Table of Contents
カスタム刺繍枠のイントロダクション
非標準の刺繍枠(例:磁気枠)は、ミシンが自動でサイズを把握してくれません。だからこそ、ミシンに「正しい枠の内側」を教える設定が重要。設定が完了すると、画面上に赤いセーフティラインが表示され、針が物理枠へ当たるリスクを可視的に抑えられます。

プロジェクトの対象はHappy JapanのType 1(角に丸みがあるタイプ)。Type 2(角がスクエア)より入力が難しめですが、分度器と定規の組み合わせで正確に形状を記録できます。

プロのコツ
- 手描き分度器を使う場合は、切り出しの余白を極限までカット。中心や0/90°ラインを正確に合わせられます。
- 角度ごとの線は描かず、印と数値だけを記録。線が多いと中心点を見失い精度が落ちます。
道具と材料をそろえる
必要なものは次のとおり。
- 非標準の刺繍枠(例:15cmの磁気枠)
- 無地の紙、分度器、定規、鉛筆(消しゴムが使える筆記具が安心)
- コンピュータ(Notepadなど.txtで保存できるソフト)
- USBメモリ、Happy Japan刺繍ミシン本体
- 参考:Happy Japanの取扱説明書(カスタムフレームの章)
注意
- ファイル名は8文字以上が必須です。短いと読み込まれません。
- 保存時は*.txtの“*”などのワイルドカードを外し、拡張子.txtで保存してください。

クイックチェック - 枠のタイプはType 1か? 角が丸いならType 1です。

カスタム枠を正確に測る
作業面をスクエアに整える
紙の2辺からそれぞれ10mm内側に平行線を引き、直角の基準軸を作ります。基準線のすぐ内側に枠の直線部がくるよう位置合わせし、外周をトレースして輪郭を確定します。

ここで重要なのは、あくまで“軸を先に”引くこと。輪郭を写したら、対角線を引いて中心点を求め、縦横の中点(例:15cmなら7.5cm)で確認して整合性を取りましょう。

プロのコツ
- 中心点を決めたら、中心から周縁までの距離が左右・上下で整合しているかを定規で再確認。
角度と距離をプロットする
分度器の中心を先ほどの中心点に合わせ、90°ラインを水平軸に重ねます。10°刻みで印だけを打ち、各印について中心から枠の曲線外周までの距離をミリ単位で測り、紙の余白に記録。これを水平線に達するまで10個分集めます。

注意
- 角度ごとに中心から線を“描かない”こと。線が重なると中心点がブレ、数値も読みづらくなります。
クイックチェック - 0点は常に中心。定規は0を中心点に置いてから測定。数値の単位は必ずmm。

測定が終わったら、0°から水平までの10個の数値が揃っているか最終確認しましょう。動画例では「75, 78, 81, 86, 90, 93, 94, 95, 96, 96」のように記録されています。(値は各自の枠形状に依存)

参考トピック(他社比較の視点)
- Happy Japan以外の機種にも磁気枠は存在しますが、各社の仕様は異なります。たとえばbrother pr1055xやricoma 刺繍枠ユーザーは、同じ考え方は応用できても、インポート形式や手順は各社マニュアル要確認です。
カスタム枠データ(.txt)を作成する
Notepadは“デジタルの設計図”
Notepadを開き、次の形式で入力します。
- 1行目:Type = 1(等号の前後にスペースあり)
- 2行目:Name = "任意の名称"(8文字以上。例:"MagSq150")
- 3行目:Form = 測定値を10個、カンマ区切りで(末尾にカンマは付けない)
- 4行目:END(大文字)
例: Type = 1 Name = "MagSq150" Form = 75, 78, 81, 86, 90, 93, 94, 95, 96, 96 END
ここでのポイントは、半角スペースとカンマ位置の厳守。1文字のズレで読み込み不可になることがあります。

保存時の注意
- ファイルの種類はテキスト(.txt)。ファイル名に自動挿入される“*”などのワイルドカードは削除。
- USBメモリの直下またはわかりやすいフォルダへ保存し、取り込み先で迷子にならないように。

クイックチェック
- Nameは8文字以上か? 引用符で囲っているか?
- Formの数値は10個か? 最後にカンマを付けていないか?
- ENDは大文字か?

補足
- 磁気枠はブランドを問わず人気。例としてmighty hoopやsnap hoop monster、用途一般を指すmagneticや磁気 刺繍枠 for embroideryといった呼称も流通しますが、本記事はHappy Japanの仕様に沿って解説しています。
ミシンへアップロードして有効化
USBメモリをHappy Japan本体に挿し、ホーム画面の緑色フープアイコンからフープ設定へ。カスタム設定(USBから多針へ転送するようなアイコン)を開き、Custom Hoopsフォルダ内の.txtを選択します。

取り込み後、表示される座標(X/Y)が0でなければ、矢印キーでX=0、Y=0へ移動して「Set」。これでカスタム枠が有効化され、画面には外枠と赤いセーフティラインが表示されます。

プロのコツ - 取り込み直後は“座標合わせ”が第一。X/Yをゼロにしないとトレースの基準がズレます。

クイックチェック - 画面にカスタム枠が表示されたか? 赤い安全ラインが見えるか?

注意
- 赤いラインを越えると、黒い外周=物理枠にヒットするリスクが上がります。常にライン内でデザインを運用しましょう。
トレースで安全確認
縫い始める前に、必ずトレース(外周のなぞり)を実行。押え金の動きをじっと観察し、セーフティラインに対して安全余裕があるかを目視で確認します。異音や接触の気配があれば、直ちに停止して測定値・.txt・座標を再点検しましょう。

クイックチェック
- トレース中、押え金は赤いラインの内側に留まっているか?
- デザイン配置は枠の形状(角の丸み)を踏まえているか?
コメントから:よくある質問と補足
- 長方形(220×130mm)の磁気枠はどう作成する?
→ 本動画はType 1(角が丸い枠)を例に解説しています。長方形でも、作業の基本は同じく「基準軸→中心→10°刻み測定→Formへ10値」です。ただし形状により数値が変わるため、個別に測定してください(コメントへの直接回答は未掲載)。
- Brother PRで使える?
→ 投稿者はHappy Japan専用の手順として解説。数学的な考え方は似ていても、対応可否やインポート形式は不明との回答でした。各社マニュアルをご確認ください。happy japan 刺繍ミシンユーザーとhappy 刺繍ミシンユーザーでは操作系が近い一方、他社は実装が異なる場合があります。
- Ricomaでも同じ“式”?
→ 投稿者いわく未検証。理論は似るかもしれないが、実装は機種依存。Ricomaの取説に「カスタム枠」相当の項目があるか確認を。
- カスタム枠を削除するには?
→ 視聴者提案として「上書きで新たなカスタム枠を作る」方法が共有されました。機種・バージョンで操作が異なる可能性があるため、取扱説明書の該当項を併読してください。
プロのコツ(再掲・まとめ)
- 紙面は“基準軸→輪郭→中心→角度印→距離”の順で段階的に。戻り作業を減らし精度を積み上げます。
- .txtはシンプルが最強。Type/Name/Form/ENDの4行を崩さない。
- 現場での最終盾はトレース。赤線(安全)と黒線(外周)の関係を体で覚える。
トラブルシューティング
- 取り込み不可:書式のスペース、引用符、カンマ位置、拡張子を点検。ファイル名は8文字以上か再確認。
- トレースで外へ出る:測定値(Form)が正しいか、座標が0かを再チェック。紙の中心点や分度器合わせにズレがないかを再測定。
- 角が引っかかる:Type 1の丸みの再現が不十分な可能性。角度刻みや距離の測り直しを。
最後に 動画のとおり、初回でも落ち着いて進めれば、赤いセーフティラインが頼もしい相棒になります。カスタム枠でも、安心して“攻める”デザインへ。なお、他社機の活用は各社マニュアルを優先してください(例:babylock 磁気 刺繍枠や磁気 刺繍枠 for babylock 刺繍ミシンなど)。
