枠の上に水溶性スタビライザーを重ねます(動画では余っていた端材を使用)。
- タオルを置く: タオルを上に乗せ、中心マークを枠の中心目印に合わせます。
- 定規で微調整: 透明定規などで左右のズレを確認し、必要なら少し動かして合わせます。
- 上側を固定: 上側のマグネット枠(またはマグネット)を順に置いて固定します。
- 追加マグネットで補強: 厚みがある箇所や四隅に追加マグネットを足し、保持力を上げます。
- 座り確認: マグネットを軽く引いて、縁にしっかり噛んでいる感触があるか確認します。

「ピンと張る」ではなく「フラットに整える」
タオルは引っ張りすぎると、後で枠を外したときに戻ってシワ(つれ)になりやすくなります。
目安: 表面がフラットで、シワがなく、ただし無理に伸ばしていない状態。マグネットは「伸ばして固定」ではなく「ニュートラルに押さえる」感覚で使います。
準備チェックリスト(作業開始前)
- 印付け: 中心マークが帯の上で見える
- 重ね順: タオルの下にスタビライザーが入っている
- 固定: 追加マグネットを使い、軽く触ってもズレない
ミシン設定と刺繍
ここからは「機械側の段取り」と「縫っている最中のリスク管理」です。

画面上での回転・配置
目的: 枠張りの向きと、データの向きを一致させます。
- 文字入力: 名前(例:Ashley)をミシン内蔵フォントで入力します。
- 90度回転: 画面上で90度回転し、枠の向きに合わせます。
- 位置合わせ: グリッド表示で位置を確認し、上側に移動するなどして配置を決めます。


糸が引っ掛かる/送りが不安定なとき(動画の回避策)
この作例では、ミシン側の突起(バリ)のような箇所に糸が引っ掛かり、糸送りが乱れるため、糸立てをミシン外に置いて糸をまっすぐ供給する方法で回避しています。
チェックポイント:
- 糸がどこかで引っ掛かって「カクッ」と止まる感触がある
- 下糸(ボビン糸)側も、糸の出る向きによって送りが安定しない
対処(動画と同じ考え方):
- 糸が引っ掛かるポイントを避けるように、糸立て位置や糸の取り回しを変えて、スムーズに供給される経路を作ります。

作業スペースが狭いと、糸経路の確認や段取り替えが雑になりがちです。枠張り〜段取りを落ち着いて行うなら、ミシン刺繍 用 枠固定台のような専用の作業場所を用意しておくと、確認動作がしやすくなります。
刺繍を縫う(実行)
状態: 枠は固定済み、デザインは配置済み。
手順:
- 糸をセットし、押さえを下げて縫い始めます。
- 色替えで白糸に替えてモチーフ(渦)を縫います。
- さらに色替えしてリボン部分を縫います。
- 必要に応じてタオルの重みをさばきますが、ミシンの動作中に無理に手を入れないようにします。


注意:作業中の安全
タオルはかさばるため、縫っている最中に手で押さえたくなります。
コメントでも「針に指を挟みそうで危ない」という不安が出ていました。
ルール: 針周りに手を近づける必要があるときは、必ず一時停止してからタオルの重みを整えます。動作中は針の近くに手を入れません。
スタビライザー選び(迷ったときの考え方)
この作例では水溶性(ウォッシュアウェイ)スタビライザーを使用しています。タオルは肌に触れることが多いので、仕上げで残りにくいタイプを選ぶ考え方は相性が良いです。
仕上げ
仕上げで「売り物感」が決まります。

ジャンプ糸をきれいに切る
カーブハサミでジャンプ糸を処理します。動画でも、カーブハサミだと切りやすい点に触れています。
チェックポイント:
- 文字の内側やモチーフの際に、切り残しがないか
水溶性スタビライザーを除去する
余分なスタビライザーを取り除きます。細かい部分はハサミで整え、残りは後で水で落とす前提で処理します。


最後に粘着ローラーで毛羽を取る
タオルは毛羽が出やすく、縫製中に細かな繊維が付着します。粘着ローラーで表面を整えると見栄えが上がります。

マグネット刺繍枠の選び方
動画では汎用のマグネット枠を使用していますが、安定して再現するには「サイズ適合」と「保持力」が重要です。
磁力(保持力)が強いメリット
厚手タオルでは保持力が弱いとズレの原因になります。厚みのある素材ほど、追加マグネットで補強する発想が有効です。
サイズの確認
ミシンが認識する枠サイズと合っていないと、そもそも使えません。
- Brother PE800の場合は、対応表記のある brother pe800 マグネット刺繍枠 を選び、認識サイズ(例:5x7\"など)の範囲内で運用します。
- ほかの刺繍機でも、刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 は「機種対応」が前提になります。
最終検品チェック(品質管理)
- ジャンプ糸: 取り残しがない
- スタビライザー: 目立つ残りがない
- 表面: 毛羽・糸くずが取れている
- 位置: 文字とモチーフが意図した位置に収まっている
