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Embrilliance Essentialsでテンプレートを印刷する
刺繍を販売している(またはこれから販売したい)場合、「サンプル」は単なる試し縫いではなく、作業条件を固定するための“製造用プロトタイプ”です。きれいなサンプル写真は購入前の不安を減らし、問い合わせの往復を減らします。さらに重要なのは、同じ品質を繰り返し出せる設定になっていることを証明できる点です。
動画でMeganが最初にやっているのは、Embrilliance Essentialsからデザインテンプレートを印刷すること。初心者には遠回りに見えますが、現場目線では品質管理そのものです。ポイントは両面印刷で、表は色の参照用に完成イメージ(原寸)、裏には27ステップ(色替え/工程)の一覧が出ます。この一覧が“レシピカード”になり、次の色を確認するために毎回ソフトを開き直す手間を減らせます。

何を印刷する?(なぜ重要?)
- 表(見た目の参照): これがサイズ確認の地図です。衣類やサンプル布に重ねて、デザインが大きすぎない/小さすぎないを事前に判断できます。
- 裏(工程リスト): 動画では27ステップの一覧が出ています。途中で作業が止まっても、この紙があれば「どこまで進んだか」「次は何色か」をすぐ復帰できます。


現場メモ(ショップ運用向け)
生地色やアップリケ布の組み合わせが複数ある場合は、バリエーションごとにテンプレートを1枚ずつ保管しておくと、疲れているときでも判断ミスが減ります。
「道具か、スキルか」チェック: 27ステップの一覧を見て「単針で27回も色替えするのがつらい」と感じたら、一度立ち止まって作業配分を見直してください。
- 兆候: 縫う時間より糸替えの時間が長い。
- 目安: 1日の刺繍稼働が2時間を超える/10点以上の連続生産が増えてきた。
- 考え方: このボトルネックは多針刺繍機で解消しやすい領域です(色替えの手間が減り、段取りが安定します)。
HeatnBond Liteでアップリケ布を下準備する
アップリケは見栄えが良く付加価値も出ますが、サンプルが崩れやすい工程でもあります。よくある失敗は、縁が波打つ/中心がボコボコする/洗濯でほつれやすい、など。動画での対策はシンプルで、アップリケ布の裏側にHeatnBond Liteを貼ってから刺繍することです。

手順:HeatnBond Liteの貼り込み(アップリケ準備)
- 触って見分ける: HeatnBond Liteのザラザラした面が糊面です(細かい紙やすりのような触感)。
- 貼る: アップリケ布の裏面にアイロンで貼り付けます。
- 切る: デザインに必要な形にカットします(動画では「数字の3」のパーツに言及)。
なぜパッカリング(波打ち)が減るのか
刺繍は針が何千回も生地を貫通し、糸が締まることで生地が引っ張られます。
- 補強なし: アップリケ布が柔らかいと、サテン縫い等で内側に引き込まれて波打ちやすくなります。
- HeatnBondあり: 布がしっかりして、糸の引き込みに抵抗できるため、フラットに保ちやすくなります。
- 触感チェック: 冷めた後、紙のように“しっかり感”が出ているのが理想です。

注意(見落としがちな失敗)
糊面を間違えると、意図しない面に糊が出て作業がやりにくくなります。また、貼りが弱いと縫製中の動きでアップリケが浮きやすくなり、糸絡みの原因になります。
サンプル布を14x14にする理由
この動画では、実際のシャツを枠張りするのではなく、サンプル用の布(スワッチ)で作っています。Etsy用に写真サンプルを増やしたい場合、無地ボディを消費せずに見本を作れるので合理的です。
動画ではサンプル布を14 x 14インチにカットしています。

14x14インチにするメリット
- 余白が取れる: 8x9の枠に対して周囲に余裕が出ます。
- 扱いやすい: 枠の外側を持ってシワを逃がしやすく、枠張りが安定します。
- 枠跡(枠跡=枠圧のリング)を気にしなくてよい: サンプル布なら枠跡が残っても商品にならないため割り切れます。
補足:サンプルは“簡単に見える”
四角い布は、縫い目・ファスナー・重み(重力)などの邪魔がありません。実物衣類に移行すると難易度が上がる前提で、枠張りの基準作りに使うのがコツです。
Odif 505とカットアウェイ・スタビライザーの使い方
ここがサンプルの仕上がりを左右します。動画では、カットアウェイ・スタビライザーを10 x 12インチで用意し、Odif 505(仮止めスプレー)でサンプル布を貼り付けています。

手順:布をスタビライザーに仮固定する
- Odif 505を振る: 動画では缶を振ってから使っています。
- スタビライザーに薄く吹く: 吹くのは布ではなくスタビライザー側。強く吹きすぎず、軽いミストで十分です。
- 14x14の布を中央に置く: できるだけセンターに合わせます。
- 手でならす: 中央から外へ空気を逃がすように押さえ、浮き・シワを消します。



チェックポイント:触って確認
スプレー後のスタビライザーは、軽く“ペタッ”とする程度が目安です。ベタつきが強い/湿っている感じがある場合は吹きすぎの可能性があります。
スタビライザー選びの考え方(この動画の前提)
動画ではカットアウェイを使って、サンプルをフラットに安定させています。Tシャツ系のように伸びやすい素材を想定する場合、カットアウェイのほうが形が崩れにくく、写真用サンプルとしても面が整いやすい、という狙いです。
段取り改善の方向性
布とスタビライザーをまっすぐ合わせるのが難しく、ロゴがわずかに傾く場合は、位置合わせの基準線を作ってから貼ると安定します。
hooping station
mighty hoop 8x9 マグネット刺繍枠での枠張り手順
ここが動画の中心です。Meganは8 x 9インチのMighty Hoop(マグネット刺繍枠)を使っています。マグネット刺繍枠は、リングをねじで締めて摩擦で固定するタイプとは違い、磁力で上下から挟み込んで固定します。


手順:マグネット刺繍枠の枠張り
- 下枠を置く: 下側の枠をテーブルに置きます。
- サンドする: 布+スタビライザーを重ねた状態で下枠の上に置きます。
- 目視確認(重要): スタビライザー(10x12)は布(14x14)より小さいため、枠の内側全面をスタビライザーが確実にカバーしているかを確認します。枠内にスタビライザーが足りないと、その部分はすぐに波打ちやすくなります。
- 上枠の向きを合わせる: 動画では、注意ラベルが上向きになる向きで合わせています。
- はめ込む: 磁力で「パチン」と固定されるので、位置を合わせたらしっかりはめます。

チェックポイント(省略しない)
- 音の確認: 均一にしっかり固定されると、はっきりした音で閉じます。鈍い音の場合は、どこかにシワや異物が噛んでいる可能性があります。
- 張りの確認: 中央を軽く叩いて、たるみがないか確認します(引っ張りすぎて伸ばすのではなく、フラットに張るイメージ)。

仕上がりの目安
持ち上げたときに、スタビライザーが四辺でしっかり挟み込まれている状態が理想です。

注意:挟み込み(指詰め)
マグネット刺繍枠は強い力で閉じます。
* 指を枠の間に入れないようにし、上枠は外周を持って操作します。
* はさみ・針・ピンセットなど金属工具は磁力で引き寄せられることがあるため、枠の近くに置かないでください。
注意:磁力の取り扱い
強力な磁石のため、医療機器や磁気カード等への影響に配慮し、近づけないようにします。
補足:マグネット枠が枠張りを安定させやすい理由
ねじ式の枠は、押し込みながら横方向に生地を引っ張りやすく、ニットなどは歪みが出やすくなります。マグネット刺繍枠は上下から挟むため、生地をフラットに保った状態で固定しやすく、枠張りの再現性が上がります。
はじめに
この手順を見ている目的は、無地ボディを無駄にせず、パッカリング(波打ち)に悩まされず、写真に耐えるサンプルを“同じ条件で”作れるようにすることです。
動画ベースの流れで学べること:
- 27ステップの工程表を使って、色替えの迷いを減らす。
- HeatnBond Liteでアップリケ布を安定させ、浮き・シワを抑える。
- Odif 505+カットアウェイの仮固定で、面をフラットに保つ。
- マグネット刺繍枠で、安全かつ歪みの少ない枠張りを行う。
一度きりの「作品作り」ではなく、同じ品質を繰り返す「作業手順」に落とし込むのがゴールです。
準備
ミシンに触る前に、段取りで勝負が決まります。刺繍は準備の粗がそのまま仕上がりに出ます。
動画で使用している材料
- ソフト: Embrilliance Essentials
- 副資材: HeatnBond Lite、カットアウェイ・スタビライザー(10x12インチ)、Odif 505
- 生地: アップリケ布(ピンクのギンガム)、サンプル用ベース布(白)
- 道具: Mighty Hoop 8x9
準備時の確認(枠張り前に見るポイント)
- スタビライザーのサイズ: 10x12が枠内を確実に覆う配置になっているか。
- マグネット枠の向き: 注意ラベルが上向きで合っているか。
- 仮固定の量: スプレーは薄く、貼り付け後にシワや空気が残っていないか。
準備チェックリスト
- テンプレート: 両面印刷できている(表=見た目、裏=27ステップ)
- 副資材:
- HeatnBond Liteをアップリケ布の裏に貼った
- スタビライザーにOdif 505を薄く吹いた
- 布を中央からならしてフラットにした
- 安全:
- 金属工具をマグネット枠の近くに置いていない
セットアップ
セットアップは“位置合わせ”です。最初にズレると、最後までズレます。
セットアップ手順
- ミスト: スタビライザーにOdif 505を薄く吹く。
- 貼る: 14x14の布を中央に置き、手でならす。
- 下枠: 下側の枠を安定した場所に置く。
- 配置: 布+スタビライザーを下枠の上に置く。
セットアップのチェックポイント
- スタビライザーのカバー範囲: 枠の内側全面を確実に覆っているか。
- シワの噛み込み: 枠が閉じるラインにシワが入っていないか。
セットアップチェックリスト
- 貼り合わせがフラット(浮き・気泡なし)
- 枠内のスタビライザーが100%確保できている
- 上枠の向き(注意ラベル上向き)が正しい
枠張り操作
マグネット刺繍枠は、迷いがあると位置が跳ねて噛み込みやすくなります。合わせたら、しっかり閉じるのがコツです。
枠張りの動作
- 合わせる: 上枠を狙った位置に合わせる。
- 向き確認: 注意ラベルが上向きであることを確認する。
- 閉じる: 磁力で固定されるので、確実に閉じる。
操作チェックポイント
- 外周の確認: 外側から見て、布が一部だけ噛み込んでいないか。
- 軽い引き確認: 枠外の布端を軽く引いて、滑らないか確認する。
操作チェックリスト
- しっかり閉じた音がした
- 中央がたるんでいない
- 枠のラインにシワが噛んでいない
品質チェック
縫い始める前に、最後の監査をします。
縫い開始前チェック
- 枠内の支持: 枠内にスタビライザーが入っていない領域がないか。
- フラットさ: 布面が均一にフラットか(局所的な引っ張り・たるみがないか)。
トラブルシューティング
この手順で起きやすい症状を、原因→確認→対処の順でまとめます。
| 症状 | ありがちな原因 | 確認ポイント | 対処 |
|---|---|---|---|
| パッカリング(縫い周りが波打つ) | スタビライザー不足/枠内でカバーできていない | 枠内全面がスタビライザーで覆えているか | 予防: カットアウェイ+薄いミストで仮固定し、枠内カバーを最優先で確認する |
| アップリケが浮く | HeatnBond Liteの貼りが弱い | アップリケ布が“しっかり感”になっているか | 対処: HeatnBond Liteを裏面に貼ってから工程に入る |
| 針周りがベタつく | スプレーの吹きすぎ | スタビライザーが湿っている/ベタつきが強い | 予防: 薄いミストにする(吹きすぎない) |
| 枠跡 | 枠の圧が強い | 取り外し後にリング状の跡が残る | サンプルでは割り切り、実物衣類では枠選定・枠張り条件を見直す |
まとめ(仕上がりを揃えるための順番)
この順番(27ステップの工程表→HeatnBondでアップリケ安定→Odif 505+カットアウェイで面を作る→マグネット刺繍枠で枠内カバーを確認して枠張り)を守ることで、仕上がりを乱す要因を減らし、写真用サンプルを安定して作りやすくなります。
Etsy販売では、この“同じ見た目を繰り返せること”が商品力になります。
