FSL「イースタン・タイガー・スワローテイル」蝶を刺繍する:ドラム張りの枠張り、上糸/下糸合わせ、きれいに溶かして仕上げる手順

· EmbroideryHoop
この実践ガイドでは、フリースタンディングレース(FSL)の「イースタン・タイガー・スワローテイル」蝶を、準備から仕上げまで一連の流れで解説します。メッシュタイプの水溶性スタビライザーを正しく選び、2枚重ねでドラム張りに枠張りし、土台グリッド→色替えを上糸/下糸(ボビン糸)を揃えて進行。最後に、余分なスタビライザーのカット、ぬるま湯での溶解、拭き取り乾燥、形出しまで行い、展示に耐えるクオリティに仕上げます。あわせて、FSLで起きやすい失敗(溶けない・タオルに貼り付く・糸端が目立つ・歪む)と回避策もまとめます。
【著作権声明】

学習目的のコメントのみ。 このページは元の作者(制作者)の作品に対する学習メモ/解説です。権利はすべて原作者に帰属します。再アップロードや転載は禁止配布は行いません。

可能であれば、元動画を作者のチャンネルで視聴し、チャンネル登録で次のチュートリアルを応援してください。1クリックが、より分かりやすい手順解説・撮影品質の改善・実践テストの継続につながります。下の「登録」ボタンから支援できます。

著作権者の方で、修正・出典追記・一部削除などのご希望がある場合は、サイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。速やかに対応します。

目次

FSL(フリースタンディングレース)に必要な材料

フリースタンディングレース(FSL)は、マシン刺繍の中でも「糸だけで形を成立させる」ジャンルです。布地に支えられる通常刺繍と違い、スタビライザー上に“骨格(基礎構造)”を作り、洗い落とし後も重力と取り扱いに耐える必要があります。

本記事では「イースタン・タイガー・スワローテイル」蝶のFSLデザインを作ります。デザインサイズは 高さ3.91インチ × 幅5.13インチ、ステッチ数は 20,000針強。実演はBrotherの単針機で、6x6 Brother枠を使用(標準の5x7 Brother枠にも入るサイズ)です。

Rhonda holding up the finished yellow and black FSL butterfly close to the camera.
Introduction showing the final result.

用意するもの(必須セット)

動画の仕上がりを再現するために、材料はできるだけ同条件で揃えるのが近道です。

  • 下地(基材): メッシュタイプの水溶性スタビライザー。薄い布のような質感の「ウォッシュアウェイ(洗い落とし)」タイプを使います。
  • 枚数: 2枚重ね(動画でも2層で枠張りしています)。
  • 機材: Brother 刺繍ミシン6x6 または 5x7 のBrother刺繍枠
  • 上糸: 40wtポリエステル刺繍糸
  • 下糸(ボビン糸): 上糸と同系色のポリエステル糸。FSLは裏面も見えるため、白ボビン固定だと仕上がりが崩れます。色替えごとにボビンも合わせます(黒→黄→青→赤)。
  • 道具: カーブ刺繍はさみ(際カット用)、ピンセット
  • 溶解・仕上げ: ぬるま湯を入れるボウル、清潔なタオル
Close up of the roll of mesh stabilizer with a label reading 'WASH AWAY STABILIZER'.
Identifying materials.

事前に揃えておくと詰まらないもの(忘れがちチェック)

作業中に「取りに行く」ことが、FSLでは糸絡みやズレの原因になります。最低限、次を手元に置いてから開始します。

  • ボビンの予備: 土台(黒)の途中でボビン切れすると、やり直しになりやすい工程です。
  • 作業スペース: 枠の付け外し・糸替えが多いので、枠を置ける平面を確保します。
  • 水回りの段取り: ボウルで溶かすか、シンクで流すかを先に決めておきます(動画ではどちらも触れています)。

FSLを台無しにする「素材取り違え」

動画で強調されている落とし穴がこれです。水溶性メッシュは、見た目がポリメッシュ(カットアウェイ)に似ています。

  • 起きること: きれいに縫えたのに、水に浸けてもスタビライザーが溶けず、レースになりません。
  • 対策: ロールのラベルを必ず確認し、保管場所も「洗い落とし専用」で分けると事故が減ります。

ドラム張りの枠張りが重要な理由

通常刺繍では布が糸を支えますが、FSLでは スタビライザーが布の役割です。ここがたるむと、土台グリッドがズレたり、密度の高い工程で引っ張られて形が崩れたりします。

FSLの合言葉は「ドラム張り」。ただ“強く張る”だけでなく、縫っている間も張りが維持される状態を目標にします。

Hands using scissors to cut a sheet of stabilizer over a cutting mat.
Cutting stabilizer.

なぜ2枚重ねなのか/「ドラム張り」の判断基準

動画ではスタビライザーを折って 2層にしています。薄いメッシュを2枚にすることで、針が刺さるときの支持が増え、20,000針超の密度でも安定しやすくなります。

ドラム張りの簡易チェック(現場向け)

  1. 触感: 枠中央を指で軽く押して、ほとんど沈まない。
  2. 音: 爪で軽く叩いて、張った音がする(鈍い音なら張り不足)。
  3. 見た目: 枠の内側に波打ち・ゆるみがない。

量産や連続作業では、枠張りの再現性が品質と歩留まりを左右します。外枠を水平に固定できる 刺繍 枠固定台 を使うと、スタビライザーのズレや斜め押し込みが減り、張りを作りやすくなります。

Hands pressing the inner hoop ring into the outer ring over the stabilizer.
Hooping process.

枠張りがボトルネックになったときの改善ルート

標準枠では、滑りやすいメッシュを均一に張るのに手が疲れたり、縫製中に緩んで「抜け・ズレ」が起きたりします。

見直しのサイン

  • ネジを何度も締め直している
  • 数枚で手首が痛くなる
  • 縫っている途中で張りが落ちる

改善の段階

  • レベル1(手順): ネジ締め後、外周を軽く引きながら最終締めして張りを作る。
  • レベル2(道具): マグネット刺繍枠へ。マグネットで面圧を均一にかけて固定できるため、滑りやすい水溶性メッシュでも張りが作りやすくなります。この用途では マグネット刺繍枠 brother 用 のように対応機種向けの枠を選ぶと、段取りが安定します。

注意: マグネットの安全。マグネット刺繍枠は挟み込み力が強い工具です。クランプ部に指を入れないでください。医療用インプラントを使用している場合は、磁石を安全距離で扱ってください。

手順:縫製(ステッチアウト)

ここからは動画の流れを、作業として実行しやすい形に分解します。実演では速度 600針/分で進行しています。

Step 1 — スタビライザーをカットして2枚重ねにする

  1. 展開: メッシュタイプの水溶性スタビライザーを必要量引き出します。
  2. 2層化: 半分に折って2枚になるサイズでカットします。
  3. 余白: 枠の外側に持ち代が出るように、十分な大きさで準備します。
The hoop loaded onto the embroidery machine arm with the presser foot raised.
Machine setup.

Step 2 — ドラム張りで枠張りする

  1. 準備: 外枠のネジをしっかり緩めます(2枚重ねは厚みが出ます)。
  2. 配置: 2層のメッシュを外枠の上に置きます。
  3. はめ込み: 内枠を押し込み、均一に座っているか確認します。
  4. 締め込み: ネジを締め、外周を軽く引きながら張りを作ります。最後に「ドラム張りチェック(触感・音・見た目)」で確認します。
Machine stitching the black foundation grid of the butterfly wing.
Stitching process.

Step 3 — ミシン設定と土台(基礎グリッド)を縫う

  • 糸: 上糸に 40wt黒ポリエステル、下糸(ボビン)も 黒で合わせる
  • 速度: 動画は 600針/分

ここが重要:土台グリッド 最初に縫われる格子状のステッチが、FSLの骨格になります。ここが途切れたり、張り不足で波打つと、溶解後に形が保てません。

Butterfly design partially filled with black stitching, outline visible.
Stitching progress.

Step 4 — 色替え(上糸+ボビン)と、糸端の処理

デザインは色替えで進みます(例:黄→青→赤)。動画では、色ごとに上糸だけでなくボビンも交換し、表裏の見え方を揃えています。

糸端(タイイン/タイアウト)の処理

  • 色替えのたびに、裏側に糸端が残ることがあります。FSLは裏も見えるため、可能なら色替えごとに糸端をカットして、巻き込みを減らします。

チェックポイント:

  • 色替え後に枠を裏返して、糸端が目立つ場合はその場で整えます。完成後は修正が難しくなります。
Machine stitching the yellow fill into the butterfly wings.
Adding color layers.

作業チェックリスト(この章の終わり)

  • 張り確認: 土台工程中もドラム張りが維持できている
  • 速度: 600針/分で運用できている
  • 土台の健全性: 黒のグリッドが途切れず、ヨレていない
  • ボビン合わせ: 色替えごとにボビンも上糸と同系色に交換している
  • 糸処理: 糸端・飛び糸を都度カットしている

運用メモ: 単針機では色替え+ボビン交換が手間になります。学習には Brother 刺繍ミシン が扱いやすい一方、作業の段取り(枠の付け外しや再セット)を詰めるなら、枠側の改善として brother 5x7 マグネット刺繍枠 のような選択肢が効いてきます。

スタビライザーを正しく溶かす

縫い終わったら「化学(溶解)」工程です。スタビライザーを落としつつ、形が崩れないように扱います。

Step 5 — 枠から外して、余分なスタビライザーをカット

  1. 取り外し: 枠をミシンから外し、作品を枠から外します。
  2. 粗カット: まず大きな余白を落とします。
  3. 際カット: 蝶の周囲は、縫い目を切らないように少し余白を残してカットします(動画でも「近すぎないように」と注意しています)。
Close up of the blue detail spots being stitched on the lower wings.
Detail stitching.
The nearly complete butterfly with yellow, blue, and black threads visible.
Final stitching stages.

Step 6 — ぬるま湯で溶かす

動画では ガラスボウルのぬるま湯に浸けています。通常はシンクで、食品用の水切り(ストレーナー)を使って流す方法も紹介されています。

  • 水温: ぬるま湯(熱湯ではなく、冷水より溶けやすい温度)。
  • 方法: 浸けて、必要に応じてピンセットでやさしく動かし、溶解を促します。
  • 目安: 白い縁(スタビライザー)が消えていくのが見えたら、溶け残りがないか確認します。
Hands removing the sheet of stabilizer from the hoop frame.
Unhooping.

実務向け:FSLのスタビライザー選定(簡易判断)

  • これはFSL(フリースタンディングレース)か?
    • YES: 水溶性メッシュを 2枚重ね(動画の方法)。
    • NO: 生地に応じて、ちぎり・カットなど別のスタビライザーを選ぶ。
  • 枠張りで張りが作れない/滑る?
  • 溶かした後に形が弱い?
    • 確認: 土台グリッドが途切れていないか/縫製中にスタビライザーが破れていないか。

乾燥と形出し(立体感を作る)

Step 7 — 拭き取り→形出し→乾燥

濡れている状態は、糸の“彫刻”ができるタイミングです。

  1. 拭き取り: タオルの上に置き、タオルを重ねて押さえ、余分な水分を吸い取ります(こすらない)。
  2. 形出し: 触角や羽を指で整え、乾くまでの形を決めます。
  3. 乾燥: そのまま置いて乾かします。濡れていると色が濃く見えますが、乾くと少し明るく見えることがあります(動画で言及)。
Using scissors to trim the excess stabilizer around the butterfly shape.
Trimming.
The trimmed butterfly floating in a clear glass bowl of water.
Dissolving stabilizer.

注意:タオルに貼り付く問題

動画のトラブル例です。

チェックポイント: 触ったときにベタつく/糸が“のり”っぽい感触がある場合、スタビライザーが十分に流せていない可能性があります。そのままタオルの上で乾かすと、タオルに貼り付くことがあります。

  • 対処: もう一度ぬるま湯で軽くすすぎ、乾かすときは「置き乾燥」ではなく、まず拭き取り(ブロッティング)を優先します。

FSL作品の見せ方(展示アイデア)

動画で紹介されている、見栄えの良い使い方は次の2つです。

  1. フローティングフレーム: 透明シートで挟み、宙に浮いたように見せる。表裏が同じようにきれいだと、完成度が上がります。
  2. リース装飾: リースに留めて立体的に配置する。
Folding a towel over the wet butterfly to blot it dry.
Drying process.

仕上がりを“作品”に見せるコツ

  • 持ち方: つまむなら羽先ではなく、密度の高い胴体側を持つと変形しにくい。

注意: はさみ作業の安全。際カットは刃先が見えにくい角度になりがちです。指を作品の裏側に回し込まないようにし、少しずつ切り進めます。

Primer

このガイドでは、FSLの「イースタン・タイガー・スワローテイル」蝶を安定して仕上げるために、水溶性メッシュ2枚重ねドラム張りの枠張り、そして上糸/下糸(ボビン糸)の色合わせという要点を軸に、縫製から溶解・乾燥・形出しまでを一連で整理しました。

単針機(例:Brother 刺繍ミシン)でのFSLは、縫う前の段取りが品質を決めます。準備が整っていれば、仕上がりは安定します。

Prep

ミシンを動かす前に、作業台を片付け、必要物を手の届く範囲に揃えます。FSLは途中修正が効きにくいので、最初の準備が重要です。

忘れがちな準備チェック

  • ボビン準備: 土台(黒)用のボビン量は十分か。
  • 水の段取り: ボウルで浸けるか、シンクで流すかを決めているか。
  • 道具配置: はさみ・ピンセットがすぐ取れる位置にあるか。

Prep Checklist(この章の終わり)

  • 材料確認: スタビライザーが 水溶性メッシュである
  • 枚数: 2枚重ねにできるサイズでカット済み
  • 糸の段取り: 上糸と、色に合わせたボビンを順番に用意
  • 道具: はさみ・ピンセット・タオル・ぬるま湯の準備ができている

Setup

枠とミシンのセットアップ

  • 枠: 6x6 または 5x7
  • 枠張り: 水溶性メッシュを2枚重ねで枠張りし、ドラム張りを確認。
  • ミシン: 糸をセットし、速度は 600針/分で運用。
  • 安全: キャリッジの可動範囲に物がないか確認。

現場メモ: 水溶性メッシュは滑りやすく、標準枠だと中央がわずかに落ちやすいことがあります。枠側の改善として マグネット刺繍枠 のようなクランプ方式は、張りを作りやすい選択肢になります。

Operation

ステッチアウトを進める

  1. 土台: 黒の土台グリッドを縫う → いったん状態確認。
  2. 色1(黄): 上糸交換 → ボビン交換 → 縫う。
  3. 糸処理: 糸端をカット。
  4. 色2(青): 上糸交換 → ボビン交換 → 縫う。
  5. 糸処理: 糸端をカット。
  6. 色3(赤): 上糸交換 → ボビン交換 → 縫う。

量を作る場合、ボビン交換回数が作業時間に直結します。効率化の観点では 刺繍ミシン 用 マグネット刺繍枠 のような段取り改善の考え方が役立ちます。

Quality Checks

洗い前チェック:

  • 張り: スタビライザーがまだドラム張りを保っている
  • 土台: グリッドが途切れず、浮き・ヨレがない
  • 裏面: 白いボビン糸が目立たず、表裏の見え方が揃っている

洗い後チェック:

  • 手触り: 形が保てる硬さがある
  • 残留: べたつきが強く残っていない(必要なら追加すすぎ)

Troubleshooting

1) スタビライザーが溶けない/レースにならない

  • 症状: 浸けてもシート状の下地が残る。
  • 原因: 水溶性メッシュではなく、ポリメッシュ(カットアウェイ)を使っている可能性。
  • 対策: 次回はロールのラベルで確認し、取り違えを防ぎます。

2) 乾燥中にタオルへ貼り付く

  • 症状: 持ち上げるとタオルの毛足に絡む。
  • 原因: スタビライザーの流し不足で、表面が粘りやすい。
  • 対策: ぬるま湯で追加すすぎ→置き乾燥より先に拭き取り(ブロッティング)。

3) 裏面に糸端が目立つ/仕上げが荒い

  • 症状: 裏側に糸端が残って見える。
  • 原因: 色替え時の糸端処理が不足。
  • 対策: 色替えごとに糸端をカットし、巻き込みを減らします。

4) 歪み・羽が分離しそうに見える

  • 症状: 形が波打つ、部分的にズレたように見える。
  • 原因: 枠張りが甘く、縫製中にスタビライザーが動いた可能性。
  • 対策: 次回はドラム張りを強化。滑りやすい素材では マグネット刺繍枠 のような固定力の高い枠が有効な場合があります。

Results

FSLの要点である ドラム張り水溶性メッシュ2枚重ね上糸/下糸(ボビン糸)の色合わせを守ることで、洗い落とし後も形が崩れにくく、表裏どちらから見ても美しい蝶に仕上がります。

仕上がりの差は、技術だけでなく段取りと道具でも出ます。まずは正しい枠張りと糸運用を固め、必要に応じて枠や作業環境を最適化していくのが、安定生産への近道です。