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Kimberbellデザインを「縮小」ではなく「編集」する理由
「Sweet Land of Liberty」のブロックを処理して、キルティングファイルを合成した途端にサイズ表示が6x10刺繍枠の上限をわずかに超える——この状況、珍しくありません。特に動画内では、Sweet Landブロック/Flagブロック/Cakeブロックが、キルティングを入れるとほんの少しだけ大きくなってしまう点が示されています。
ここでやりがちなのが、デザイン全体を「縮小(スケール)」する方法です。いったん止めましょう。
動画の核はとても実務的で、仕上がりも崩しにくい考え方です。つまり、デザイン全体を縮小するのではなく、枠外にはみ出す原因になっている工程(機能的な“準備縫い”)だけを取り除きます。具体的には、サイズを押し広げている 生地の配置線(placement line) と タックダウン線(tack-down line) を削除します。これで、装飾ステッチ自体は触らずに、外形(バウンディング)が6x10の安全域に戻ります。
この記事でできるようになること
- 合成の考え方: キルティングとブロックデザインを破綻させずに重ねる手順
- 原因箇所の特定: サイズ超過を起こす工程(配置線/タックダウン)を見つける
- 必要最小限の編集: “削るべきところだけ”削って枠内に収める
- Flagブロック例外: 6x10では一部を通常のピースワークで補う流れ
- 固定の実務: タックダウン無しで生地を動かさない(テープ/グルー)

必要なソフトとファイル
動画では DIME Perfect Embroidery Pro を使っていますが、考え方自体は「合成(Merge)」「工程(シーケンス)表示」「削除」ができる刺繍ソフトなら共通です。
事前に用意するもの
ファイル(動画内で扱っているもの):
- Kimberbell「Sweet Land of Liberty」デザインファイル
- Kimberbellのキルティングデザインファイル(例:「Wavy 4」「Patriotic 3」など)
機材・道具:
- 刺繍ソフトが入ったPC
- 6x10刺繍枠対応の刺繍ミシン
- 消耗品:Kimberbellのペーパーテープ、Sewlineのグルーペン
- 下準備:No-Show Meshスタビライザー(薄くてかさばりにくいタイプ)
- 生地/キルト綿:プロジェクトの裁断指示に準拠

事前チェック(ここが曖昧だと“原因不明の失敗”になりやすい)
刺繍は「縫う前の段取り」で結果が決まります。ソフトを開く前に、最低限ここだけは押さえておくとロスが減ります。
- 固定手段の準備: 今回はタックダウンを削除するため、固定はテープかグルーで代替します。作業台に出しておきます。
- ファイル形式の確認: 機種がPES/DST/EXP/JEFなど、どれを読むかを先に確認します。
- 最終サイズ確認の癖づけ: 編集後は必ずソフト上部(サイズ表示)で幅・高さを見てから保存します。
注意: データ編集で“枠内サイズ”は解決できますが、タックダウンを消すと物理的なズレリスクが上がります。縫製中は手を枠の近くに置きがちなので、稼働中に針下へ手を入れないようにしてください。
準備チェックリスト(ソフトを開く前)
- 向き確認: キルティングファイルが縦向き/横向きのどちらか、枠の向きと一致している
- 機種形式: 保存形式(例:Brother系ならPESなど)を把握している
- 固定計画: タックダウン無しで固定するため、テープまたはグルーを用意した

6x10に収める編集手順(ステップ形式)
ポイントは「アートを縮小しないで、外形を押し広げている工程だけを外す」ことです。

Step 1 — キルティングファイルを開き、まずサイズを確認する
目的: 現状がどれだけ上限を超えているかを把握します。
手順:
- DIME Perfect Embroidery Pro を起動します。
- Kimberbellのキルティングデザインを開きます(枠の向きに合わせて縦版/横版を選択)。
- 画面上部のサイズ表示(幅/高さ)を確認します。
動画内の例: サイズが 6.51 x 6.51インチ と表示され、6x10枠には大きすぎることが分かります。
つまずき: 縦向きが必要なのに横向きファイルを開いてしまう。 対処: すぐ閉じて、正しい向きのファイルを開き直します。

Step 2 — ブロックデザインをキルティングに合成(Merge)する
目的: キルティング背景の上に、装飾ブロックを重ねた状態を作ります。
手順:
- File > Merge を選びます。
- Sweet Land of Libertyのフォルダへ移動します。
- 対象ブロックのデザインを選択します。
- 両方のデータが作業画面の中心に揃っているか確認します。
チェックポイント: キルティングの線(背景)+ブロックの装飾が重なって見える状態になっていること。

Step 3 — サイズ超過の原因工程(配置線/タックダウン)を特定する
目的: どの工程が外形を押し広げているかを“工程番号で”押さえます。
動画では、原因が Step 3 と Step 4 だと明確に示されています。内容は一般的に次の2つです。
- Step 3: 生地の配置線(どこに置くかのガイド)
- Step 4: タックダウン線(生地をスタビライザーに仮固定する縫い)
補足: これらは“仕上がりの見た目”というより“作業を楽にするための準備縫い”です。ここが少し大きめに設計されていると、6x10の上限を超えやすくなります。

Step 4 — 配置線とタックダウンを削除し、外側に残った迷子ステッチも掃除する
目的: アートは触らず、外形(バウンディング)だけを小さくします。
手順:
- 工程一覧(シーケンス表示)を開きます。
- Step 3(配置線) を選んで削除します。
- Step 4(タックダウン) を選んで削除します。
- 画面を引いて確認し、外側にポツンと残る小さな手動ステッチ/飛びステッチがあれば削除します(これが残ると外形が大きいままになります)。
成功判定: 上部のサイズ表示をもう一度確認します。
動画内の結果: 6.02(W)x 6.24(H)インチ まで下がり、6x10枠に収まる見込みになります。
なぜこれで収まるのか(現場的な理解)
配置線・タックダウンは“縫うための段取り”であり、装飾ステッチそのものではありません。ここを外すと、デザイン外形は装飾側の端に寄るため、枠内に戻りやすくなります。その代わり、次章のとおり生地固定を手動で補う必要があります。

Step 5 — 機種に合う形式で「別名保存」する
目的: 元データを残しつつ、編集済みデータを刺繍機で読める形にします。
手順:
- File > Save As を選びます。
- 機種に合った形式で保存します(例:Brother系ならPESなど)。動画では PES v9 で保存しています。
- ファイル名に
_6x10_EDITEDのような区別を付けます。
チェックポイント: 保存前に、サイズ表示が6x10枠の範囲内に収まっていることを再確認します。

Step 6 — Cakeなど他の“少し大きいブロック”も同じ手順で処理する
Cakeブロックなども流れは同じです。
- キルティングを開く
- ブロックデザインを合成
- 配置線/タックダウンを削除
- サイズ確認
- 別名保存

ソフト編集フェーズの最終チェックリスト
- キルティングファイルの向きが枠と一致している
- 合成後、中心位置がズレていない
- Step 3/Step 4(配置線/タックダウン)を削除した
- 外側に残った小さな迷子ステッチが無い
- 上部のサイズ表示が6x10枠の範囲内
- 元データを上書きせず、別名で保存した
Flagブロックの扱い(6x10では例外)
Flagブロックは幅方向の都合で、6x10ユーザーはフルのITH(枠内完結のピースワーク)としては進めにくい、と動画で説明されています。
対応方針: ピースワーク(縫い合わせ)は通常のミシン作業で行い、刺繍機はキルティング用途として使います。

動画のFlagブロック手順(6x10向け)
目的: 構造(縫い合わせ)は通常縫製、質感(キルティング)は刺繍機で入れる。
手順:
- 6x10用のキルティングファイルのみを開きます。
- ピースワーク用の説明(PDF等)を印刷します。
- スタビライザーに印を付ける: 1/4インチの縫い代目安の枠をスタビライザー上に書きます。
- 仮固定: グルーペンで、印の内側に収まるようにピース済みブロックを貼り付けます。
- キルティングデータを縫います。
タックダウン無しで生地を固定する(重要)
今回の編集は、ミシンが本来持っている「仮止め機能(タックダウン)」を意図的に外します。つまり、固定の品質がそのまま仕上がり精度になります。
固定方法は大きく2つです。

方法A — Kimberbellペーパーテープで押さえる
やり方: 生地/キルト綿の重ねを所定位置に置き、四隅+必要に応じて辺の途中も、スタビライザー側へテープでしっかり固定します。
利点: 剥がしやすく、作業が早い。
注意: 針がテープに当たると、針や糸に影響が出ることがあります。縫い経路にかからない位置取りを意識します。
方法B — グルーペンで“縫い代の内側”だけを固定する
動画では Sewlineのグルーペン が推奨されています。
やり方: 背景布の1/4インチ縫い代の内側に薄く塗り、スタビライザーへ押さえて貼ります。
利点: 角だけでなく辺全体が止まりやすく、キルティングで中央が浮きにくい。
注意: 塗る位置が外側に寄ると、縫い経路に干渉しやすくなります。

判断の目安(タックダウン無し固定の選び方)
START: スタビライザーを張った枠に、生地/キルト綿をセットする。
- Flagのピース済みブロックですか?
- はい: 印に合わせる精度が必要なので、グルーペンで固定します。
- いいえ: 次へ。
- 固定が不安ですか?
- はい: テープで四隅+辺も追加で押さえます。
- いいえ: 作業性優先で、テープまたはグルーのどちらかを選びます。
道具で改善するルート(枠跡・ズレ対策)
タックダウンを消すと、固定不良によるズレが目立ちやすくなります。標準枠はネジ締めでテンションを作るため、枠跡や歪みが出ることもあります。
- 対策案: マグネット刺繍枠は周囲を均一に押さえやすく、固定の再現性が上がります。
注意(マグネットの取り扱い): マグネット刺繍枠は吸着力が強く、指を挟む危険があります。外すときは“持ち上げる”より“滑らせて外す”動作を意識してください。
刺繍機用に保存する(形式と互換の確認)
刺繍データは「読める形式で保存」できて初めて現場で使えます。

形式・互換チェック
- 形式: 機種が対応する形式で保存します(例:Brother系はPESなど)。
- バージョン: 動画では PES v9 で保存しています。もし刺繍機側で表示されない場合は、機種が対応する別バージョンでの保存を検討します。
縫う前の品質チェック(ソフト側/機械側)
- サイズ再確認: 保存前後で、幅・高さが6x10枠の範囲内かを確認します。
- 試しトレース: 刺繍機のトレース機能等がある場合、縫い始める前に動作範囲を確認します。

縫製前チェックリスト(実機セットアップ)
- 生地がテープまたはグルーで確実に固定されている(軽く引いて動かない)
- 枠が確実にセットされている(浮き・ガタつきがない)
- 最初の縫い出しを観察し、波打ちやズレがあれば止めて再セットする
トラブルシューティング(症状 → 原因 → 対処)
1) 症状: 刺繍機で「大きすぎる」等のエラーが出る/保存できない
- 原因: 配置線・タックダウンを消しても、外側に小さな迷子ステッチが残っている
- 対処: ソフトで外周を引いて確認し、外側の単独ステッチを削除してから再度サイズ確認
2) 症状: キルティング中に中央が波打つ/浮く
- 原因: タックダウン無しで、固定が端だけになっている
- 対処: テープの追加固定、またはグルーの塗布位置を見直し(縫い代内側に)
3) 症状: キルティングとブロックの位置が合わない
- 原因: 合成時に中心がズレている
- 対処: 合成後に中心位置が揃っているか確認してから保存
4) 症状: 針や糸にベタつきが出る/糸切れが増える
- 原因: テープやグルーが縫い経路に近すぎる
- 対処: 固定位置を縫い代内側に寄せ、縫い経路から離す
まとめ(動画の方法で得られる結果)
この方法の良いところは、デザイン全体を縮小せずに、問題の工程だけを外して枠内に収められる点です。
- 収まり: 6.51インチ相当の表示から、編集後は 6.02(W)x 6.24(H) まで下げられる
- 安定: タックダウンを消す代わりに、テープ/グルーで固定品質を作る
- 再現性: Cakeなど他ブロックにも同じ手順を横展開できる
