目次
パフィーフォーム入りキータグに必要な材料
ビニールのキータグは一見シンプルですが、実際は「サンドイッチ構造」をミシンに通す作業です。ビニール+スタビライザー+フォーム+ビニール+金具という段差と摩擦のある積層を、通常の押さえで安定して縫わせる必要があります。うまくいくかどうかはセンスよりも、摩擦・高さ・層の位置合わせを管理できるかで決まります。

動画で使用しているもの(実演と同一)
- ミシン: Husqvarna Viking の単針刺繍機(古めの Topaz 20。自動糸切りなし)。
- 刺繍枠: 120×120 の標準枠。
- スタビライザー: カットアウェイ(切り残しタイプ)。
- 表材: グレーのビニール。
- 裏材: 白のビニール。
- フォーム: Sulky Puffy Foam 3mm(2mm のクラフトフォームとも比較)。
- 糸色(画面で確認できる範囲): 茶・赤・黒・白。
- テープ: テーピング(画面ではテープで固定)。
- 熱ツール: Marvy Uchida のエンボスヒートツール(フォーム端の仕上げに使用)。
- 仕上げ道具: はさみ、穴あけ(タブ部分)。
- 金具: キーリング、9mm の両面カシメ(ダブルキャップリベット)(ポスト長はおおよそ 9〜10mm)。

見落としがちな消耗品&事前チェック(現場基準)
ここが抜けると失敗率が一気に上がります。最低限、次を「作業前に揃っている状態」にしておくと安定します。
- ピンセット: フォームの毛羽(小さな残り)をつまむのに便利(動画でも使用)。
- フェルト端材: 押さえの引っかかり対策の“かさ上げ”に使う(動画の重要ポイント)。
- 上面に敷くもの(必要時): 動画内で代替案として、トレーシングペーパーや水溶性スタビライザーを上に置いて滑りを良くする方法が言及されています。
ツールを見直すタイミング(枠張りがつらい時)
厚物を標準枠で扱うと、固定が難しかったり、圧迫で枠跡が出たりして作業が不安定になります。
- 起きがちな負担: 厚みのある素材を無理に押し込み、固定に時間がかかる/縫製中に段差で引っかかる。
- 選択肢: 頻繁にビニールを扱うなら、マグネット刺繍枠の導入を検討する価値があります(素材を強く潰さずに保持しやすい)。
- 調べる時のキーワード例: husqvarna viking 用 マグネット刺繍枠
注意(マグネットの取り扱い): 工業用のマグネットは吸着力が強いものがあります。挟み込み部に指を入れないこと。ペースメーカー等の医療機器を使用している場合は、強力磁石に近づきすぎないよう配慮してください。

手順1:刺繍枠の準備と配置縫い(位置合わせの保険)
ここがズレ防止の核心です。初心者がやりがちなのが「最初からビニールを枠に固定して配置縫いを走らせる」ことですが、動画の意図は逆です。配置縫いはスタビライザーに先に入れるのが正解です。
動画は、いわゆる“浮かせ(フローティング)”の考え方で進みます。

なぜこの順番が重要か
配置縫いは「地図」です。スタビライザー上に境界線を作ってから、その線に合わせてビニールをテープで固定します。これを飛ばして目見当で置くと、最後の外周(ビーンズテッチ)が素材から外れやすくなります。
- ビニール上で配置縫い→ テープ固定中に 1〜2mm 動く → 外周がはみ出す
- スタビライザーに配置縫い→ スタビライザーは枠内で安定 → その上にビニールを固定 → 相対ズレが起きにくい

手順(動画の流れに合わせて)
- スタビライザーを枠張り: カットアウェイを 120×120 枠にセット。
- ミシンにセット: 下糸(ボビン糸)の残量を確認。
- 縫い#1(配置縫い): 最初の配置線を、スタビライザーの上に直接縫う。
チェックポイント: 配置線がくっきり見え、指でなぞっても段差が少ない状態。
準備チェック(手順1の終わり)
- 配置縫いはスタビライザー上に出ている(ビニールの上ではない)
- テープをすぐ使えるようにしてある
- フォームは対象範囲を十分覆える大きさに切ってある
注意: ミシン稼働中は針周りに手や道具を近づけないでください。フォームは押さえに引っかかりやすく、無意識に触りたくなりますが、停止してから調整します。
手順2:表ビニールの固定→内側デザイン→フォーム縫い
ここからが組み立て工程です。ポイントは「先に内側を縫ってからフォームを入れる」こと。

2A)表ビニールを置いて、内側デザインを縫う
- 位置合わせ: グレーのビニールを配置線の上にかぶせる。
- 固定: テープでしっかり押さえる。
- 内側を先に縫う: 動画では、フォーム部分の前に“うんち+ハエ”の要素を先に縫っています。

チェックポイント: 縫っている最中にビニールが前方で波打つ/めくれそうになる場合は、固定不足の可能性があります(テープの押さえを増やす)。
2B)パフィーフォームを置く(配置縫いが無い前提で合わせる)
動画で明言されている重要点:フォーム用の配置縫いはありません。 円の範囲を目視で覆うように置きます。
- 置く: 赤の 3mm フォームを円の上にかぶせる。
- 裏の位置を確認: 少しめくって、円の範囲が十分覆えているか確認。
- テープ固定: 端をテープで留め、押さえに巻き込まれないようにする。
- 記号を縫う: 赤糸で「進入禁止」マーク(円+斜線)のサテンを縫う。


補足(仕上がりを安定させるコツ:色合わせ)
動画の作者のコツとして、糸色とフォーム色を合わせることが推奨されています。フォームの微細な残りが出ても目立ちにくくなります。
もし 刺繍ミシン 用 枠入れ の制約(厚物でのズレやすさ)にまだ慣れていない場合でも、色合わせは即効性のある“見た目の保険”になります。
手順3:フォームの除去と、毛羽(残りカス)の熱処理
ここで一気に完成度が変わります。狙いは「ちぎり跡をきれいに見せる」ことです。
3A)余分なフォームをちぎって除去
- 押さえる: ビニール側を手で軽く押さえる。
- はがす: フォームシートをゆっくり引く。

チェックポイント: 正しく縫えていれば、動画のように“スッ”と裂けて、ハサミで切り込む必要はほぼありません。
3B)毛羽(フォームの小さな残り)を確認
サテンの端に小さな“毛”が残ることがあります。これは動画でも確認されています。

3C)熱で毛羽を整える(当てすぎ厳禁)
動画では Marvy Uchida のエンボスヒートツールを使用しています。重要なのは、近づけすぎない/止めないこと。
- 加熱: ツールを入れる。
- 距離: 刺繍面から少し離して当てる。
- 動かす: 一点に当て続けず、常に動かす。
- 確認: 毛羽が縮んで目立たなくなったら止める。

注意: 熱を近づけすぎたり長く当てると、フォームが溶けすぎて縮む/丸まる可能性があります(動画内で注意喚起あり)。
手順4:裏ビニールの追加と、単針機の「引っかかり」対策
裏を貼ると一気に厚みが増え、押さえが段差に当たってドラッグ(引きずり)が起きやすくなります。動画はここを“フェルトでならす”方法で解決しています。
4A)裏ビニールを貼る
- 枠を裏返す: 刺繍枠を外して裏面を上にする。
- 置く: 白ビニールを裏側に当てる(動画では「表面が上」になる向きで貼っています)。
- 固定: テープで留める。
4B)フェルト端材で段差をならす(動画の重要ハック)
作者は、刺繍枠のコネクタ側ではない方の縁にフェルト端材をテープで貼り、押さえが水平に近い姿勢で動けるようにしています。

ドラッグ対策の判断フロー
- 押さえが段差に当たって“コツコツ”する?
- はい: フェルト端材で高さをならす(手順4B)。
- いいえ: 次へ。
- ビニールに押さえが貼り付く/滑らない?
- はい: 動画で代替案として言及のある、トレーシングペーパーまたは水溶性スタビライザーを上に敷いて滑りを改善。
- いいえ: 次へ。
- 量産(同じものを何十個も)する?
- はい: テープ+フェルトの都度対応は手間が増えます。保持方法の見直しとして マグネット刺繍枠 のような選択肢を検討。
手順5:外周(ビーンズテッチ)→切り出し→金具取り付け
5A)最終外周(ビーンズテッチ)を縫う
動画では、全層をまとめて外周を縫い、キータグを“封止”しています。

チェックポイント: 針落ちが配置線にきちんと戻っていること。ズレて見える場合は、固定(テープ)や工程順の見直しが必要です。
5B)切り出し
枠から外し、外周の縫い目に沿ってはさみで切ります。

5C)金具の取り付け(カシメ+キーリング)
- 穴あけ: タブ部分に穴を開ける。
- カシメ: 9mm の両面カシメを通す。
- キーリング: リング金具を通してからカシメを留める。
作業完了チェック(手順5の終わり)
- フォームの毛羽は熱処理で目立たなくなっている
- 裏ビニールがしっかり固定され、縫いズレがない
- ビニール表面に強い引きずり傷がない
- カシメが確実に固定されている
2mm と 3mm:どちらのフォームが良い?
動画の比較では、見た目の差は想像より大きくありません。

- 見た目: 2mm と 3mm の差は“劇的”ではない。
- 触った感じ: 3mm の方が硬さと立体感が出やすい。
トラブルシューティング(症状 → 原因 → すぐ効く対処 → 根本対策)
| 症状 | ありがちな原因 | すぐ効く対処 | 根本対策 |
|---|---|---|---|
| 押さえがビニールに引っかかる/ドラッグする | 単針機で段差・摩擦が出やすい | 動画の方法:刺繍枠の縁(コネクタ側ではない方)にフェルト端材を貼って高さをならす/上にトレーシングペーパーや水溶性スタビライザーを敷く | 保持方法の見直し(例:husqvarna viking 用 マグネット刺繍枠) |
| フォームの毛羽が残る | ちぎり後の微細な残り | 動画の方法:ヒートツールで短時間・距離を取って溶かし込む | 糸色とフォーム色を合わせる(動画のコツ) |
| 外周がズレる | 配置縫いを素材上でやってしまう/固定が甘い | 配置縫いはスタビライザーに先に入れ、そこへビニールをテープ固定する | 工程順を固定して再現性を上げる |
補足:機材について(コメントで多い質問)
動画の作者は Husqvarna Viking の古い単針機(Topaz 20)を使用しています。単針機でビニールが扱いにくいのは珍しいことではなく、押さえ周りのクリアランスや滑りの問題が出やすい構造です。
仕上がりとまとめ
動画と同じ順番で、「スタビライザーに配置→表ビニール→内側→フォーム→除去→熱処理→裏ビニール→ビーンズテッチ」を守ると、作業が“勘”ではなく再現可能な手順になります。
完成品は、立体感のある「Do Not」マークがしっかり盛り上がり、外周がきれいに閉じた硬めのキータグになります。単発でも量産でも、厚物は“物理”で勝ちます。固定・段差・摩擦の3点を先に潰してから縫うのが最短ルートです。
また、保持や枠張りのストレスを減らしたい場合は、husqvarna 刺繍枠 や 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 といった選択肢を調べると、厚物向けの運用に近づけます。
