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旋盤ねじ切りの基礎を整理する
ねじ切りは、工具形状(今回は60度)と送りの同期が命です。素材端面に小さな逃げ溝(アンダーカット)を用意しておけば、パス終端で工具を安全に止められます。シャフトは事前に仕上がり寸法まで外径を整え、芯出しのためにセンタードリルで下穴を用意しておくのが手堅い流れです。

プロのコツ - ねじを切る区間にエンジニアズブルー(マーカー)を塗っておくと、切削痕と未切削のコントラストが出て、誤りにすぐ気づけます。

注意
- この動画では個別のPPE(保護具)についての言及はありません。各自の環境に合わせて安全具を用意してください。
クイックチェック - 工具先端は60度のメートルねじ用。逃げ溝は隣接形状に当てない深さと幅が必要です。

編集部メモ:金工以外のハンドクラフトでも、作業の“治具化”は品質の近道。磁力で固定できる治具は、作業の安定に役立ちます(例:磁気 刺繍枠)。
高精度に向けた旋盤セットアップ
まずは回転数を低速域へ。ねじ切り操作の余裕を確保し、ハーフナット解除のタイミングを掴みやすくします。

ギアボックスの設定は、ピッチ表に従ってM14×1.5=BS6Wへ。送りねじはチャック側へ向かう右ねじ方向に設定します。

スレッドダイヤルは、1.5mmピッチに対して16Tのギアを装着。ダイヤルの1〜8の数字の任意の位置で半ナットを噛み合わせれば、常に同じ溝をトレースできます。

クイックチェック
- スピンドル:35–180RPMの低速レンジ
- ギアボックス:ピッチ表でBS6Wを選択
- スレッドダイヤル:16Tギア+“1〜8”どの数字でも可
現場あるあるの補足
- もし使用機にスレッドダイヤルが無い場合、半ナットを入れっぱなしにして逆転で戻す運用がコミュニティで語られます(本動画では非採用)。
編集部メモ:固定を素早く正確に——という観点では、他ジャンルでも似た思想が見られます(例:magnetic フレーム)。
実践プロセス:段階的に深さを出す
マーキングとデータム取り
ねじ区間にインクを塗り、工具を軽く当てて表面に細い傷をつけ、X軸の0点(データム)を決めます。ここが深さ管理の基準。ダイヤルは0でロック。


注意
- 工具を強く押しつけてはダメ。軽く擦る程度で“触った”ことを確認し、0点を確実に作る。
編集部メモ:治具の再現性が作業の再現性を生みます。別分野でも、位置合わせを簡便化する治具が成果を安定化します(例:刺繍枠 for 刺繍ミシン)。
スクラッチパス(試し切り)
手順はシンプル。主軸スタート→スレッドダイヤルの数字が所定範囲に来たらハーフナットを噛ませる→逃げ溝に入った瞬間にハーフナット解除。ごく浅い“筋”を入れて、ピッチが合っているかを確認します。

ピッチ確認 - 機械を止めてから、1.5mmのピッチゲージで“筋”に当てます。ここが合っていれば次へ。

注意
- 回転中にゲージを当てないこと。ハーフナットを入れたまま逆転させないこと(バックラッシュで別ピッチを刻む恐れ)。
複数パスで深さを積む
X軸で0.25mm(直径で0.5mm)ずつ工具を前進。手順は毎回同じ:スタート→数字待ち→噛む→切る→溝で離す→工具をXマイナスへ退避→始点へ戻す→深さを追加して繰り返し。深さが狙い値に近づくまで淡々と続けます。
プロのコツ
- 毎パス、手はハーフナットレバーに添えておく。解除の“予見動作”が安定を生む。
編集部メモ:繰り返し精度を担保するツール群は他分野にも。たとえばワーク固定の“面倒”を減らす発想は同じです(例:mighty hoop)。
その場でのトラブル対処と再開手順
ピッチ確認の徹底
スクラッチパスで合っていることが最優先。微妙にズレていれば、その後の全パスが無駄になります。動画でも“サニティチェック”が強調されます。
溝(アンダーカット)が浅かった!
ナットを試し掛けした結果、まだ深さが足りない。しかし逃げ溝が浅く、ねじ底に工具が触れ始めた——動画の実例です。

中級手法の強みはここ。半ナットを使っても、再同期が取りやすいので、ねじ切り工具を一旦外して通常のバイトに交換し、逃げ溝を掘り直せます。再装着後は“ゼロ切込み”の通しで工具がねじ谷に正しく追従することを視認してから、切込みを再開します。

プロのコツ
- 工具交換後の“ゼロカット”は必須。谷に吸い付くように走ればOK、食い込み痕が出たら位置を微調整。
編集部メモ:位置合わせの“通し確認”は、磁力保持のツールでも有効。ズレに敏感になれます(例:snap 刺繍枠)。
仕上げで差がつく最終プロセス
最終パスは軽く当てる程度で面(フランク)を整え、必要なら先端の僅かなバリをファイルで落とします。さらにエメリやスコッチブライトで工具痕をならし、ワイヤーブラシで溝の切粉を掻き出します。ここまでやって、最後にナットで通し確認。スムーズに掛かれば合格です。

注意
- 仕上げで力をかけすぎると、せっかく整えた面を荒らします。軽圧で短時間が基本。
編集部メモ:ワーク固定や当て物の工夫は、別ジャンルでも仕上げ品質に直結します(例:刺繍枠 master)。
なぜ“中級”手法がホビイストに向くのか
- 速さとリスクのバランス:初級(常時逆転往復)より速く、上級(コンパウンド角度送り)よりミスが出にくい。
- 柔軟性:途中で逃げ溝を掘り直すなど“寄り道”しても、スレッドダイヤル×半ナットで同じ溝に戻りやすい。
- 小径・短尺ワークに好適:動画のようなアクスル端部のねじには十分な精度と仕上がりが得られます。
コメントから:よくある疑問
- 「毎回同じ番号で噛む?」→1〜8のどれでも可(今回の1.5mmピッチの場合)。正しい番号帯にいれば再現します。
- 「スレッドダイヤルが無い」→半ナット入れっぱなし+逆転派も。今回の動画は採用せず。機械仕様次第なので各自の環境でテストを。
- 「コンパウンド29.5°は?」→上級手法として工具負荷や仕上げ面の利点を挙げる声も。今回は中級として“X軸管理”でシンプルに運用。
編集部メモ:作業再現性の“ショートカット”は分野横断。磁力保持のフレームや治具は、位置決めを平易にしてくれます(例:embroidery 磁気 刺繍枠)。
安全とチェックリスト(まとめ)
プリチェック
- 低速回転(例:35–180RPM)
- ピッチ表でギアボックス(BS6W)を再確認
- スレッドダイヤルのギアは16T
- 逃げ溝を事前に確保
やってはいけない
- 回転中にピッチゲージを当てる
- 半ナット係合のまま逆転して戻る
仕上げ前の最終確認
- ナットが抵抗なく掛かるか
- 工具痕・バリ・切粉の残留がないか
クイックチェック(失敗例の予防)
- ねじ深さ不足→パスを少しずつ追加し、ナットで都度当たりを見る
- 溝浅すぎ→通常バイトで掘り直し→ゼロカットで整合確認
編集部メモ:繰り返し段取りの省力化には、分野を問わず磁力ベースの治具も便利(例:mighty hoops)。
補遺:動画で触れられた具体値(参考)
- ねじ:M14×1.5(60°)
- スピンドル速度:35–180RPM(低速)
- ギアボックス:BS6W(ピッチ表による)
- スレッドダイヤル:16Tギア、1〜8の任意の数字で噛み合わせ可能
- 切込み:1パス0.25mm(直径で0.5mm)を目安
この先の上達のために
- ハーフナットの“入・切”を溝手前で確実に決める練習
- 毎パスのルーティン化(数字待ち→噛む→解除→退避→戻し→切込み)
- スクラッチパス→ピッチゲージ確認の徹底
編集部メモ:位置決めや固定の“確かさ”は、どのクラフトでも品質の核。磁力で押さえる系の治具も、発想は同じです(例:磁気 刺繍枠 embroidery)。
