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まずはここから:刺繍PDFを分解して理解する
最初に見るべきはPDFのヘッダー。デザイン名、ステッチ総数、“Colors(色数)”、そして商用機向けの“Needles(針数)”が並びます。例として動画では「Purple Power Girl Feltie」のPDFが使われ、タイトルとデザイン画像、基本情報がトップに表示されています。

続いて、タイトル行の役割を確認します。これはそのファイルの正式名称の確認に役立ち、あなたが開いているPDFが意図したデザインで間違いないかのチェックポイントになります。

ステッチ総数は、デザイン全体の“密度感”や所要時間の大まかな目安。例えば「7,547 stitches」とあれば、その数だけ針が上下するということ。さらに“9 Colors, 8 Needles”のような表記に出会いますが、ここが最初のつまづきポイント。

“9 Colors”は、実は“9つのステップ(色替え回数)”という意味。PDFの色は“工程の区切り”であって、必ずしも別々の糸色を使う必要はありません。商用のマルチニードル機を使っていないなら、“Needles”の数は完全スルーでOKです。
ここで覚えるべき核心ルールはひとつ。“Colors = Steps(色=ステップ)”。これさえ押さえれば、PDFの読み解きは半分終わりです。

プロのコツ:複数箇所で同じ色名が再登場しても、それは“同じ色”の指示ではなく“別工程”。色名に振り回されず、PDFの図中で“どこが縫われるか”を見て判断しましょう。
クイックチェック:
- PDFのデザイン名は購入データと一致していますか?
- “Colors”を“ステップ数”として理解できていますか?
核心ルール:「色=ステップ」という考え方
PDFの色名は、機械に「ここで一旦止まってね」と知らせるための識別子。つまり色はただの“ステップ記号”。たとえば“Daffodil(黄色)”と書かれていても、その工程で黄色い糸を使う必然性はありません。
同じ色名が別の工程番号で出てくることもごく普通。動画でも白(“Vapor”)がステップ3と6に現れますが、これは“同じ白を2回縫う”のではなく“別の場所を縫う2つの工程”という意味です。ここを誤解すると、糸替えや準備で無駄が出やすくなります。
自由度の話をすると、PDF通りの色に合わせるのもよし、テーマカラーで遊ぶのもよし。特にフェルティのような小物は、配色の違いが雰囲気を一変させます。道具の面では、ホープ替えが素早くできるmighty hoopや、厚物・小物固定に強い磁気 刺繍枠を導入すると、“色=ステップ”の切替がスムーズに感じられるでしょう。
注意:本動画では具体的な機種やアクセサリーの指定はありません。道具選びはあなたの環境に合わせて検討してください。
手順で理解する:配置から仕上げまで
配置ステッチ(ステップ1)は設計図
最初に縫うのは“配置ステッチ”。デザインのベース形状が、ごく薄いアウトラインとして刺されます。ここでは糸色は何でも構いません。後工程で隠れて見えなくなるため、見やすい色・余り糸など、あなたの作業性を優先してOK。

配置ステッチで出た輪郭に合わせて、上面のフェルトを置く——これがフェルティ作りの起点。糸色にこだわるより、フェルトの置き位置と平滑さを重視しましょう。道具面では、薄手素材の仮固定に、軽い粘着スプレーや手で押さえる方法を選ぶ人もいます。大型の磁気フレームを使う場合、素材が滑りにくくなる利点があります(例:磁気 刺繍枠 for embroidery)。
プロのコツ:配置ステッチは“見取り図”。拡大して薄い線を確認し、縫われる範囲の“外側まで”余裕を持ってフェルトを覆うと、後のトリミングが楽になります。
タックダウン(ステップ2)は“選べる”固定手段
次の“タックダウンステッチ”は任意工程。配置ステッチとほぼ同じラインをなぞって、フェルトを安定させます。動画の作者自身は省略することもあると明言。ただ、素材や慣れ次第では大いに役立ちます。特にフカフカしたフェルトや小さなパーツでは、ここでしっかり押さえると後工程のズレが激減します。

スキップする場合は、手で押さえる、軽くスプレーで点付けするなど代替策を。固定が甘いと後のフィルステッチで歪みやすくなるため、あなたの布・安定紙・ミシンの組み合わせで“最適解”を見つけてください。小物や袖口など、枠入れが難しい場面では、hoopmasterのようなステーションやsnap hoop monster系の枠が作業性を上げることがあります。
注意:タックダウンの有無は“仕上がり品質”より“作業安定性”に効きます。無理に入れる必要はありませんが、不安なら入れておくのが安全策です。
内部要素(ステップ3〜8)で表情を作る
ここからがデザインの見せ場。動画では、白目(ステップ3)、虹彩(ステップ4)、黒目・アイライン(ステップ5)、白のハイライト(ステップ6)、ヘア(ステップ7)、顔の細かいアウトライン(ステップ8)と進みます。大切なのは、色名に縛られず“何が縫われるか”をPDFの図で見て判断すること。

例えば“Light Purple”と書いてあっても、あなたの世界観に合わせてグリーンやターコイズに変更してOK。色名は“工程識別”でしかありません。

黒目や輪郭の“黒”も、チャコールや濃紺で柔らかい印象に寄せるのも選択肢。仕上がりの印象は大きく変わります。

同じ“Vapor(白)”が別工程で出てきても、混乱しないで。PDF上は別のステップとして扱われ、機械は工程ごとに一時停止します。

ヘアの広い面積は、糸の光沢や太さで質感が変わるポイント。艶やかに見せるならポリエステル、マットに寄せるならコットン調など、糸の選択で遊びましょう(糸のブランド指定は動画ではなし)。

顔の繊細なアウトラインは、スピードを落として縫うと綺麗に出やすい場面。PDFの黒く示された“その工程で縫われる線”に注目すると、どの範囲が進むのか把握できます。

クイックチェック:
- 各工程で“どのパーツが縫われるか”をPDF上で把握できていますか?
- 糸色は“あなたの意図”で選べていますか(PDF色名は必須ではありません)?
プロのコツ:工程間の糸替えを速くするなら、枠の着脱が安定しやすいsnap hoop monster for babylockや、マグネット式のbabylock 磁気 刺繍枠を検討。繰り返しの仮止めや小物の位置決めがラクになります。
フィナーレ:仕上げステッチで“フェルティ”を閉じる
フェルティ特有のクライマックスが“仕上げステッチ”。ここは前面フェルトだけで進んできた工程を、裏フェルトと“サンドイッチ”して縁を閉じ、ボビン糸を隠す仕上げです。動画の例ではステップ9が該当。再開する前に必ず一時停止し、枠裏側から裏フェルトをデザイン範囲を余裕を持って覆うように配置します。

重要なのは「仕上げ=必ず1工程」とは限らないこと。サンタの例のように、帽子の一部と髭など、輪郭の色が分かれるデザインでは複数工程にまたがることがあります。PDF上で“最外周の線”を見つけて、その開始前に裏フェルトを入れる準備をしましょう。

動画では、Santa Feltieで“Wine Red(ステップ5)”と“Umber(ステップ6)”の両方が仕上げ扱い。つまり、その前に裏フェルトを入れ、色替えを挟みながら外周を仕上げていく構成です。

仕上がり後は周囲のフェルトを丁寧にトリミング。縁を傷つけないよう、斜めにハサミを入れるとエッジが綺麗に立ちます。
注意:仕上げ前の“裏フェルト入れ忘れ”はあるあるミス。PDFの最終工程を事前に確認し、“ここで止める”タイミングを頭に入れておくと安心です。
クイックチェック:
- 仕上げ工程の前に、裏フェルトを正しく配置しましたか?
- 外周が“完全に囲われた線”として縫われていますか?
プロのコツ:色替えを伴う多色の外周では、糸の太さ・質感を揃えると縁の一体感が増します。微妙な差が出やすいので、同系統の糸に統一を。
その先へ:PDFのインタラクティブ機能を活用
見落としがちな“クリック可能リンク”も要チェック。PDF上部のロゴからショップ(Etsy)へ、下部のリンクからYouTubeチャンネルへ飛べます。追加のチュートリアルや新作デザインにすぐアクセスできるのが利点。対応リーダー(Adobe Acrobatなど)で開くとスムーズです。
注意:PDFにインタラクティブ要素が入っていることを知らないと、“行き止まりの説明書”に見えてしまいます。ロゴやテキストリンクにはカーソルを当てて反応を確認しましょう。
コメントから:よくある質問とヒント
- 質問:どのソフトを使っていますか?カラーマップが読みやすいです。
- 回答:Embrilliance 系列のソフトを使用とのこと。読みやすさは、PDF設計の“色=ステップ”の考え方と、視覚的な強調(ハイライト)によるもの。あなたの側では、“拡大表示して薄い線を確認する”“手元で色替え順に並べる”などの工夫でさらに読みやすくなります。
- 感想:わかりやすい説明、ありがとう!
- 受け止め:PDFの“工程表”としての側面を理解すると、初見のデザインでも迷いが激減。とくにフェルティはステップの流れが明快なので、最終の“サンドイッチ”に向けて抜け漏れを減らせます。
仕上げ前の最終チェックリスト
- PDFのヘッダー情報(ステッチ数/ステップ数)を理解している
- “Colors = Steps”を前提に、糸色は自由に選んだ
- 配置ステッチ→(任意の)タックダウン→内部要素→仕上げの順で把握
- 仕上げ前に裏フェルトを入れるタイミングをPDF上で確認済み
- 仕上げ縫い後、周囲のフェルトを安全にトリミング
もっと自由に楽しむための道具メモ
- 枠替え・位置決めの効率化:brother 刺繍枠や磁気 刺繍枠 for brother、汎用の磁気 刺繍枠 for 刺繍ミシンは作業の安定に寄与。導入の際はあなたの機種適合を要確認。
- 初心者向けの視点:工程が明快なフェルティは、刺繍ミシン for beginnersにも好相性。小さな成功体験を積みやすく、配色の練習にも最適です。
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最後にもう一度。“色=ステップ”。この視点が定着すれば、どんなPDFでも迷わず読めます。色名はヒント、最終判断はあなたの美意識。PDFを“工程の地図”として味方にすれば、フェルティも、その先の大物も、仕上がりは確実に美しくなります。
