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ノルディックスター・マグラグに必要な材料
このプロジェクトは、刺繍機でノルディックスターのアップリケを縫い、裏布を付けて外周をステッチで仕上げる「マグラグ」(キャンドルマットにも使える)です。小さな作品ですが、枠張りの精度とサテン縫い(サテンステッチ)の“かぶせ”を学ぶのに最適な「ミニ実験台」になります。

ここで身につくこと(つまずきやすいポイント)
アップリケの生地端を隠すサテンの縁取り、ブロックを小さく切り過ぎない安全なスクエア出し、一定の縫い代で裏布を縫い合わせる方法、返し口から表に返して角をシャープに出すコツを扱います。
途中で、初心者が特に悩みやすい「小物刺繍の品質を落とす2大原因」も押さえます。
- 端のかぶり不足(サテン幅が細い/トリミングが甘くて端が出る=“ヒゲ”が残る)。
- 歪み・波打ち(枠のテンション、スタビライザー選び、バッティングの厚みで押しつぶされる影響)。
動画で使用・言及されている材料
- 表布: 白いコットン生地(目の詰まったキルト綿布が扱いやすい)。
- アップリケ布: 赤いコットン生地(あらかじめアイロンで整える)。
- キルト綿(バッティング): ポリエステル綿(中厚)※動画では手持ちを使用。フラットにしたい場合は薄手の綿や接着フリースも選択肢。
- スタビライザー: No Show Mesh(ポリメッシュ)— 作品を硬くし過ぎにくく、波打ち抑制に有効。
- 糸: 40番相当のポリエステル刺繍糸(星=赤、仕上げの外周=白)。
- 消耗品: スレッドネット(縫い始めのテンション乱れ対策として使用)。
- 接着(任意): Wonder Under/HeatnBond Lite(アップリケ布を仮固定して切りやすくする目的で言及)。
動画で使用・言及されている道具
- 刺繍機: 多針刺繍機(Brother PR系・6針の例)。
- 縫製: 家庭用ミシン(直線縫い)。
- 裁断: ロータリーカッター+カッティングマット。
- 定規: Omnigridのキルティング定規(12.5インチ定規で最初のトリミング)。
- 角出し: 箸(チョップスティック)またはポイントターナー。
- ハサミ: ハサミ(動画では通常のハサミも使用)。
事前チェック(やり直しを減らすための段取り)
動画の主題は工程ですが、アップリケをきれいに見せるには、以下の“段取り”が効きます。
- 糸の出だし確認: 縫い始め1分で乱れが出やすいので、スタート直後は特に観察する(動画でも縫い始めにテンション乱れが発生)。
- スタビライザーの向き・重ね順: 表布/バッティング/No Show Meshの順が崩れると、波打ちやズレの原因になる。
- アイロン環境: 返し後のプレスで外周が一気に“製品っぽく”なる。
注意: ロータリーカッターと刺繍針は、静かに危険です。刃の進行方向に指を入れない/カットの合間は刃を戻す(ロックする)。刺繍中は針周りに手を近づけないでください。
Step 1: 刺繍機でアップリケを縫う
白いコットンをベースに、No Show Mesh(ポリメッシュ)で支え、バッティングを重ねた状態でノルディックスターのアップリケを縫います。

手順
- レイヤーを重ねる:上から「白い表布」→「バッティング」→「No Show Mesh(ポリメッシュ)」の順。
- チェックポイント: 厚みがあるので、枠を閉じる前にネジをいつもより緩めておき、無理に押し込まない。
- 配置線(プレースメント)を縫う:赤いアップリケ布を置く位置のガイド。
- 仮止め(タックダウン)を縫う:配置線にかぶせて赤布を置き、仮止め線を縫う。
- アップリケ布をトリミング:枠を機械から外す(ただし生地を枠から外さない)。縫い線ギリギリまで、縫い糸を切らないように赤布を切り落とす。
- 現場のコツ: 目標は縫い線から1〜2mm以内。余りが大きいとサテンでかぶり切らず、端が出やすくなります。
- サテンの縁取りを縫う:枠を戻して仕上げのサテンを縫います。動画の8x12サイズではサテン幅が4mmで、トリミング端を覆える前提です。

チェックポイント(縫っている最中に見るところ)
- 見た目: サテンが“詰まって”均一に見えること。スカスカに見える/糸が細く見える場合は、テンションや速度、糸供給を疑います。
- かぶり: 赤布の端がサテンの外に出ていないこと(端が出ると一気に素人っぽく見えます)。
- 動き: 生地がバタつく/浮く感じが出たら一旦止め、枠のテンションや重ね順を見直します。
仕上がりの目安
- 左右対称で、サテンの縁が途切れずきれいなノルディックスター。
- 端の飛び出しや余計な糸が少ない。
- 表布+バッティング+スタビライザーが一体になって扱いやすい。
ほつれ・“生地端後悔”を減らすコツ
- 接着の活用: 動画で Wonder Under/HeatnBond の使用が言及されています。アップリケ布の裏に貼っておくと、切った瞬間のほつれが出にくく、位置も安定します。
brother 刺繍ミシン 8x12 刺繍枠 付き のような多針環境で回す場合、縫い始めの1分は特に注意して観察してください。動画でも、最初にテンションの乱れが出ています。

枠張りの“物理”メモ(小さな歪みが目立つ理由)
アップリケのサテンは密度が高く、縫い方向の力で生地を引っ張ります。枠を強く張り過ぎて生地目が伸びると、枠から外した後に戻ってシワや引きつれが出やすくなります。逆に緩いと、縫いズレや波打ちが出ます。
対策: 目標は「ニュートラル」。ピンと平らでも、生地目(織り目)が歪まない張り具合にします。ミシン刺繍 用 枠固定台 を使うと、外枠を固定したまま内枠を均一に押し込めるため、毎回の再現性が上がります。

Step 2: スクエア出しとトリミング
刺繍後のブロックは厚みと凹凸があり、わずかに歪みやすい状態です。定規とロータリーカッターで“きっちり四角”に戻します。

動画のやり方(合理的な理由)
- 最初は 12.5インチ定規で扱いやすいサイズにトリミング。
- その後「少し大きい」と判断し、アップリケ先端から約1インチ外側が残るように再カットして、最終的に約9.5インチ程度に。
小物は取り返しがつかないので、最初は大きめに切って、あとで詰めるのが安全です。

トリミング手順
- ならす: カット前に、軽く整えて平らにします(サテンを潰し過ぎないように)。
- 位置合わせ: 星の中心が、狙う正方形の中心に来るように定規を合わせます。
- 押さえ: 利き手と逆の手で定規をしっかり押さえます。
- カット: 定規に沿ってロータリーカッターを一定圧で走らせます。
- 見直し: 余白が四辺で揃っているか、星が中央に見えるかを確認します。

チェックポイント
- 角が90°で出ていること(マットのグリッドも併用)。
- バッティングも表布と同じラインで切れていること。
仕上がりの目安
- 約9.5インチのきれいな正方形。
注意:切り過ぎトラップ
星の先端に近づけ過ぎると、次工程の1/4インチ縫い代の余裕がなくなります。 量産する場合は、刺繍ミシン 用 枠入れ の精度を上げて“いつも同じ位置”に刺繍できるようにすると、裁断を先に規格化しやすくなります。
Step 3: 裏布を縫い付ける
家庭用ミシンで、刺繍面と裏布を縫い合わせて袋状にします。

重ね方
- 重ね: 裏布(柄面を下)と刺繍面(柄面を上)を中表で重ねます。
- 縫う: 外周を1/4インチ縫い代で一周縫います。
- 返し口: 片側に返し口を残し、返すときにほどけないよう返し縫いで補強します(動画でも返し縫いで強度を確保)。

角をきれいに作るコツ
角に近づいたら速度を落とし、針を生地に刺したまま止めて押さえを上げ、90°回して続けます。小さな正方形は角のブレが目立ちます。
動画の対処:縫い始めのテンション乱れ
動画では縫い始めにテンションの乱れが出ましたが、スレッドネットを付けて改善しています。 理由: 糸がスプールから一気に落ちて絡むのを抑え、糸供給を安定させます。
brother pr 680w クラスの多針運用でも、滑りやすい糸にはスレッドネットを常用するのは定番の対策です。
Step 4: 返しと外周ステッチで仕上げる
ここで“ギフト品質”に近づきます。ポイントは、角と縫い代のかさを減らしてフラットにすることです。
4A) 縫い代と角をカット
- 余分を落とす: 端の余り(裏布・バッティング)を整理して薄くします。
- 角を落とす: 角を斜めにカットして厚みを減らします。重要: 縫い目のすぐ近く(1〜2mm)まで寄せるが、糸は切らない。


理由: 角は層が重なって最も厚くなります。ここを落とさないと、返しても角が丸く膨らみます。
4B) 表に返す
返し口から手を入れ、奥の角をつかんで引き出します。最初はシワっぽく見えますが正常です。

4C) 角をシャープに出す(生地を突き破らない)
動画では、最初ハサミを使おうとしてから、箸で角を押し出しています。 現場のコツ: 先の尖ったハサミは避け、箸やポイントターナーで内側から少しずつ押して角を出します。

4D) プレスして外周ステッチ
返したら、縫い目を指で転がすように整えて、裏布が表に回り込まないようにしてからアイロンで押さえます。 最後に外周ギリギリを直線でステッチして、返し口を閉じつつ“額縁”のように見せます。
動画では、外周ステッチを白糸に変更しています。表側で縫い目が目立ちにくく、見た目が安定します。

仕上げ基準(プロっぽく見えるチェック)
- フラットさ: 机に置いて反り返らない。
- 返し口: どこから返したか分かりにくい。
- 波打ち: 波打つ場合は、外周ステッチが詰まり過ぎている可能性があるので、縫い目を少し長めにするのも手です。
アップリケのよくあるトラブル対策
動画で実際に出ている内容を中心に、すぐ判断できる形に整理します。
| 症状 | 主な原因 | すぐできる対処 | 予防 |
|---|---|---|---|
| 縫い始めのテンション乱れ(糸が乱れる) | 糸がスプールから落ち過ぎる/供給が不安定 | スプールにスレッドネットを付ける | スタート前に糸道を確認し、最初の数十秒は目視する |
| 角が丸い/ゴロつく | 内側の厚みが残っている | 箸で角を押し出す。必要なら角の内側をもう少し落とす | 角は縫い目ギリギリまで斜めにカットする |
| アップリケ端が出る(端が見える) | トリミングが甘い/サテン幅が足りない | まずは次回からトリミングを縫い線ギリギリに寄せる | 8x12サイズでサテン幅4mmのように、端を覆える設計を選ぶ |
| 枠跡(テカり・跡) | 通常枠の圧迫・摩擦 | 軽くスチームで整える | 厚物や多層は、圧迫が少ない枠を検討する |
注意: マグネット刺繍枠 brother 用 のようなマグネット式は強力な磁力を使います。指を挟まないよう、引き剥がすのではなく“スライドして外す”のが基本です。
Prep
次の1枚を作る前に、失敗を減らすための判断軸をまとめます。
スタビライザー+バッティングの選び方(シンプル版)
- フラットに仕上げたい?(厚み少なめ)
- はい: No Show Mesh+薄手のバッティング(または接着フリース)。
- いいえ(ふっくら): No Show Mesh+厚めのポリ綿。※枠張りが難しく、角も厚くなりやすい。
- 表布は安定した織りのコットン?
- はい: 通常の枠張りで進めやすい。
- いいえ(伸びやすい/繊細): 枠張り前に補強を検討(ただし動画内では詳細説明はありません)。
- サテン後に波打つ?
- はい: 枠の張り過ぎ/緩過ぎの可能性。標準枠で安定しない場合、ミシン刺繍用 刺繍枠 のように保持力の違う枠を検討するのも一案です。
枠張りがボトルネックになったときの考え方
枠ズレや跡に悩む場合、デザインよりも枠張り工程が原因のことが多いです。
- レベル1: 手持ちの樹脂枠でOK。重ね順と張り具合を一定にする。
- レベル2: アップリケ頻度が高いなら、brother 用 マグネット刺繍枠 のようなマグネット枠で作業性が上がる場合があります。
- レベル3: 販売や量産なら、hoopmaster 枠固定台 のような治具で位置合わせの再現性を上げる。
事前チェックリスト
- 材料: 白い表布、赤いアップリケ布、裏布、バッティング、No Show Mesh。
- 糸: アップリケ用(赤)、仕上げ用(白)。
- 道具: ハサミ、ロータリーカッター、定規、マット。
- 安全: 滑りやすい糸にはスレッドネット。
- アイロン: すぐ使える状態。
Setup
枠張りセットアップ(生地とケンカしない)
- 目合わせ: 生地目(地の目)を枠に対してまっすぐに。曲がると、スクエアに切っても見た目がねじれやすい。
- 厚み対策: 表布+バッティングは厚いので、ネジをしっかり緩めてから内枠を入れる。
- 無理をしない: 力任せに押し込むと枠を痛めます。厚物では マグネット刺繍枠 のように“押し込む”のではなく“上から保持する”方式が向く場合があります。
スタート前チェック
- デザインの向きと枠サイズ(8x12等)が合っている。
- サテン幅(動画では4mm)が、トリミング端を覆える前提になっている。
- 枠がアームに確実に装着されている。
- 糸道が正しく、針周りに異常がない。
- アップリケ布の端材を置く場所を決めている。
Operation
全体の流れ(枠からテーブルまで)
- 刺繍: 配置線→タックダウン→トリミング→サテンで仕上げ。
- 裁断: 枠から外してスクエアに整え、約9.5インチ(または先端から約1インチ外側)に。
- 縫製: 中表で裏布を縫い付け、1/4インチ縫い代、返し口を残す。
- 整形: 余分を落として角をカットし、表に返す。
- 仕上げ: 角を出してプレスし、外周ステッチ。
仕上がりチェック(品質確認)
- サテン: スカスカがない/端が出ていない。
- 形: 正方形が保てている。
- 角: 丸く膨らまず、四角く見える。
- 外周: ステッチが端と平行で安定している。
- 見た目: 余計な糸や目立つ乱れが残っていない。
複数枚作る場合の効率メモ
複数作ると、時間を食うのは縫製よりも枠張りと裁断になりがちです。その場合、マグネット刺繍枠 brother 用 を使うと、重ねた素材の保持が楽になり、作業負担が下がることがあります。
Results
赤いサテンのノルディックスターが白地に映える、実用的で飾れるマグラグ(キャンドルマット)が完成します。約9.5インチにスクエアで整え、裏布を付けて外周をステッチで締めることで、反りにくく、見た目もすっきり。
次の1枚をさらに“売り物っぽく”するなら、意識する変数はこの3つです。
- 枠の張り具合をニュートラルに(歪みを出さない)。
- トリミング精度(縫い線ギリギリまで)。
- 角の厚み管理(返す前にしっかり落とす)。
小さな作品でこの感覚が身につくと、ジャケットやキルトのような大物でも仕上がりが安定します。
