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動画を見る:「How to Thread a Singer Touch & Sew 640 Sewing Machine」(YouTube)
古いSingerを目覚めさせる第一歩は、正しい上糸かけから。たった数分で、640が本来の縫い心地を取り戻します。押え金の位置、テンションディスク、チェックバネ、そして天びん。ここを外さなければ、縫い目は見違えるほど安定します。

学べること
- 糸コマの置き方と押え金の正しい位置
- 最初のガイドからテンションディスク、チェックバネ、天びんまでのルート
- テンションディスクへ糸を“間”に入れる確実な手技
- 天びん位置の合わせ方とSinger機でのホイール回転方向
- 針の向きとフロント→バックの糸通し
はじめに:糸コマと押え金の準備 最初の一手はとてもシンプル。糸コマ(コットンリール)をスプールホルダーに差し込み、コマ蓋(スプールキャップ)で固定します。これでたるみや横ブレを防ぎ、糸送りが安定します。

押え金は“必ず”上に。押えが下がるとテンションディスクが閉じ、糸が間に入らず外れたまま進んでしまいます。上糸かけ中は上げたまま、これが最重要の下準備です。

プロのコツ
- 糸コマは軽く回して抵抗感をチェック。引っかかりがあれば向きやキャップの締めを見直します。
- 始める前に周囲を片づけ、糸道が見える角度にマシンを配置するとミスが激減します。
最初の糸ガイドをたどる まずはトップのプラスチックガイドへ糸を通します。糸が引っかからずスムーズに流れることを確認しましょう。

続いて小さな円形ガイドの溝に糸を掛けます。外側に乗っているだけではダメ。しっかり溝に“収める”感覚がポイントです。

さらに下の円形ガイドを回り、糸をテンション側へ導きます。ここまでのルートで糸がフリーに動くかを都度チェックしてください。

注意
- ガイドに糸が半掛かりだと、後工程でテンション不良や糸抜けの原因に。違和感があれば戻って入れ直しましょう。
テンションディスクとチェックバネを極める テンションユニット直前のブラケットに糸を通します。これは前室のような役割で、ここを素通りするとディスクへの入りが不安定になります。

ディスクに入れるときは“押え金が上”であることを再確認。銀色の2枚のディスクの“間”に、時計回りに糸を落とし入れて反対側へ抜きます。外枠ではなく、あくまで内側のディスク同士の隙間です。

ここは視認が難しいので、工具や爪先で“銀色の2枚”を指し示しながら確認すると確実。糸が外枠にかかっているだけではテンションがかかりません。

最後に時計回りの経路で正しく回っているかをチェックします。違う向きに回すと、テンションが狂いやすく、縫い始めで糸が踊りがちです。

次はチェックバネ。小さなフックに糸を掛けるため、いったんバネを軽くどかし、糸をフックに回してから指を離して戻します。これで縫い始めの糸だまりが抑えられ、針上下動に合わせた糸取り回しが整います。

クイックチェック
- 糸は“ディスク間”に入っているか?(外枠ではない)
- 押え金は“上”になっているか?
- チェックバネのフックに確実に掛かっているか?
テイクアップレバーを通す 天びん(テイクアップレバー)は最上点で通します。もし途中の位置なら、バランスホイールを自分側へ回して最上点に。Singer機は基本的に“手前回し”です(他ブランドは取説で確認)。

レバーの穴(もしくはスリット)に糸を通します。糸の走行がまっすぐで、引いたときに引っかかりがないかを確認しましょう。

針へ向かう最終ガイド 天びんから下へ降りる途中の小ガイドに糸を“ポン”と通します。ここを飛ばすと糸が針棒周りで暴れ、縫い目が落ち着きません。

次は針棒直上のガイド。両手で糸を持ってスロットに差し込み、糸道を一直線に整えます。ここに入ると縫い始めの安定感が段違いです。

そしてニードルクランプの上にある最後のガイド。これは針穴直前の最終アンカーで、ここを外すと縫い中に糸が抜けやすくなります。

針に通す:フロントからバックへ この機種は“前から後ろへ”通すフロントスレッドタイプ。針を装着する際は、平らな面(フラット側)を必ず“後ろ”へ向けます。これで溝と糸の関係が正しくなり、糸調子の安定に直結します。

針穴へ糸を通したら、上糸かけは完了。押え金を下げればテンションディスクが糸を挟み、縫いの準備が整います。

プロのコツ
- 針の向きはトラブルの元。迷ったら一度抜いて装着をやり直し、フラット側が後ろか再確認。
- テンションディスクへ入れる瞬間は、糸をピンと張り気味に。張力があるほうが“間”にコトンと落ちやすい。
- 糸番手や素材が変わると引き感が変化。上糸を軽く引いて“スムーズに動くが抵抗はある”状態を体で覚えましょう。
トラブル対処
- 縫いを止めても数針走る:Singer 640は針を上に戻すため1〜2針動くのは“正常”。それ以上に走るならフットコントローラーの不具合の可能性あり(動画コメントでも指摘)。
- 縫い目がゆるい/バタつく:押え金を下ろし忘れていないか、糸がディスク“間”に入っているか、チェックバネに掛けられているかを再点検。
- 糸がすぐ抜ける:ニードルクランプ上の最終ガイドを通し忘れていないか、針前後方向が正しいかを確認。
注意
- バランスホイールの回転方向はブランドで異なります。Singerは“手前回し”が基本。他機種は必ず取説を参照。
- 押え金を下ろした状態でディスクに糸を入れようとすると、無理にこすれて毛羽立ちや切れの原因になります。
関連メモ(刺しゅう好きの方へ) 本記事は直線縫いの上糸かけ解説ですが、刺しゅう用途ならフープ周りの整備も品質を大きく左右します。例えば、布留めや生地移動の少なさを求めるなら、磁気 刺繍枠のような選択肢を研究してみるのも一案。導入時は刺しゅう初心者向けの解説“刺繍ミシン for beginners”で基礎を押さえておくと安心です。
また、フープの着脱効率や安定度を高めたい場合、mighty hoopのような方式や、その大型版・変形サイズの取り回しも検討の余地があります。縫製前の段取りに余裕が生まれ、テスト縫いにリソースを割けます。
厚地や多層素材では、フレームの磁着力やたわみ対策が効いてきます。既存環境に据え置くなら、magnetic フレームの互換性と、作業台との干渉を事前にチェックしましょう。
作業ステーションの整備は習熟コストを下げます。配置ガイドや定規類を組み合わせられるhoopmasterは位置決めの再現性が高く、量産でも威力を発揮します。
さらに、刺しゅうの多工程化に合わせて、magnetic hooping stationのような補助台を導入すれば、段取り替え時間を短縮しつつ、連続生産の歩留まりを改善できます。
消耗品や周辺機器の情報収集には、北米圏でも流通のあるdime 磁気 刺繍枠のレビューや互換リストが参考になります。各社の規格差を確認し、実機と運用に合う構成を選びましょう。
最後に、製品名での検索もしやすい総称としてsnap 刺繍枠があります。呼称は多様ですが、固定力・段取り・生地ダメージの3点で比較すると、用途に合う最適解が見つかりやすくなります。
コメントから
- “停止後に数針走る”という声には、1〜2針の追従は正常範囲だが、長く走るならフットコントローラーの交換検討というアドバイスが寄せられました。
- “テンションディスクのどこを通すか”は、外枠ではなく“2枚の銀色ディスクの間”が正解。図では判別しづらい場合があるため、動画の実演が助けになったという感想が目立ちました。
- ブランド偏重ではなく、Kenmore、Pfaff、Bernina、Viking、White、そして日本製クローン機など、多様な選択肢も試す価値があるという見解も共有されています(ただし本記事はSinger 640の手順に限定)。
おわりに 上糸かけは“順番”と“位置”の理解がすべて。押え金を上げ、テンションディスクの間に入れ、チェックバネと天びんを正しく通し、最後は針へ前から後ろへ。これだけで、640は静かに力強く縫い始めます。日々の一手を丁寧に重ね、ヴィンテージの良さを最大限に引き出しましょう。
